米SEC委員長が12日に公聴会で議会証言、「仮想通貨の大半は有価証券の可能性」と再度主張へ
仮想通貨の有価証券性
米証券取引委員会(SEC)のゲイリー・ゲンスラー委員長は、現地時間12日の公聴会で、暗号資産(仮想通貨)の大部分は有価証券に該当する可能性が高いと再度主張することがわかった。
公聴会を行う米上院銀行住宅都市委員会が、事前にゲンスラー氏の議会証言を公開。最近SECは仮想通貨に関する訴訟で苦戦をしているとの見方があるが、改めて、仮想通貨の多くの仲介企業(取引所等業者)は証券法に準拠する必要があると主張するようだ。
SECとは
「Securities and Exchange Commission」の略。株や債券など証券の取引を監督する米政府機関のこと。SECのミッションは「投資家を保護すること」「公正で秩序のある効率的な市場を維持すること」「資本形成を促進すること」である。
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今回の公聴会は、仮想通貨に特化したものではない。テーマは「SECの監督」であり、株式市場やAI(人工知能)などにもゲンスラー氏は言及している。
ゲンスラー氏は議会証言の中で「仮想通貨」という項目を作成。そして、「仮想通貨証券市場」は証券法の保護を十分に受けられていないと指摘した。また、議会は投資契約という言葉を有価証券の定義に含めており、大部分の仮想通貨は投資契約の要件を満たす可能性が高いと主張している。
その上で、仮想通貨の取引所やブローカーらの仲介者は証券法適用の対象となり、登録や義務の免除などの要件を満たす必要が出てくると説明。現在の仮想通貨市場では証券法が遵守されておらず、多くの問題が起きても驚くことではないとした。
他にもSECは「これまでルール作りを通して仮想通貨証券市場に対応してきた」とも主張。その事例として今年4月に、従来の証券取引所に対する規則をDeFi(分散型金融)にも適用できることを明確化する提案を議決し、パブリックコメントを求めたことを挙げている。
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ゲンスラー氏は、SECは実際にこれまで多くの訴訟を行ない、投資家保護にも取り組んできたと主張。一方、公聴会では継続中の裁判についてはコメントすることはできないと事前に明記した。SECは現在、コインベースやバイナンス、リップル社らの大手企業とも係争中だ。
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米国への影響
ゲンスラー氏は「ルール作りを通して仮想通貨証券市場に対応してきた」と主張しているが、仮想通貨業界からは「SECの取り組みは執行措置を介した規制である」と批判する声が多く上がっている。つまり、有価証券に該当するかの基準などを事前に明確に示していないという批判だ。
SECと係争中のコインベースは11日、ゲンスラー委員長が議会証言を行うことを受け、SECの執行措置を介した規制が以下の内容にどのように影響を与えているかについて、レポートを公開した。
- 世界の金融のリーダーとしての米国の地位
- 米国の雇用
- イノベーション
例えばコインベースは、SECの規制は、世界における米国のリーダーシップを弱体化していると主張。そして、仮想通貨経済圏の可能性を理解している国の例を挙げている。
その中には日本も含まれており、コインベースは「日本は首相が経済政策にWeb3を含めており、成長やイノベーションを促進して社会問題の解決に取り組んでいる」と評価した。
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また、レポートでは他にも、SECの規制は不明確であるとした上で、その影響で2030年までに400万人の雇用がリスクにさらされるとも主張。米国外でのWeb3の開発が増えることによって、100万人の開発者、300万人の非開発者が仕事を失う可能性があると試算している。
そして、過去5年間では実際に、世界のWeb3開発における米国のシェアが40%から29%に減少したとも指摘した。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します