イーサリアム初期投資家の相次ぐ資産移動、取引所残高への影響は?
イーサリアム初期投資家の動向
過去1週間に、暗号資産(仮想通貨)イーサリアム(ETH)の初期投資家が相次いでETHを移動させており、市場の関心を集めている。
19日、イーサリアムの大口ホルダー(アドレス:0x2e)が米国の仮想通貨取引所Krakenに6,000 ETH(約15億円相当)を移動させた。0x2eには現在49,070 ETH(120億円)が残されている。
この取引者の大元のアドレス(0x478e5)は、2014年のICOの際に254,908ETH(時価約620億円相当)を取得した。ICO時の価格は0.31ドル(約45円)だったが、現在の1,650ドル(約24.4万円)まで約500倍上昇している。
また、ICOで大量のETHを取得した別の大口取引者の活動も確認されている。過去2年間取引のなかったアドレス(0x0c)は、15日に活動を再開し、10,000 ETH(約24億円)を動かし、Binance、OKX、KuCoinの3つのオフショア取引所に送付した。さらに同アカウントは、追加の10,000 ETHを移動させた。
20日の午後、さらに別のアドレス(0xB0C)が4年ぶりに取引を行い、2,555 ETHを売却して6.2億円相当のステーブルコインを取得した。このアカウントは2018年11月27日に2,594 ETHを約4,200万円で取得していた。
これらの動向が、イーサリアムの価格に一時的な影響を及ぼす可能性があるとの憶測も広がっている。2023年に入り、イーサリアムは好調を維持し、4月中旬には2,000ドル台まで回復した。しかし、現在の取引価格は1,650ドル程度であり、過去1週間の上昇率は2.7%。同期間のビットコインの上昇率(4.9%)を下回っている。
しかし、仮想通貨市場全体が上昇する中、盗難事件も増えてきているため、これらの大口取引者が資産を保護するための新しい手段を探している場合もある。
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23年4月24日には、イーサリアムのICO参加者(0x82)が約8年ぶりに2,360 ETHの移動を行ったことがオンチェーンデータで確認された。その後、移された資産は新しいアドレスで保持されている。
7月19日には別のイーサリアムの初期投資家のウォレット(0x8b5)からKrakenへ61,216 ETH(約170億円相当)送金されたことが明らかになった。当時、Kraken(Global)でのETHステーキング利用のために行われた可能性が高いと推測された。
9月20日時点にKrakenのステーキング総量は795,745 ETH、5月の768,000 ETHから1%増加している。
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ETH取引所残高は減少傾向
一方、ETHのステーキングへの関心の高まりから、取引所のETH保有量は減少傾向にある。Glassnodeのデータによると、中央集権型取引所のイーサリアム残高は、ETH供給量全体の12.08%程。4月の上海アップデート以降、ステーキング率が年始の13%から執筆時点に22%まで増加しており、今後もこの傾向は続くと推測される。
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イーサリアムの共同創設者であるヴィタリク・ブテリン氏も、2023年に入り資産を頻繁に移動しており、18日にはKrakenに300 ETHを送付した。さらに、8月21日には、米国の取引所Coinbaseに約100万ドル相当のETHを、3月13日には200 ETHをKrakenに送付した。
ブテリン氏の動きは、新しいプロジェクトの資金調達や運用資金の調整のための動きと見る声も挙がっているが、具体的な背景は明らかでない。執筆時点、ブテリン氏の保有するウォレット(0x1Db)には2,451 ETHが残されている。
なお、23年5月6日、イーサリアム財団が仮想通貨取引所クラーケンに約3000万ドル相当のETHを送付した。これにより売り圧力がかかるのではないかと市場での懸念が高まり、ETH価格は4.8%下落していた。
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