米財務長官、FTXの顧客資産乱用を非難 今後の規制への影響は
「米国の法律では許されない行い」
大手暗号資産(仮想通貨)取引所FTXが破産申請したことを受けて、米国のジャネット・イエレン財務長官は12日、「仮想通貨セクターの弱点を示したもの」だと発言した。他に、米国では様々な当局担当者、政治家、識者らがFTX破綻について見解を述べている。
イエレン長官は次のように見解を表明した。
他の規制された取引所では、顧客資産の分離が行われている。
取引所の顧客の預金を使い、それを自分の管理する別の企業(今回の場合、アラメダリサーチ)に貸し出し、レバレッジの効いたリスクの高い投資を行うという考え方は、認められるものではない。
これに関連して、米共和党所属のパット・トゥーミー上院議員は、米国で十分な仮想通貨規制が進められていなかったことを批判した。
FTXがバハマに本拠地を登録していたことに触れ、米国内では規制が不透明であったことで、FTX含め仮想通貨企業の一部が「規制がほとんど存在しない、あるいは不十分な外国の司法管轄区に追いやられた」と意見している。
また、トゥーミー議員は、米証券取引委員会(SEC)による仮想通貨セクターへの敵意や透明性の欠如、さらに規制のガードレール整備が遅れていることで、米国内で法的不確実性が存在している状況だとも指摘した。
仮想通貨業界に詳しいジェイク・シェルビンスキー弁護士も、FTXが顧客資金を利用してヘッジファンドで取引を行っていたことは利益相反だと非難。こうした行為は、米国の法律の下では許されるものではなかったとコメントした。
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規制強化を求める声
米国議員の一部からは、規制強化を求める声も上がっているところだ。
民主党所属のブラッド・シャーマン下院議員は、FTX破綻は仮想通貨の潜在的リスクと、仮想通貨業界の弱点、両方を示すものだと発言。状況を調査し、適切な主体に責任を負わせることを確実にするため規制当局や法執行機関が努力することを支持すると表明した。
さらに、シャーマン議員は、仮想通貨がもたらすリスクに対して、議会や当局が「積極的なアプローチ」を取ることを提唱。今後数週間のうちに、法案を提出する選択肢も検討すると示唆している。
シャーマン議員は、全体的に仮想通貨懐疑派が目立つ民主党内でもエリザベス・ウォーレン議員と並び、反対の声を大きくしている議員だ。過去には「SECが主導する形で規制が強化されることが望ましい」と発言していた。
同じく民主党所属で上院銀行委員会の委員長を務めるシェロッド・ブラウン議員も、FTXの破綻した要因について、「金融監視当局が調査を行い、不正行為について十分に理解することが重要だ」と発言。
また、民主党のデビー・スタベナウ議員も10日、FTX破綻を受けて「連邦政府の監視を強化する緊急の必要性が強まった」と声明を発表。「消費者は、この市場の透明性と説明責任の欠如によって損害を受け続けている。今こそ議会が行動を起こすべき時だ」と続けた。
スタベナウ議員らは8月、超党派で米商品先物取引委員会(CFTC)の仮想通貨監督権限を強化し、規制明確化、消費者保護、イノベーション促進を図る法案を提出している。
伝統金融の教訓活かすべき
仮想通貨を支持する「クリプトママ」として知られるヘスター・ピアースSEC委員は、FTX破綻は「業界にとって暗い瞬間」ではあるものの、政府機関が「腰を据えて」明確な規制を設けるためのきっかけになるかもしれないと意見している。
人々が「伝統的な金融からの教訓」を考慮することの必要性を強調する出来事で、特にカウンターパーティーリスクやユーザー資産を誰が扱うかといったことは重要だとも続けた。
投資リサーチサイトGlobal Macro InvestorのRaoul Pal CEOも、FTX騒動について、2011年に起きた先物仲介会社MFグローバルの事件との類似性を指摘。顧客資産と会社の資産を分離しておくことの重要性について語っている。
さらに、MFグローバルの事件で先物市場が終わったわけではないと述べ、それは今回の件も同様だとの見解を示した。FTX破綻は大きな出来事だが、仮想通貨市場はこれからも前進するだろうと意見する形だ。
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