SECコインベース提訴もビットコイン大幅反発、バイナンス・ショックの下げ幅を全戻し
マクロ経済と金融市場
6日の米NY株式市場では、ダウ平均株価は前日比10ドル(0.03%)高、ナスダック指数は46.9ポイント(0.36%)高で取引を終えた。
FRB(米連邦準備制度)の金融引き締め(利上げ)局面で2022年にかけて売り込まれてきた「ナスダック総合指数」は年初来高値を更新した。今年に入ってからの年初来騰落率は+27.8%に達している。
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仮想通貨市況
暗号資産(仮想通貨)市場では、ビットコインは前日比4.7%高の26,983ドルと大幅反発した。
25,300ドルのサポートライン(下値支持線)で下げ渋り、時間足でダブルボトムを付けた後、反転上昇に転じた。
前日のバイナンスに続き、米最大手暗号資産(仮想通貨)取引所のコインベースが米SEC(証券取引委員会)に提訴されたが、ウェルズ通知の発行時点ですでに織り込んでいたこともあり、バイナンス・ショック前の価格水準への全戻しにつながった。*下図
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株式市場ではコインベースの株価も暴落したが、足元の割安感から断続的な押し目買いが入り、終値ベースでは前日比12%安に留まった。
提訴を予見していたコインベースの対応の早さも投資家の不安心理を後退させた。コインベースのアーム・ストロングCEOは、「2021年4月にナスダックへと株式上場した際、SECの審査および認可を受けているはずだ」と強調。SECとCFTC(米商品先物取引委員会)の声明における矛盾点などを複数指摘し、全面的に争う姿勢を示した。
昨日のバイナンスの提訴では、訴状においてBNBやソラナ(SOL)、エイダ(ADA)、ポリゴン(MATIC)など時価総額上位のアルトコインの多くがSECに「未登録有価証券」認定され、全面安の様相を呈していた。
先物市場では過去3ヶ月間で最大のロスカット(強制清算)が発生するなど、相場のアク抜け感が出たこともその後のショートカバーにつながったものと見られる。昨日の急落後のアジア時間では、BTC価格が下げ渋る中FundingRate(資金調達率)のマイナス乖離が進んでいた。
とは言え、現在の弱気トレンドを打破するためには先行き不透明感が根強く残る。米国市場で主要トークンが上場廃止となり、マーケットメイカーの撤退を招けば流動性低下は免れず、他国での取り扱い基準にも影響を及ぼすおそれもある。ビットコイン投資信託「GBTC」を運用するグレースケールを傘下に擁するデジタルカレンシーグループ(DCG)の状況も芳しくはない。
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BTCはここのところ上値を切り下げつつレンジ内を推移しており、50日移動平均線(50SMA)および下降チャネルの上限はブレイクには依然至らず上値の重さは否めない。戻り高値の28,500ドルや27,000ドル付近のネックラインの攻防が目先の焦点か。
ブロックチェーンデータ分析企業のThe TieのFranklin氏によれば、業界最大手のFTXおよびアラメダ・リサーチ破綻の余波は大きく、これまでweb3業界投資のエクスポージャーを拡大してきたヘッジファンドやベンチャーキャピタル、年金基金などの機関投資家は、不明瞭な規制や信用リスクなどから及び腰にならざるを得ない状況が続いている。
アルトコイン市場
個別銘柄では、初のアップグレード「Bedrock」を完了したオプティミズム(OP)が前日比6.6%上昇した。
オプティミズムはイーサリアム(ETH)のスケーラビリティ問題を解決するために開発された、Optimistic Rollupを採用するL2(レイヤー2)スケーリングソリューション。
今回のアップグレードに伴い、イーサリアムの主要改善提案である「EIP-1559」を取り込みブロックチェーンのガス料金モデルを改善。取引手数料(Gas代)の引き下げやトランザクション完了時間の大幅短縮が見込まれるほか、イーサリアムメインネットとの同等性の実現に近づくことになる。
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