OpenSea元従業員による「インサイダー取引」の告訴に進展
「インサイダー取引」の法的定義
米連邦地方裁判所(ニューヨーク南地区)は21日、NFT(非代替性トークン)電子市場大手OpenSeaの元従業員がインサイダー取引の容疑で司法省から起訴されたケースで、被告の起訴取り下げの申し立てを棄却した。
司法省は今年6月、OpenSeaの元製品責任者であったNathaniel Chastain氏を電子送金詐欺とマネーロンダリングの容疑で逮捕、起訴した。司法省の発表によるとChastain被告は、昨年の6月から9月にかけて、OpenSeaのWebサイトに掲載される予定のNFTに関する内部の機密情報を利用して、事前に対象となるNFTを購入。その後2倍から5倍の高値で売却して経済的利益を得た「インサイダー取引」の容疑がかけられている。
また、該当するNFTの売買への関与を隠蔽するために、匿名のOpenSea口座と新たなウォレットを開設し、資金を移動させるマネーロンダリング行為を行なったと指摘した。
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Chastain被告は、公開されているイーサリアム・ブロックチェーン上で行われていた取引に関して、マネーロンダリングを裏付ける十分な証拠はないと主張。また法的には「証券でも商品でもない」NFTは、「インサイダー取引」の対象とならないとして、8月に起訴棄却の申し立てを行なっていた。
今回の判決でJesse Furman連邦地裁判事は、Chastain被告は少なくとも「古典的な意味」でのインサイダー取引、つまり「証券取引法及び証券取引委員会規則に違反する証券詐欺」では起訴されておらず、「電信詐欺」で起訴されている事実に言及。電信詐欺では証券詐欺とは対照的に、証券や商品には言及されていないと指摘した上で、被告の主張は電信詐欺の制定法に追加の要素を読み込むことになるため、申し立てを棄却するとした。
Furman判事はまた、NFTが「資産」であることや被告のマネーロンダリング容疑に関して、検察が立証することが可能かという論点については、陪審員に提示されるべきであると述べ、裁判の継続を決定した。
デジタル資産初のインサイダー取引
司法省はNFTのような新たなデジタル資産に対しても、インサイダー取引を禁じる法律を適用できると判断し、起訴に踏み切った。この裁判の結果は、今後のデジタル資産の法的地位についての先例となるため、業界関係者からも注目されている。
Chastain被告側は起訴棄却の申し立てが却下された当日、今回の裁判で司法省が「インサイダー取引」という文言を使用するのを中止するよう求める書類を提出した。
提出書類には、次のようにその理由が記されている。
「インサイダー取引」という用語は扇動的であり、不当に偏見を与え、起訴された犯罪とは無関係である。起訴状におけるこの用語の存在、および裁判におけるこの用語への言及は、正当な検察官の目的を果たすものではなく、単にメディアの関心を高め、デジタル資産分野では初めてのこの事件で陪審員を煽るための手段である。
Furman判事は、起訴取り下げ棄却の判決文の脚注で、被告が「インサイダー取引」という表現が誤解を招く可能性があると主張していることに言及。もし、それが事実であれば、起訴状からその文言を削除し、裁判で政府がその文言を使用することを阻止するという「適切な救済措置」は考えられるが、起訴自体は棄却しないという考えを示した。同時に、被告からの正式書類の提出を待ち、その判断は留保する旨が記されている。
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