
投資銀行法が成立
エルサルバドルの立法議会は7日、新たに大規模な資本誘致を目的とした「投資銀行法」を承認した。この新法は「高度な投資家」を対象に、投資銀行による暗号資産(仮想通貨)関連サービスの提供を可能にするものだ。
この法律により、投資銀行は一般的な商業銀行とは明確に区別され、中央準備銀行(BCR)と金融システム監督庁が規制監督機関となる。投資銀行設立には、最低5,000万ドル(約74億円)の資本金、および金融システム監督庁への認可申請が必要となる。
これらの基準を満たす投資銀行には、ビットコインやその他のデジタル資産をバランスシートに保有することが認められる。さらに、デジタル資産サービスプロバイダー(PSAD)ライセンスを取得することで、以下の業務が可能になる。
- デジタル資産関連サービスの提供
- デジタル資産の発行
- ビットコインサービスの提供
しかし、投資銀行がこれらのサービスを提供できる対象は、高度な投資経験と25万ドル(約3,700万円)以上の流動資産(ビットコイン、国債、トークン化された国債や金を含む)を持つ個人と法人、企業に限定される。
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国際資本の誘致
ダニア・ゴンザレス議員は、投資銀行法が国際的な金融グループや富裕層の誘致を促進し、同国における拠点構築や国内プラットフォームの利用などを通して、エルサルバドルに大きなメリットをもたらすと主張する。
また、投資銀行がインフラ、エネルギー、技術、イノベーション、公共・民間パートナーシップなど、大規模なプロジェクトに資金を供給することで、戦略的分野の成長と国の構造的な発展を促進すると指摘した。
同氏は、さらなる恩恵として、同国の金融システムの資金調達力強化を挙げている。ここでは、投資銀行法が既存のライセンス制度を活用していることが重要なポイントとなる。
投資銀行法は、エルサルバドルの金融システムの制度的枠組みを、我々が慣れ親しんでいる従来の銀行システムを補完する形で、新しく規制・監督された仕組みとしてとして拡大するものだ。
ゴンザレス氏は、「この規制の枠組みは、資本市場とデジタル資産市場を深化させ、ビットコイン、ステーブルコイン、トークン化された金などの現代的で安全かつ定期的な運用を可能にする」と強調。エルサルバドルが専門的な金融ハブとしての地位を確立し、国際的な評価や組織的信頼、そして競争力を高めることにもつながると付け加えた。
ビットコイン戦略の転換
投資銀行法は、エルサルバドルの金融システムを近代化し、「洗練された投資家」に対して透明性が高く、信頼性があり、かつ迅速なサービスを提供することで、国の発展に貢献することを目指していると、経済省顧問のマルタ・ソリス氏は説明した。
この動きは、エルサルバドルが個人投資家からより大規模な機関投資家へと、ビットコイン導入のための攻略対象をシフトさせたことを表している。
エルサルバドルは2021年に、世界で初めてビットコインを法定通貨とする画期的な政策を採用するも、未だ国民の利用率は低く、送金の1%にしか仮想通貨が使用されていないと報告されている。
投資銀行法は、大規模な資本投資を戦略的プロジェクトに誘導し、機関投資家を対象とした仮想通貨の運用を可能にすることから、この排他的な制度は、一般市民に恩恵をもたらさず、不平等な二つの異なる金融システムを生み出しているとの批判の声も上がっている。
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IMFとの関係性
エルサルバドルのビットコイン政策は、国際通貨基金(IMF)との関係において最大の課題の一つとなっている。
エルサルバドルは、経済の安定化を図るため、IMFから継続的に巨額の融資を受けている関係上、IMFからの指導を受け入れる立場にある。
IMFはブケレ政権が進めるビットコイン政策について、新規購入は制限するものの既存保有分の維持は認める方針を示しているが、民間企業のビットコイン・仮想通貨決済受け入れについて義務から任意へ変更や、政府系Chivoウォレットからの撤退を7月末までに完了する条件を課している。
新たに承認された投資銀行法の規制枠組みが、IMFが同国に要求している透明性やガバナンス強化の確保とどのようなバランスを取れるのかが、今後、エルサルバドルが地域金融のハブとして発展できるか否かの鍵となると見られている。
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