AIと仮想通貨の相乗効果で世界GDPに20兆ドル上乗せの可能性=Bitwise
AIと仮想通貨のシナジー
米暗号資産(仮想通貨)投資企業Bitwiseのアナリストであるジュアン・レオン氏は11日、人工知能(AI)と暗号資産(仮想通貨)の相乗効果についてのレポートを発表した。
この二つの技術が組み合わされば、2030年までに世界のGDPに合計20兆ドル(約3,100兆円)を追加する可能性もあると意見している。
レオン氏はAIと仮想通貨が交差する点として、まずデータセンターを挙げた。データセンターへの需要がひっ迫しているとして、次のように指摘している。
AI覇権をめぐる競争により、データセンター、AIチップ、電力へのアクセスが前例のないほど不足している。
世界最大の4つのクラウド企業(Amazon、Google、Meta、Microsoft)は、主にAIの需要増加に対応するために、2025年だけでデータセンターの増築に2,000億ドル(約31兆円)近くを費やすと予想されている。
こうした状況で、膨大な量のデータを処理および保存する目的に特化して構築されている、ビットコインマイニング事業者の施設が役立つと続けた。
実際に、米上場マイニング企業コア・サイエンティフィックやHut 8、Iris Energy、その他のマイナーも、AI向けのコンピューターホスティング事業に取り組み始めているところだ。
例えばコア・サイエンティフィックは、AIモデルのトレーニング向けインフラ提供で、AIクラウドプロバイダーCoreWeaveと12年間に渡る契約を結んだ。この期間の累計総収益は35億ドル(約5,490億円)になると見積もられている。
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なお、CoreWeaveはコア・サイエンティフィックを買収する提案も行っていた。同社の発行済み株式すべてを完全希薄化ベース(将来の株式発行も考慮する方法)で10億2,000万ドル(約1,600億円)で取得するとしていたが、コア・サイエンティフィックは、これは過小評価だとして断った。
ディープフェイク対処や仮想アシスタント
データセンターでの提携の他、レオン氏は仮想通貨とAIの交差点として、情報検証やバーチャルアシスタントの分野も挙げた。
AIの生成するコンテンツについてはフェイクが拡散されるリスクも存在する。分散型パブリックブロックチェーンは、そのアクセシビリティ、透明性、改ざん耐性などによりこれに対処できる可能性があると述べる形だ。
レオン氏は具体的な例として、Attestivというスタートアップ企業に言及した。この企業は、動画のメタデータ(録画日時や場所など)に基づいてデジタル「指紋」を作成しブロックチェーンに保存する。
動画が操作されている疑いがある場合には、プラットフォームはオリジナル動画と照合して、視聴者に改ざんされていると知らせることが可能だ。
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また、レオン氏はAppleのSiriなどに代表されるバーチャルアシスタントに関しては、飛行機のチケットの購入から予約などの業務をこなすことができるようになっていると指摘。
こうしたアシスタントがスマートコントラクトやビットコイン、ステーブルコインなどの分散型の仮想通貨を扱えるようになることで、生産性がさらに高まる可能性があると意見している。
レオン氏は最後に、PwCが2030年までにAIは15.7兆ドル、仮想通貨は1.8兆ドルを世界経済にもたらす可能性があると予測していることに言及した。合計すると17.5兆ドルになるが、両方の技術のシナジーにより合計価値が20兆ドル以上に達することも有り得るとしている。
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