仮想通貨の「ポイ活」潮流、将来のトークン配布を見越した投資戦略
トークンのポイ活が活況に
2024年、暗号資産(仮想通貨)の世界でポイント報酬を獲得する活動(通称「ポイ活」)が流行しています。これは、ユーザーがプロトコルに接続し、将来のトークン付与量を期待して、様々なトランザクション履歴を残す行為の総称と言えます。
例えば、dApps(分散型アプリ)への資金の預入、借り入れ、スワップ、ブリッジやテストネットの利用などです。
Web3(分散型ウェブ)プロジェクトにおいて、将来的なトークン生成イベント(TGE)及びその一環で行われるエアドロップ(無料配布)の前段階として、ポイント制度を取り入れる風潮があります。
TGEとは、新しいユーザーをエコシステムに引き寄せる戦略であり、プロジェクトの分散化を推進し、ガバナンス提案への参加を促します。同時に、TGEはプロジェクトの初期に貢献した開発者や投資家にリターンを提供する機会でもあります。
以前はエアドロップの集計方法が事前に明示されることは稀でしたが、現在はポイントが初期段階である程度透明な形で提示されています。この透明性がユーザー間の競争意識を刺激し、オンチェーンデータにも活動量の増加が明確に反映されています。結果として、ますます競争が激化する循環が生まれているのです。
この記事では、2024年の暗号資産(仮想通貨)市場の上半期に注目を集めているトークン獲得戦略とポイ活について詳しく解説します。
傾向と分析
エアドロップ
現在のエアドロップのトレンドは、2023年にソラナ(SOL)エコシステムや、NFTマーケットプレイスBlurで採用されたマーケティング戦略が火付け役となりました。
2023年5月にソラナモバイルが発売したWeb3.0スマートフォン「Saga」は、様々なソラナエコシステムのプロトコルからトークンやミームコインをユーザーにエアドロップし、そのトークン価値の高騰が原因で、端末の本体価格を相殺するほどに至りました。その結果、Sagaは12月に完売し、翌年1月には次世代スマートフォン「Chapter 2」の予約が開始されました。
- 譲渡不可の「Saga Genesis Token」
- Genesisトークン保有者に対し、3,000万「BONK」トークンを配布(24年4月時点での価値: 約79,172円)。
- 「Access Protocol」からは、10万ACSトークンをエアドロップ(24年4月時点での価値: 約250ドル)。
Sagaの初期価格は約1,000ドル(約15万円)でしたが、2023年夏に600ドルへの値下げが行われました。結果的に、エアドロップによる収益がこの価格を上回る形となり、2次流通市場ではSagaが高値で取引されました。
また、ソラナエコシステム内では、他にも高額なエアドロップ事例が話題となっています。例えば、リキッドステーキングプロトコル「Jito」は12月に、約9,000万JTO(当時約1億6,500万ドル相当)のガバナンストークンを配布するエアドロップを開始しました。
JTOの対象は9,852のアドレスに限定されていたため、特に注目される事例となりました。わずか40ドル相当のトークンを入金しステークしたユーザーは、ティア1相当のポイントを獲得し、最大で9,882ドル相当のJTOトークンを手に入れることができました。
これらの成功事例は、ソラナエコシステムにおけるウォレットアドレスの増加とユーザーベースの拡大に貢献しており、他のプロジェクトもこの流れに追随する傾向にあります。
ポイントプログラムの台頭
Web3におけるポイント制度は、2022年10月にローンチされたトレーダー向けNFT市場「Blur」や、関連するL2プラットフォーム「Blast」によって普及しました。Blurでは、取引量に応じてポイントが付与され、これがトークン獲得量に直接影響を及ぼすシステムが採用されています。
ポイント制度について、仮想通貨取引所BitMEXの創業者であり元CEOのアーサー・ヘイズ氏は、2024年2月のブログ「ポイント・ガード」において、ポイントプログラムが「2021年の仮想通貨強気市場で見られたイールドファーミングの代替となり得る」と評価し、その利点を詳細に説明しました。
- ポイント付与を通じて、ユーザーにプロトコルの長期的な価値を高めるための特定のアクションを促すことができる。
- ポイントからトークンへの変換比率の設定やエアドロップのタイミングに関する裁量権を持つことができる。急速なトークン発行スケジュールに縛られない。
- トークン販売前にVCや富裕層投資家との契約に依存する必要が減少する。
- ICOとは異なり、トークンとお金が直接交換されず、具体的な報酬が約束されないため、規制上の懸念が軽減される。
プロダクトの初期段階でユーザーインタラクションを促進し、ユーザー獲得を目的としたマーケティング戦略として機能します。将来的にはトークン生成イベント(TGE)へのエアドロップが暗黙の了解として期待されていますが、この種の報酬が保証されるわけではありません。
そうした状況下でも、ポイント自体を取引する流通市場が出てきています。例えばウェブサイト「Whales Market」では、EigenLayerのポイント(LRT)に平均約0.18ドルで取引されており、約450万ドル相当が上場しています。
分析企業Messariのリサーチャーによると、LRTポイントの価値は1ポイントあたり約0.14ドルと試算されています。しかし、これらのポイントからトークンへの変換レートは多くの場合公開されておらず、暗号資産市場での「ポイ活」は、多くの不確定要素を伴う投資行動となっています。
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進行中のエアドロップ(及びポイント制度)
本章では、2024年4月時点で進行中のエアドロップやポイントプログラムを紹介します。これは参加を推奨するものではなく、情報提供を目的としています。
Marginfi(マージンファイ)/ソラナ
Marginfiはソラナ上で運用される分散型レンディングプロトコルで、ユーザーはトークンを貸し出して利回りを得たり、担保として貸し出されたトークンを使用して借り入れ、ステーキングができます。さらにJupiterを通じてスワップ機能、Mayanを利用したブリッジング機能もサポートします。
MarginfiはMRGNポイントを導入しており、ユーザーはMarginfiで取引することでエアドロップの資格をより高めることができます。
Drift Protocol(ドリフトプロトコル)/ソラナ
Drift Protocolはソラナ上に構築されたオープンソースの分散型取引所です。DEXプラットフォームには、スポット取引、無期限先物取引、借入、貸出、ステーキング、流動性の提供など、様々な取引オプションがあります。
今年、Polychain Capitalをはじめとする著名な投資家から2,350万ドルのシリーズA資金調達ラウンドを成功させました。
Drift Protocolにはまだ独自のトークンはありませんが、ポイントシステムを開始しています。プラットフォーム上で取引を行い、流動性を提供したユーザーはポイントを獲得します。
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EIGEN LAYER(アイゲンレイヤー)/イーサリアム
EigenLayerは、イーサリアムのブロックチェーン上に構築されたリステーキングのためのプロトコルです。
Blockchain CapitalやPolychain Capital、Coinbase Venturesらの著名なベンチャーキャピタルから総額5000万ドルを調達しています。
エアドロップの可能性については、EigenLayerがスケーラビリティとセキュリティを向上させるために独自のトークンを導入する可能性があります。エアドロップの資格を高めるには、EigenLayerのメインネットでrETHやstETHをステーキングを行い流動性を提供することなどで、ポイントを受け取ることが推奨されます。
Elixir(エリクサ)/イーサリアム
Elixirは、イーサリアム上のモジュラー「DPoS」ネットワークで、分散型プロトコルを通じて誰でも中央集権型および分散型取引所でのマーケットメイキングに参加できるように設計されています。
昨年、Hack VC、FalconX、Commonwealth、Chapter One、Ava Labs、などの著名なべンチャーキャピタルから総額 960 万ドルを調達しました。シードラウンドにはBitmexの創設者Arthur Hayesも参加しています。
$100以上を入金することで、エアドロップを含めたインセンティブを受ける可能性のある「ポーション」を獲得します。
Elixirはおいしいポーションをいくつか作りました。
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Napier(ネイピア)/イーサリアム
利回りのトークン化を提供するDeFi(分散型金融)プロトコル「Napier Finance」が、そのローンチに向けて動き出しています。「Llama Race」というゲーム形式のポイント獲得イベントを、メインネットローンチに先駆けて4月10日から開催中です。
Napier Financeは、「Curve Finance(カーブファイナンス)」の拡張レイヤーとして構築される予定の、利回り取引のDeFiプロトコルです。
Llama Raceは、Napier(ネピア)のトークン生成イベント(実施日は未公表)まで継続される予定。Napier Financeの独自トークン「NPR」と交換可能になる「Napier Points(ネピアポイント)」が導入されます。なおネイピアファイナンスの開発をリードするNapier Labsは、日本人起業家の小副川祐輔氏が起業したドバイ拠点の企業です。
Baseになだれ込むユーザーの思惑は?
現在、米国のコインベースが支援するレイヤー2ネットワーク「Base」で、ポイント活動が急速に拡大しています。このエコシステムは成長を続け、ユーザー流入も増加していることが観測されています。数週間にわたり、Base関連のミームやエアドロップに注目が集まり、投資家の活動が活発化しています。
データによれば、多くのユーザーがソラナからBaseへ資産を移行しており、投資家のセンチメントには明確な変化が見られます。また、過去1ヶ月間でBaseへの新規アドレスの流入は、ArbitrumやOptimismなど他のレイヤー2ソリューションを大きく上回っています。
特に注目すべきは、4月1日からの7日間で、Baseがイーサリアム(ETH)とArbitrumのトランザクション数を合わせた数よりも多くのトランザクションを処理しており、その活動の規模と成長の速度を如実に示しています。
Base圏のエアドロップ(及びポイント制度)
現在、Baseには独自のトークンが存在しません。Coinbaseはこれまで将来トークンを発行する可能性を否定し続けてきましたが、昨年9月、Coinbaseの最高法務責任者であるPaul Grewal氏は、Baseのトークン発行の可能性を完全には否定していないと述べました。
これは、MessariのMainnetカンファレンスでの木曜日のインタビューで明かされたことです。Grewal氏は「トークンは将来のある時点で実現可能だと思います」とDecryptに語っています。
この発言から、Baseの初期ユーザーたちに対するエアドロップへの期待が高まり、多くのユーザーがプラットフォームに参加しています。現在、BaseのdAppsを通じて行われるブリッジやスワップなどの取引が盛んで、これらを積極的に行うことでエアドロップ資格を獲得しようとする投資家が増えています。これは新たなトレンドとなり、多くの投資家がさまざまなアプローチを探求している様です。
以下はBaseチェーンで展開されているエアドロップ(及びポイント制度)の一部です。
Farcaster(ファーキャスター)
分散型SNSのプロトコルFarcasterは、米コインベースの2名の元幹部が創設しました。
「Warpcast」というFarcasterのアプリは、イーサリアム(ETH)の共同創設者ヴィタリック・ブテリン氏やUniswapの創設者アダムズ・ヘイデン氏、ソラナRPCノード開発企業HeliusのMert氏らの著名人が使用しているとの情報が広まっていることでも関心を集めています。
Farcasterを早くに使用し始めた人のステータスシンボルとされるNFT「Farcaster OG NFT」は、NFT市場「OpenSea」において底値の0.69ETH(23万円相当)から数日で2.7ETH(92万円相当)まで291%超上昇しました。
ミームコインDEGENは、Farcaster内のアクティブなチャンネル「degen」から生まれ、2024年1月末にデビューし、初期供給の70%がコミュニティにエアドロップされたことが話題になりました。
Avantis(アヴァンティス)
Avantisは、ユーザーが無期限先物などのデリバティブ商品、外国為替、商品に対してロング(買い)またはショート(売り)のポジションを取ることができる先進的な分散型レバレッジ取引プラットフォームをBase上で開発しています。
Avantisは、Pantera CapitalやGalaxy Digitalなどの投資家から400万ドルの資金を調達しました。
メインネットを立ち上げており、プラットフォーム上で取引を行うユーザーは、将来トークンをローンチする際にエアドロップを受け取る可能性があります。
まとめ
2024年の強気相場に注目を集めるエアドロップ、ポイント活動ですが、ユーザーには目先の利益に惑わされず、冷静に戦略と予算を配分することが求められます。特に、投資前の徹底したデューデリジェンス(購入前調査)の重要性が増しています。
ポイントをトークンに変換される交換レートが明示されていないケースが多く、将来の価値が不透明であるため、ポイントファーミングはリスクが高く、知らぬ間にユーザー自身がファーミングされてしまっているとの指摘もあります。
また、大規模なポイントファーマーが有利である一方で、小規模な参加者は比較的少ない報酬を受け取るケースもあります。大量の労力を投入し、資金をリスクにさらすだけの価値があるかどうか、慎重に検討する必要があります。
ポイント制度のリスクと報酬を慎重に評価し、賢明な投資判断を行う姿勢が重要です。
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