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AIがお金を扱う時代の金融インフラへ イオレ瀧野CEOが語る「Neo Crypto Bank構想」

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

株式会社イオレ 代表取締役社長 兼 CEO 瀧野諭吾氏

AIインフラから金融までの領域で事業を広げる東証グロース上場のイオレは2025年10月、次世代金融基盤「Neo Crypto Bank(ネオクリプトバンク)構想」を発表した。暗号資産(仮想通貨)を「保有」から「活用」へと進める狙いだ。

デジタルアセットの取得を起点に、レンディング・運用・活用へと機能を段階的に広げる構想で、一般ユーザーとの最初の接点となるのが暗号資産レンディング「らくらくちょコイン」である。

同社が見据えるのは、AIがブロックチェーン上で自律的にお金を扱う時代の金融インフラだ。なぜAIとブロックチェーンなのか。なぜ上場企業がレンディングやトレジャリーに踏み込むのか。

イオレがタイトルスポンサーとして参画したWebX2026の会場で、代表取締役社長 兼 CEOの瀧野諭吾氏に聞いた。

瀧野諭吾
瀧野 諭吾(たきの・ゆうご)
株式会社イオレ|代表取締役社長 兼 CEO
AIインフラ、デジタルアセット、次世代金融の融合領域に注力するテクノロジー起業家。2025年6月、株式会社イオレ(東証グロース:2334)の代表取締役社長 兼 CEOに就任し、同社をAIコンピュートインフラとクリプトネイティブな金融サービスを軸とするプラットフォームへと進化させている。AI時代の金融基盤「Neo Crypto Bank」構想を推進し、AIエージェントが経済活動に参加する未来を見据えて、ブロックチェーンを基盤とする次世代金融インフラの構築に取り組む。
目次
  1. オンチェーン金融の構想
  2. 資産で築く金融基盤
  3. 事業と規制の追い風
  4. AIエージェント経済へ

01PARTオンチェーン金融の構想

「暗号資産金融」から「オンチェーン金融」へ

暗号資産事業の位置づけと、イオレが取り組む意義を教えてください。

DAT(デジタルアセットトレジャリー)がトレンドとなるなか暗号資産金融事業に参入し、新株予約権も発行してきました。そのためデジタルアセットトレジャリー企業と受け止められがちでした。

目指すところは別にあります。国内にAIが稼働する環境を築き、その社会実装を進めた先には、AIが自律的にお金の受け渡しを担う世界が訪れる。そこで金融インフラを担うべく取り組んでいるのが、オンチェーン金融事業です。当初は「暗号資産金融事業」という名前でした。

編集部注:イオレは2025年6月の経営体制刷新を機に、インターネットメディア事業からの転換を進めてきた。現在はAIデータセンター事業、HR Tech・Ad Techなどを手がけるAIUI事業、暗号資産金融事業などを展開する。

Neo Crypto Bank構想とAIの役割

2025年10月発表の「Neo Crypto Bank構想」について教えてください。

出発点は、既存の金融インフラの老朽化です。そこへブロックチェーン技術が台頭し、24時間365日、低コストで送金でき、あらゆる取引が台帳に刻まれた状態で経済活動が営めるようになりました。世の中は急速にこの仕組みへ移っています。

米国では金利面から見てもオンチェーンでの資産運用が進み、市場そのものが移りつつあります。一方、日本は規制などの要因から進んでいない。RWA(リアルワールドアセット)やトークン化された証券が海外で広がるなか、遅れをとっている危機感がありました。

運用できる資産やチェーンの数が増えたとき、人手だけではすべてを適切に扱いきれません。そこで登場するのがAIです。予測技術に加え、人間には不可能な緻密さと頻度で作業をこなし、24時間365日休みなく稼働できる。人が交代すればコンテキストは失われますが、AIは一つの連続した流れとして作業を続けられます。お金を扱ううえで、明らかに人を上回る。

AIとブロックチェーンを掛け合わせて金融システムとして世に用意しなければ普及しないと考え、これを「Neo Crypto Bank構想」としてまとめて発表しました。

編集部注:「Neo Crypto Bank構想」は2025年10月14日に公表。取得(DAT=デジタルアセットトレジャリー)を起点に、レンディング・運用・活用へと機能を段階的に拡張し、これらをワンストップで担う「スーパーアプリ」を中核に据える。2027年度の公開を目指す。(関連:Neo Crypto Bank構想の発表

02PART資産で築く金融基盤

「預かる」から始める理由

Neo Crypto Bank構想を実現するうえで、金融機能の実装はどこから着手していくのでしょうか。

この構想を広げるには、扱うお金の総量を増やす必要があります。市場から資金を調達して保有するクリプトやステーブルコインを積み増し、個人や法人からも資産をお預かりして運用する。「預かる」活動を進めています。

これは銀行の成り立ちと同じです。ご自身で運用されるより効率的に増やせると説明しながら、アセットを積み上げています。今後、決済をAIが担う局面では、一定の与信も必要になってくる。まず裏付け資産を厚くし、そのうえで運用・決済・貸し付けといった金融アプリケーションへ段階的にスコープを広げていきます。

スーパーアプリが変えるユーザー体験

スーパーアプリをローンチしたら、ユーザー体験はどう変わりますか。

アプリの存在を意識せず使える体験を作りたい。画面をひとつひとつ覚えなければ使えないようでは、変化の速い経済に通用しません。スーパーアプリは、さまざまな機能をエコシステムとして束ねるものです。日本円で送金・支払い・預け入れをするたびに、既存の金融システムより効率よく金利が積み上がり、手数料も抑えられる。日常で実感できる価値に重きを置いています。

送金手数料がゼロになり、資金を預ける期間に金利が付いてむしろお金が入ってくる。そんな世界を実現できれば、増えた資金の使い道へとユースケースは自然に広がる。利用者の「こうしたい」を今度はAIが対話を通じて取り計らってくれる。その姿を目指し、事業者との連携やAI活用領域の調査・開発を進めています。

投機ではなく「事業のための資産」

暗号資産の購入は投機目的ではないか、という見方もあります。他のトレジャリー企業との違いを教えてください。

当時のDAT企業は、法定通貨よりビットコインで保有したほうが将来値上がりするという発想から始まったと理解しています。当社は、金融システムをオンチェーンで構築するための「裏付け資産」を用意する目的で始めており、ここが根本的に異なります。

これは投機ではなく、事業のためのリソースであり資産です。なかでも信用の部分が大きい。これだけの資産があるからこそ、大手企業に与信を提供したり、決済の枠で立て替えたりできる。その目的で、暗号資産に加えてステーブルコインの預かりまでデジタルアセットの保有を拡大しています。

当社は自らAIインフラも構築しています。データセンターの建設には巨額の資金が必要ですが、資産がなければ銀行の融資も担保も難しい。裏付け資産を積み上げることで資金調達力が高まる。オンチェーン金融とインフラ事業を結びつけたエコシステムを築くことが狙いです。

編集部注:イオレは取材後の2026年7月29日、AIエージェントとの親和性を理由に暗号資産「ハイパーリキッド(HYPE)」を取得したと発表した。7月28日付で約1,008万円分を取得し、8月末までに総額1億円とする予定。国内の上場企業によるHYPEの取得は初の事例となる。

03PART事業と規制の追い風

「らくらくちょコイン」が選ばれた理由

暗号資産レンディング「らくらくちょコイン」で、想定と違った点はどこでしたか。他社との差別化とあわせて教えてください。

想定と異なったのは、選ばれる理由が何よりも「信用」や「信頼」にあった点です。上場企業として監査を確実に回し、セキュリティに配慮した設計を徹底している。その信頼から、預け直しや法人顧客のまとまった預け入れにつながっています。

差別化は、レートの出し方です。年利回り(APY)はおおむね7〜10%を通常水準としています。なかにはこれを上回るレートを出す事業者もありますが、DeFi(分散型金融)での運用などリスクの高い手法によるものもあります。当社はCeFi(中央集権型金融)に限定し、安全性と安定した収益率を両立しています。

運用前の市場調査・テストから運用中のモニタリング・改善までを一貫して担うチームが違いだと考えています。数十%が出る領域もありますが、投機性を煽らず、確実に出せるレートを提示する。これを原則として貫きます。

編集部注:「らくらくちょコイン」は2026年1月28日に正式提供を開始した暗号資産レンディング。約1万円相当から利用でき、Fireblocks基盤とJ-CAMなど複数の提携先による分散運用を採用する。貸借料率は2026年7月時点でXRP7%・BTC/ETH8%・USDC10%。(関連:らくらくちょコイン

レンディングとAIデータセンターの連鎖

レンディングとAIデータセンター事業は、どう連鎖するのでしょうか。

事業会社として、AIデータセンター投資とレンディングを連鎖させることも視野に入れています。昨年度(2026年3月期)はGPUサーバーの販売事業の売上高が100億円を超えました。投資家にGPUサーバーを販売し、運用を外部が担い、運用益を還元するプロダクトです。現在は日本円建てですが、取引所やライセンス取得も含め、クリプトやステーブルコインでの運用へつなげる流れを構想しています。

また、ブロックチェーンを基盤とするオンチェーン金融を活用することで、24時間365日の稼働や即時決済(リアルタイムファイナリティ)が実現するだけでなく、これまで個人には開放されにくかった高額なインフラ資産の「小口民主化」が可能になります。そうなった場合、データセンターの小口オーナー権をトークン化し、流通させることも可能になるかもしれません。こうした金融レイヤーとAIインフラレイヤーの統合は、単なる資金運用の枠を超え、データセンター投資における資本効率を劇的に最適化する戦略になりうると考えています。

事業会社ならではの商品性を突き詰められる。ここが強みです。AI産業が抱える情報には著しい非対称性があり、当社は日本でそのトップランナーの一角にいると自負しています。これを活かし、将来大きな収益を生む事業への投資機会と経路を築いていきます。

編集部注:イオレは2026年7月6日、シンエネルギー開発と、西日本での100MW級AIデータセンター開発・電力インフラ整備に関する業務提携の基本合意書を締結。対象はLNG火力発電所を含むエネルギーインフラの企画・開発や、既存発電所の取得。いずれも事業化を検討する段階にある。

金商法移行という「追い風」

暗号資産の金商法移行は、イオレにとって追い風でしょうか、それとも重荷でしょうか。

確実に追い風です。規制が定まることは、社会実装を進めるための準備であり、前提でもあります。規制がない時期は、投機的な過熱で本来入るべきでない資金も流入し、上場企業が暗号資産を扱うと監査が通らない、銀行が口座を開かないといった事態も生じていました。

法律で規制が整い、健全に事業を回せる構造を築ければ、多くの企業とこうした取り組みを進められます。

大変ではありますが、重荷とは捉えていません。これから先、AIがあらゆる企業の業務に関与し、人が複雑な作業を担わなくとも済む世界が来ます。そこでは多くの企業がこの領域に参入し、整備を進めざるを得ない。その流れのなかでは、明らかに追い風です。

編集部注:暗号資産を資金決済法から金融商品取引法(金商法)へ移す改正法は、取材後の2026年7月15日に参議院本会議で可決・成立した。公布からおおむね1年以内に施行される見込みで、2027年中が有力。申告分離課税(20%)は施行日が属する年の翌年1月1日以後の譲渡から適用されるため、2027年中の施行なら2028年1月からとなる。(関連:暗号資産ETF解禁と金商法改正
規制を締め付けではなく、枠組みとして捉えているのですね。体制面での備えはいかがですか。

おっしゃる通りです。何が許容され何が認められないかが明確でなければ、進めてきたことが実は不可だったという事態になりかねません。今回、天羽(あもう)氏が専務取締役として加わりました。コインチェックからAnimoca Brands Japanを経て、金融庁との対話に精通し、規制の整備方針を熟知した経営陣の合流です。この流れを好機と捉え、安全な領域で事業をより加速させていきます。

編集部注:天羽健介氏は2026年6月25日付でイオレの専務取締役 兼 上級執行役員に就任。コインチェックで常務執行役員、Animoca Brands Japanで代表取締役社長CEOを歴任。

04PARTAIエージェント経済へ

AIエージェント経済の到来時期

AIエージェント経済は、何年後に到来するとお考えですか。

そう長くはかかりません。逆に言えば、AIエージェントによる金融・経済活動をいち早く実装した企業こそが圧倒的に成長する。私はそう見ています。

「大企業がやることだろう」と言われます。そうではありません。たとえば地方企業では、いまだ見積もりをメールで受けて手作業で返す運用が残っていますが、ここにAIを入れれば、24時間365日、見積もりから発注まで人が介在せずに完結する。

AIの導入はもはや一丁目一番地であり、成功例を築いた企業から波及して一気に広がるでしょう。

AIは検索の代替や悩み相談として使われる段階を越え、AIが自ら仕事を進める仕組みづくりに着手する企業が増えてきました。そして、企業が手をこまねいている間に、それを使いこなす個人がソロプレナーとして事業を立ち上げ、会社を大きくしていく。海外では、そうした企業が1年と経たずに数百億〜数千億円の評価を得る時代になっています。

いつ誰から仕事の話が来るかは分かりませんが、依頼する側は、いちばん早くレスポンスをくれたところに頼む。急いでいればなおさらです。そうした領域はAIが得意ですし、AIがお金を扱えないために止まる工程も多い。そこを解消すれば流れは一気に円滑になり、一連のプロセスを走り切った企業が覇権を取る時代になります。

これほど激しい世の中を生きているのだと捉えて挑戦していけば、1年後にはそれが当たり前になっている可能性は十分にある。その後は対応できる企業とできない企業で差が広がり、勢力図の再編を経てデファクトスタンダードが定まる。起きるのは、この1〜3年でしょう。

イオレの体験型AIサイネージの仕組み

WebX2026のイオレブースで試験運用された「体験型AIサイネージ(電子看板)」

イオレはWebX2026会場の自社ブースで、基盤技術「Physical AI Agents Network」を組み込んだAIサイネージを初めて実地にて試験運用した。来場者の動きや視線を端末内のAIが検知して表示を切り替え、手をかざす操作でそのまま申込へ進める仕組みで、カメラ映像は端末内で処理し保存も外部送信もしない。触れずに遊べる体験は70回プレイされ、うち11件(約16%)が申込につながったという。(参考:イオレのプレスリリース

川上から川下まで、構造で勝負

AIとブロックチェーンの2つの先端領域が、イオレの強みになっているのでしょうか。

強みでもあります。インターネットの黎明期から仕事をしてきて、川上から川下まですべてを捉えた企業が長く繁栄する姿を何度も見てきました。AIでも同じ、むしろそれ以上に、土地・電力からデータセンターを築き、計算資源を積み上げ、アプリケーションやソリューションを構築し、金融までを一気通貫でつなぐ。これが、いまのIT企業のあるべき姿だと考えています。

AIとブロックチェーンの二つの領域というより、この全体の構造で勝負を挑む企業。それが、イオレの本当の姿だとご理解いただきたいと思います。

※本記事は情報提供を目的としたものであり、投資の助言・勧誘を目的とするものではありません。記載の利率・利回りは取材時点の情報にもとづくもので、将来の成果を保証するものではありません。暗号資産レンディングのご利用にあたっては、元本が保証されるものではない点にご留意ください。

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