サウジアラビア中銀、仮想通貨とCBDCプログラムのリーダーを採用
仮想通貨規制の整備開始へ
中東サウジアラビアの中央銀行は、元アクセンチュア幹部のMohsen AlZahrani氏を暗号資産(仮想通貨)と中央銀行デジタル通貨(CBDC)プログラムのリーダーとして採用した。ブルームバーグが報じた。
関係筋によると、サウジアラビアはこれまで、暗号資産(仮想通貨)の投機的な性質を懸念して慎重なアプローチを取ってきた。しかし、隣国のアラブ首長国連邦(UAE)が仮想通貨政策を積極的に打ち出しているため、仮想通貨に関するルールを整備する必要に迫られているという。
関係筋は、AlZahrani氏は、中央銀行の開発・技術担当副総裁であるZiad Al Yousef氏の下で働き、将来の仮想通貨規制について、複数の大手仮想通貨企業と話し合っているところだと述べた。
Mohsen AlZahrani氏は、2020年から2022年7月まで、アクセンチュアの金融サービス部門の運営ディレクターを務めていた人物だ。決済ソリューションやデジタル化、フィンテックなどを専門としている。Linkedinのプロフィールによると、7月にサウジアラビア中央銀行の「仮想通貨・CBDCプログラム責任者」に就任した。
AlZahrani氏は以前にも、サウジアラビア中央銀行で働いていたことがある。中銀イノベーションセンターのディレクターとして、2015年から2018年まで、ブロックチェーンとデジタル通貨のプロジェクトを率いていた形だ。
CBDCとは
各国・地域の中央銀行が発行するデジタル化された通貨を指す。「Central Bank Digital Currency」の略である。仮想通貨との大きな違いは、CBDCは法定通貨であること。通貨の管理や決済等においてコスト削減や効率性向上が期待できる一方で、個人情報やプライバシーの保護、セキュリティ対策、金融システムへの影響など考慮すべき課題は多い。
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CBDCやメタバースへの取り組み
サウジアラビアは以前よりCBDCに取り組んでおり、19年にアラブ首長国連邦の中央銀行と共同で、CBDCの国境間決済を検証する実証実験を開始。21年に試験結果を発表し、「分散化決済システムはセキュリティ面で優れており、高パフォーマンスを提供する」と評価していた。
また今年2月には、メタバース(仮想現実)を含む、複数の先端技術へ約9,000億円(64億ドル)以上投資すると発表している。Abdullah Alswaha通信・情報技術大臣は、サウジアラビアのデジタル経済を成長させる投資だと説明した。
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仮想通貨取引の状況
サウジアラビア政府は2018年、仮想通貨取引に対する警告を発していた。
ビットコイン(BTC)などの仮想通貨は、「サウジアラビアの公式通貨として承認されておらず、規制当局から取引行為を許可されている当事者はいない」と声明を出した形だ。政府の監督下にないため、トレーダーにとって高いリスクがあると警告している。
一方で、仮想通貨取引所KuCoinの調査によるとサウジアラビアでは仮想通貨投資が盛んだ。2022年5月現在で、サウジアラビアの18歳から60歳の成人人口のうち、14%を占める約300万人が、現在仮想通貨を所有しているか、過去6か月間に取引を行っていた。
新規参入者が多いことも特徴的だ。仮想通貨投資家の76%は仮想通貨投資の経験が1年未満であり、このうち49%は過去6か月の間に、初めて仮想通貨の取引を開始していた。
また、17%の成人が仮想通貨に興味を抱いており、今後6か月間に仮想通貨に投資する可能性があると回答していた。
中東の仮想通貨状況
サウジアラビアの隣国アラブ首長国連邦(UAE)は仮想通貨に積極的なことで知られている。
UAEのドバイは3月、仮想通貨のライセンス制度に特化した政府機関「ドバイ仮想資産規制局」(Dubai Virtual Asset Regulatory Authority)を設立。以来、仮想通貨取引所FTX Europeやバイナンス、Crypto.comなどがライセンスを取得している。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します