ビットコインマイナーの降伏はこれから?業界動向とBTC価格への影響を考察
債務整理が進行
海外の暗号資産(仮想通貨)取引所BitMEXの創設者Arthur Hayes氏は12月7日、信用収縮に起因するマイナーのビットコイン(BTC)売却の嵐は過ぎ去ったとの見解を示した。
22年には、5月のテラ(LUNA)ショックや11月のFTXショックなど、仮想通貨市場でデレバレッジ(過剰債務の削減)イベントが相次いだ。これらの影響でマイナーに資金を融資してきた貸金事業者による債務の強制清算は大方完了した可能性が高い、というのが主張の要点だ。
基本的にマイナーは電気代を含む設備・運営費用を支払う必要があるが、低価格帯でのBTC売却を避けるため、保有しているビットコインや採掘(マイニング)マシンを担保に法定通貨を借り入れる方法を取る。
しかし、クレジットが尽き、追加融資を得られなくなったマイナーは、債務返済のために蓄積してきたBTCの売却を余儀なくされる。Hayes氏は以下のように述べている。
彼らは、多額の負債を返済するために、このような行動を取る。また、負債がなくても電気料金を支払う必要がある。ビットコインの価格がさらに低下すると、彼らは施設を稼働させるためにさらに売却する必要がある。
データ分析企業glassnodeによると、22年夏の信用収縮(クレジットクランチ)以降、主要なビットコイン・マイナーのBTC保有量は純減が継続している状況だ。
大手仮想通貨取引所バイナンスのBTC/BUSD取引量を見ても、22年6月以降に取引量が急増したことを示している。
マイナーだけでなく、貸金事業者もまた融資契約の担保資産(BTC、マイニングマシン)の売却を敢行してきたことが推測される。ビットコインマイニング機器(ASIC)の平均価格は前年比80パーセント下落した。
債務不履行に差し迫ったマイナーは採掘マシンを売却するか、貸金事業者に引き渡す。貸金事業者はこれらのマシンを維持できないため、結局は流通市場に回される。こうしたマイナーの撤退により、BTCハッシュレートが着実に低下していることも指摘されている。
以上の要因から、Hayes氏はマイナーによる過剰債務の多くは既に消滅しているとの見解を示している。
これから先、マイナーの売却圧力になるとすれば、通常事業で清算したブロック報酬(900 BTC/日)に限られる。ビットコインの取引市場にほとんど影響を及ぼさないと加えた。
同氏はまた、ビットコインの直近安値である15,900ドル付近がボトム(底値)かどうかは判断できないとしつつ、BTCがこの価格帯で反発したのは「信用収縮によっても引き起こされた強制売却が停止したため」だと結論付けている。
CEL(貸金事業者)やマイナーによるビットコインの強制売却は終わったと思う。必要な企業は既にそうしているはずだ。
主要なCELが出金停止するか (破産を示唆)、または破産申請を提出したことを踏まえると、これ以上清算されるマイナー融資や担保はない。
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22年のマイナー動向
Coinbase Institutionalの分析によると、ビットコインの総ハッシュレートの約23%を占める大手マイナー10社の年間採掘量は40,700 BTCで、売却量は40,300 BTC。このうち6社が採掘量と同等かそれ以上のビットコインを売却しており、アーサー・ヘイズ氏の主張を裏付けている。
一方、MarathonDigital や Hut8 などの事業者は、2022年中にビットコインを売却していない。CoinMetricsやGlassnodeなどのオンチェーンデータ分析機関は、マイナーウォレットにはまだ82万BTC以上が保持されていると見積っている。
しかし、Hashrate IndexのアナリストJaran Mellerud氏は47万BTCであるとして、今後マイナーが売却したとしてもビットコインの市場価格を動かす影響力はないと主張している。
21年の強気相場に発注された採掘マシンが物流の影響で遅れて稼働したため、22年を通じてビットコインのハッシュレート(採掘速度)は上昇を続けた。
しかし、10月下旬の 250 EH/s (エクサハッシュ) をピークに減少傾向にシフトしている。28日には前日比-8.17%の209Ehash/sまで低下した。
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短期的な要因としては米国で記録的な寒波が発生していることが背景にある。しかし、ビットコインの価値の下落と電気料金の上昇、およびマイニング機器の購入資金を調達するための債務の組み合わせにより、収益の採算ラインを割り込むなどして多くのマイナー(採掘業者)が事業継続困難な状況にあることも影響しているだろう。
実際、2022年下半期に入ってからはマイニング企業の倒産が相次いだ。12月21日には、米ナスダック上場企業でビットコイン採掘大手のCore Scientificが米連邦破産法11条(チャプターイレブン)に基づいた破産申請を行う方針を固めた。
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23年の見通し
2022年の仮想通貨冬の時代にマイナーの資金繰りが悪化する中、適切なヘッジポジションを構築していなかった事業者の淘汰が進む。その反面、効率的に運営し、十分な資本を備えている企業にとっては買収の機会となる。
最大のマイニング事業者の1つであるCompute Northは9月に破産を申請したが、同社施設は仮想通貨コングロマリットDCGの子会社であるFoundry Digitalによって買収されている。
Foundry Digitalは、米国で最大規模のマイニング プール「Foundry USA」を運営。BTC.コムによると、執筆時点でビットコイングローバルハッシュレートのトップシェア(30.4%)を占める。
仮想通貨マイニング関連企業Luxor Miningはマイニング企業の負債総額は22年9月末時点で約5,400億円(40億ドル)以上と試算しているが、リストアップされている企業の明暗も分かれている。
米Marathon Digital Holdings(米ナスダック:MARA)は二番目に債務が大きい(約1,140億円)とされたが、その内実は転換社債であり、毎月の債務返済義務はなく倒産リスクは低い。同社は2023年に設備強化を計画しており、現在の7EH/sから23EH/sへ増設予定だ。
同様に、米ナスダック上場のRiot Blockchain(RIOT)は現在の7.7EH/sから12.5EH/sに拡大する計画だ。ドイツ企業Northern Data(EUR)は、2022年に2億400万ドルの収益を見込んでおり、負債はないと公表している。
一方、オーストラリアのIris Energyは11月後半に、債務返済に追われて1 億780万 ドルの融資で担保に用いた採掘マシンが差し押さえられたことを発表。採掘容量を削減させた。
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米Greenidge(GREE)は12月20日、破産を避けるため大手仮想通貨投資企業NYDIGとの債務再編契約を締結した。
9月末時点で約227億円の債務を抱えていた英拠点のマイニング企業Argo Blockchainは、12月初めに破産申請を回避するため資金調達を画策。その後、ナスダックでの取引停止を要請するなど雲行きは不透明だ。
かつて数年連続でハッシュレートでトップ5に位置してきた北京に本拠を置くビットコインマイニングプールのPoolinは9月に流動性問題を理由に出金停止措置を発表。執筆時点にシェア(0.4%)は大幅に低下しており、ビットコインマイニング産業の米国集中傾向も進行している。
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22年12月上旬、ビットコインの採掘難易度は2021年7月(中国の採掘禁止)以来最大の下落幅を記録するなど、マイナー降伏の兆候が現れてきている。Coinbase Institutionalは、ビットコイン価格が現在の水準を推移する限り、「今後数ヶ月のうちに、より多くの事業者が閉鎖を余儀なくされる可能性がある」と予測。マイニング事業者の統廃合は23年を通して進行するとの見方を示した。
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