トークンや分散型台帳技術の活用も検討必要──財務省が「デジタル円」の有識者会議開催
CBDCの論点
財務省は13日、アプリやカードの決済での利用が想定される中央銀行デジタル通貨(CBDC)について、有識者会議(第8回)を開催した。
同日に会議の取りまとめを公開していているが、これはCBDCの導入を前もって判断するものではないと説明。導入することになった場合に備えて、考えられる制度設計上の主要論点に関する基本的な考え方や選択肢などを明らかにすることが目的だとしている。
日銀は現時点でも「デジタル円」となるCBDCを発行するかは決断していない。その一方で、他の主要国と同様に研究や実験は進めている。今回の有識者会議は、「日銀や関係省庁と連携しながら、国民的議論を経てCBDCを導入することになった場合に遅滞なく発行できるように準備を進めるよう財務省に期待している」と述べた。
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CBDCとは
「Central Bank Digital Currency」の略で、各国・地域の中央銀行が発行するデジタル化された通貨を指す。仮想通貨との大きな違いは、CBDCはデジタル上の法定通貨であること。
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議論のポイント
CBDCについて今回の有識者会議では、主に以下の内容が議論された。
- 日銀や仲介機関の役割
- 現金や銀行預金、他の決済手段との共存・役割分担
- セキュリティの確保
- 利用者や取引に関する情報の取り扱い
- 法令面の対応の必要性
- コスト負担のあり方
- クロスボーダー決済
日銀の役割の箇所では、「CBDCの記録・確認を正確に行うための仕組み(台帳等)の管理を行うことが適当」と記載。そして、技術については「トークン型や分散型台帳技術といった技術を活用するかも含め引き続き検討が必要」だとしている。ブロックチェーンは分散型台帳技術に含まれる。
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また、現金との共存・役割については、CBDCは相互に補完し合うものと考えることが基本だと主張。そして「匿名性」については、CBDCで高額・高頻度での取引が容易になる可能性も踏まえ、マネーロンダリング対策(AML)やテロ資金供与対策(CFT)を重要視して検討していくべきだとしている。
ほかにも、以下のようなポイントが挙げられた。
- 金融システムや経済への影響を考慮し保有制限の設定を検討する
- 民間の事業に影響する可能性があるため企業とも十分に議論する
- 日銀が取り扱う情報は必要最小限にする
- 政府は基本的に、必要に応じて情報提供を受ける
- 関係省庁と連携して、法令面の幅広い対応の検討を進める
- 他国との連携・調和を進める
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日経新聞によれば、財務省は今回の論点整理をもとに、2024年1月をめどに関係省庁の局長級や日銀の理事で構成する連絡会議を新設して、制度設計の大枠の整理を進める方針だという。
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