はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習-運用
CoinPostで今最も読まれています

中央銀行デジタル通貨(CBDC)とは|ビットコインとの違いと主なメリット

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

中国をはじめとする各国は、独自の中央銀行デジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)の構築競争を繰り広げています。ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)ではなく、独自のデジタル通貨の導入を目指すのはなぜでしょうか。

この記事では、誰が通貨の構築競争をしているのか、競争のメリットは何か、そしてそれがさらなるの普及のために何を意味するのかを見ていきたいと思います。

目次
  1. CBDCとは
  2. 銀行はなぜCBDCを推進するのか
  3. なぜビットコインでなく、独自通貨なのか
  4. スピード感とアプローチ
  5. CBDCのリスク
  6. CBDC決済の構造

CBDCとは

中央銀行デジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)とは、その名の通り、日銀のような既存の国家の金融機関が作成・管理する通貨です。今までの通貨との違いを挙げると、紙幣や硬貨というアナログな貨幣の代わりに、すべてデジタルなものに置き換えられています。

国際決済銀行によると「CBDCは厳密に定義された言葉ではない」とされており、それは「何が(CBDCの導入により)変わるかを分析するためには、CBDCが何でないかを明確にすることを定義したほうが簡単だ」といわせるほどです。この論理によると、CBDCは「伝統的な準備口座や決済口座に保有されている貨幣とは異なる形式の、デジタルな中央銀行貨幣」との見方も出来ます。

銀行はなぜCBDCを推進するのか

なぜ、銀行はこれほどまでにCBDCの構築に熱心なのでしょうか? この疑問には対象とする国の通貨がどのような状態にあるかによって、さまざまな理由が考えられます。

価値の平等化

例えばベネズエラでは、米国からの経済制裁などの影響に伴うハイパーインフレや国民の外貨購入制限により、自国経済が機能不全に陥っています。国が管理するデジタル通貨は、自国通貨の価値をより一貫したものにするための一つの方法かもしれません。

送金の高速化

一方で他の国では、国家から国民への資金の分配には、銀行やクレジットカード会社などの中間業者が関与しているため余計に手数料と時間がかかります。銀行によっては多額の通貨の動きを処理するのに何日もかかるところもあることを考えると、この影響はさらに身近に感じられるでしょう。しかし、デジタル通貨であれば、瞬時に送金することができ、効率性が向上します。

COVID-19(新型コロナウイルス)の影響で世界経済が大きな打撃を被るなか、多くの国が特別給付金などの臨時策で、国民に直接現金を渡しています。しかし、デジタル通貨が普及していれば、分配をはるかに迅速に行うことができたでしょう。

経済の把握

そして中央銀行がデジタル通貨の創設に関心を持つ最後の理由は、今の経済が物理的な貨幣を置き去りにして、キャッシュレスなどデジタル化を急速に進めていることです。これが欧米ではPayPal、中国ではWeChatに代表されるような決済サービスの台頭につながっています。

これらの企業だけで、人々は何十億ドルものお金のやり取りを行っています。その結果、政府はそのお金の流れを把握しきれておらず、経済の予測を立てるのに困っています。例えば、政府が総マネーサプライ(経済学でいうM2)を測定できなければ、インフレなどを正確に予測することができず、雇用、個人消費、企業投資、通貨の強さ、貿易収支などに影響を及ぼします。

中央集権的に発行されたデジタル通貨であれば、政府は経済に何が起こっているのかをより明確に知ることができます。

なぜビットコインでなく、独自通貨なのか

ビットコインは最も有名な仮想通貨であり、後続の通貨の道を切り拓いてきましたが、国家にとって公然と支持できるようなものとはみなされていません。

それは、ビットコインがオープンソースかつ支持基盤がグローバルであるため、政府によって完全にコントロールすることが不可能であることが主な理由です。ビットコインの発行方法、ディフィカルティ(難易度調整)などは国家の管轄外であり、またマイニング(採掘)の主な現場は、電気代の安い中国などに集中しています。

その点、CBDCは必ずしもブロックチェーンを利用したものでなくてはならないとは限りません。従来の中央集権型のシステムのほうがコントロールしやすい側面もあるからです。わざわざ制御しにくいビットコインに信頼を預けるよりも、己の管理下に通貨を置きたい。国家機関として当然のスタンスとも言えます。

スピード感とアプローチ

ここで注目すべきは、国によって、将来のデジタル通貨がどのようなものになるのかについて、さまざまなコンセプトを打ち出していることです。

多くの国がCBDCの導入に取り組んでいますが、そのうちほとんどの国は、自分たちに最適なバージョンを見つけるべく、時間をかけて検討を進めています。

先進国のなかで、CBDCの導入への動きをけん引しているのは中国でしょう。2020年10月、中国のハイテクハブである深セン市は、国内デジタル通貨のパイロットテストの一環として、1000万元(150万ドル)以上を市民に配布すると発表しました。

関連世界最先端のCBDC実証実験──官民連携で取り組むデジタル人民元

しかし、米ドルなどの法定通貨と金融・経済への影響を懸念し、ほとんどの政府は難しい舵取りを迫られています。

英国は、現金へのアクセスを保護することを誓い、米国では現金経済に依存している多くの人々が取り残されることをおそれ、すでに各州がキャッシュレス小売業に反対する法律を制定し始めています。

関連米国で仮想通貨やCBDCについて意識調査、未だ現金に依存

また、国営のデジタル通貨がプライバシーを奪うことになるのではないかという懸念もあります。この例として中国では、国がすべての取引を審査することが可能で、誰の資金でもいつでも凍結できるシステムとなっています。

各国のCBDCに対する評価

意欲
詳細
日本 高齢化・都市集中により現金が地方で流通しづらくなり、かつ民間のデジタルマネーで対応しきれないと判断された場合導入の可能性あり、とされる。基本姿勢は消極的だが、2021年にかけてリサーチには意欲的に。
アメリカ
現金志向が強く、また民間の電子マネーの普及率が高いため、急務ではないと判断。「正しい導入が最初の導入国であることより大事」とFRBの議長が述べている。
中国 2014年よりデジタル人民元について言及、2020年はシンセンなどでパイロットプログラムを実施。一般的に使用する現金の代わりとして位置づけられており、自国の経済に対するコントロールを高めるためともいわれる。
EU デジタルユーロに関するチームをECBが結成したが、実際導入するかどうかは未定。
イギリス 現金の使用率の低下によって興味をひかれたと発表している。安心できる通貨としてCBDCを導入するべきか検討中。

CBDCのリスク

参考:CBDCのシステムについてのレポート

CBDCの不明点の一つに「CBDCが広い経済圏の中でどのような役割を果たすようになるのか」があります。特に金融サービス業についてはどのように共存するのか、共存がまず可能なのか、さまざまな議論2が交わされています。

代表的な例としては銀行があります。国に直接貯蓄を預けることができるようになったなら、同様のサービスを提供していた銀行はどうなるのでしょうか。

そのほかにも、少しすでに触れましたがプライバシーとセキュリティの両立の難しさも争点です。すべての国民が政府を貯蓄を預けられるほどに信頼しているわけはなく、またサイバーセキュリティの問題もあり、完全な移行には相応の反発があるでしょう。

これらのリスクを踏まえ、各国中央銀行は中央銀行の口座に最大預金額を設けるなど、CBDCの規模を制限する策を検討しています。

CBDC決済の構造

CBDCの導入にあたって、考えられる決済の構造は多数あります。それぞれメリット、デメリットがあり、どれを採用するかは金融当局のニーズとキャパシティ次第です。

CBDCの一例 A

CBDCの一例 B

CBDCの一例 C

これらのうち、AはダイレクトCBDCといい、これまでの金融と最もかけ離れたシステムです。中央銀行がすべての決済にかかわり、すべての口座の残額を把握します。このシステムではすべての情報を中央銀行が所有しているため、確認がとても容易になります。 このシステムの最大の問題点は民間の参加の少なさです。付加価値を利用するフィンテック市場の保護のため、このシステムを採用したがる中央銀行は少ないでしょう。ネットワークの強靭化もまた課題となります。

Aの反対ともいえるのがC、インダイレクトCBDCです。すべての銀行がリザーブのCBDCをもち、中央銀行に預けることを要求されます。この場合、金融機関が破産などしたとき、後処理が大変になるでしょう。誰が何を持っていたのか、長い司法手続きが想像できます。

そしてAとCの妥協ともいえるのがBです。ハイブリッドCBDCとも呼ばれるBですが、利用者の法的要求を中央銀行に向け、プロバイダの帳簿と分離することでCBDCサービスプロバイダが破産したときも、利用者の口座の詳細は明かされないという利点があります。この時、中央銀行が円滑に利用者の保護をするためにはCBDCの取引の帳簿が必要となります。しかし、すべての利用者の取引を中央銀行が把握するのは、プライバシーやセキュリティの問題を生じさせることになり、このどちらを選んだとしても利点と欠点は現れます。CBDCの導入により中央銀行は厳密な監視か複雑なインフラのどちらかを要求されることとなるでしょう。

CoinPost App DL
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
08/12 火曜日
20:03
米ウォーレン議員、仮想通貨規制強化を求めトランプ政権の影響に懸念
米民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員は米国には強力な仮想通貨規制が必要であると主張し、共和党主導の規制は業界への便宜供与であるだけでなく、トランプ大統領の腐敗を助長すると警告した。
17:54
ビットフライヤー、イーサリアムのステーキングサービスを開始
仮想通貨取引所ビットフライヤーがイーサリアム(ETH)ステーキングサービスを開始。年利2.03%で毎週報酬付与、資産ロック不要でいつでも売却・送付可能となっている。
17:00
「Web3決済の社会実装へ」UPCXのCEOが語る実用化戦略|WebXスポンサーインタビュー
大規模カンファレンス「WebX 2025」のタイトルスポンサーとしてブース出展を決めた、UPCX中野誠CEOの独占インタビュー。2016年からブロックチェーン開発に従事し、日本の暗号資産取引所への上場を実現。WebX 2025での展示内容や決済分野でのWeb3実装について聞く。
15:05
CEAが240億円相当のBNB購入 IPトークンの仮想通貨トレジャリー企業も登場
CEAが仮想通貨BNBトークンを240億円相当購入し、BNB財務戦略を進めている。一方、ヘリテージはストーリープロトコルのIPトークンを120億円相当購入する計画だ。
13:02
メタプラネット、約90億円でビットコインを追加購入
株式会社メタプラネットは2025年8月12日、仮想通貨ビットコインのトレジャリー事業の一環として518BTCを追加購入。保有量は18,113BTCに達し、戦略的な財務運用が続いています。
11:00
ビットマインのイーサリアム保有量7000億円突破 「5%の錬金術」戦略進める
ビットマインの仮想通貨イーサリアム保有量が7,350億円相当を突破。100万ETH超を保有する初のトレジャリー企業になった。シャープリンクも新たに資金調達しETH蓄積を進める。
09:51
ジェフ・ベゾス氏のブルーオリジン、仮想通貨決済を導入
Shift4は、ジェフ・ベゾス氏の米宇宙開発会社ブルーオリジンのニューシェパードへの搭乗に仮想通貨決済を導入したことを発表。ビットコインやイーサリアムなど対応銘柄の例も挙げた。
08:57
トランプ一族関連のWLFIトークンの財務戦略、仮想通貨企業ALT5が開始へ
トランプ一族関連のWLFIトークンの財務戦略を開始することを仮想通貨フィンテック企業ALT5が発表。資金調達を行い、総供給量の約7.5%を保有する計画だと述べている。
08:52
ビットコイン最高値圏から反落、米CPI発表を前に警戒感強まる|仮想NISHI
アナリスト仮想NISHIのビットコイン最新相場分析。過去最高値から反落の背景と今後の展望。米CPI発表前の市場心理、イーサリアムとの連動性、オプション市場動向を専門アナリストが解説した。
08/11 月曜日
19:45
エルサルバドル、新法可決でビットコイン投資銀行実現へ
エルサルバドルが投資銀行法を可決し、機関投資家向けビットコイン投資サービスが解禁となる。投資銀行の設立条件は、最低資本金5000万ドルで、25万ドル以上の資産保有者がサービスの対象となる。
18:45
トランプ政権、仮想通貨評議会高官が退任 民間復帰へ
米ホワイトハウス仮想通貨評議会のボー・ハインズ事務局長が退任し民間復帰する予定だ。同氏はトランプ政権の仮想通貨政策報告書作成をデビッド・サックス氏と共に主導していた。
09:30
アーサー・ヘイズ、先週売却のイーサリアム買い戻し 予想外の相場上昇で方針転換か
仮想通貨アナリストのアーサー・ヘイズ氏は先週売却したイーサリアムなどの銘柄を買い戻した。短期下落予想が外れ、ETHは4,200ドルを突破して7日間で約20%上昇している。
08/10 日曜日
12:00
今週の主要仮想通貨材料まとめ、リップル裁判終結やイーサリアム関連の投資根拠分析など
前週比で振り返る仮想通貨市場の最新動向。ビットコインやイーサリアム、XRP、ソラナなど主要銘柄の騰落率や注目材料を一挙紹介。市場トレンドと関連ニュースを詳しく解説する。
11:30
ビットコイン1730万円台回復、利下げ期待で反発も来週CPI警戒|bitbankアナリスト寄稿
今週のビットコイン相場はFRB人事のハト派傾斜や利下げ期待で1730万円まで回復。雇用統計下振れによる景気後退懸念から一時1660万円まで下落したが、トランプ政権の仮想通貨政策やETF資金流入回復で持ち直し。来週のCPI発表がカギ。
11:00
週刊仮想通貨ニュース|米401k仮想通貨投資解禁の大統領令に高い関心
今週は、アーサー・ヘイズ氏と金持ち父さん著者ロバート・キヨサキ氏によるビットコイン下落可能性の指摘、トランプ大統領による米401k仮想通貨投資解禁の大統領令への署名に関するニュースが最も関心を集めた。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧