STATICE -Corda事例紹介- ブロックチェーンベースの少額短期保険向け管理基盤
今回の記事は、「SBI R3 Japan」が公開しているMediumから転載したものです。
より様々な内容の記事に興味のある方は、是非こちらにも訪れてみてください。
1. はじめに
代理店/募集人管理業務の標準化・簡素化を目的としたSTATICEというアプリケーションを紹介します。SBI日本少額短期保険株式会社(以下「SBI日本少短」)とコンセンサス・ベイス株式会社(以下「コンセンサス・ベイス」)がCordaをベースに開発しました。
SBI日本少短はSBIグループの一社であり、少額短期保険業を行っています。コンセンサス・ベイスはブロックチェーン専門企業としてコンサルティングやシステム開発を手掛けており、2020年4月にCordaを提供するR3社とパートナーシップを締結しています。
2. 少額短期保険と代理店/募集人とは?
少額短期保険業とは、保険業のうち、一定の事業規模の範囲内において、保険金額が少額、保険期間2年以内の保険で保障性商品の引受のみを行う事業、として法令上定められています。
SBI日本少短では、主として代理店契約を締結した不動産関連業者や二輪車ディーラーおよびインターネットを通じて、賃貸住宅・テナント向け保険およびバイク・自転車用車両保険の募集を行っています。
なお、少額短期保険業における代理店とは、少額短期保険業者(以下「少短会社」)の委託を受けた者、募集人とは、代理店または少短会社の役員または使用人のことをいいます。
3. 代理店/募集人管理業務
STATICEは少短会社の代理店/募集人管理業務を標準化・簡素化するものですが、その仕組みの前に代理店/募集人が保険募集を開始するまでの流れを説明します。必要な手続きは以下の通りです。
- 少短会社と代理店が代理店委託契約を締結
- 少短会社が財務局に代理店の登録申請または募集人の届出を行う
- 登録が完了した代理店による代理店業務および募集活動の開始
また、保険募集代理店が一定の条件下で複数の保険会社を取り扱える「乗合制度」があり、こうした乗合代理店においては、各保険会社間で代理店・募集人情報を連携、共有する必要があります。このことが、代理店/募集人管理業務をより複雑かつ煩雑にしています。
4. 事業者別に異なる作業
少短会社は2020年12月2日時点で108事業者ありますが、財務局に提出する情報はほとんど同じものであるにも関わらず、代理店/募集人情報を事業者別に異なる方法で管理しています。また、「乗合制度」で対応する際には、事業者間で異なる連絡手段(メール、電話、郵送、FAXなど)を使って連携しています。
つまり、業界全体として多大な非効率が生じています。
5. 代理店・募集人管理基盤システムの開発
SBI日本少短とコンセンサス・ベイスはこれらの業務を標準化・簡素化するために少短会社向けの代理店・募集人管理基盤システムを開発しました。このシステムを使用することによって、少短会社は他の事業者と共通のフォーマットで、代理店/募集人情報を一元的に管理することができます。
さらに、「乗合制度」で対応する場合は、システム上で他の事業者と連携することが可能です。つまり、これまで事業者別に異なる管理方法と連絡手段で対応していた業務を共通化することに成功しました。業務改善によるコスト削減も図れます。
現在はSBIグループの少短会社のみでSTATICEを運用していますが、今後は同業他社にも広く活用いただくことで、少額短期保険業界全体の業務の効率化と標準化を目指していく考えです。
6. Why blockchain? Why Corda?
なぜブロックチェーンでこの仕組みを実現する必要があったのでしょうか。同じ仕組みを従来の中央集権型の仕組みで実現する場合は、信頼できる第三者機関が必要となります。
事業者が持つデータを第三者機関が管理するデータベースに保管しなければなりません。機密情報を含むあらゆるデータを外部のデータベースに喜んで預けたいということであれば問題無いのですが、実際はガバナンス体制や情報漏洩リスクなど、できれば避けたい問題が数多く存在すると思います。
ブロックチェーンでは事業者がデータベースを各々持つことによって、第三者機関を必要としない仕組みが構築できます。なぜならば、データベース同士が常に同期するので、保管されている情報が常に正しいと証明できるからです。
しかし、これでは情報漏洩リスクを排除できません。一般的なブロックチェーン基盤の場合は全参加者に全データを共有します。このままではエンタープライズでの使用は難しいです。
Cordaは当事者間のみにデータを共有する仕組みです。A社とB社が情報を共有する場合は、関係のないC社にはデータの内容どころか共有があった事実さえも知らされません。
つまり、事業者は自社のデータの流通範囲を完全にコントロールできるのです。
まとめると、Cordaを用いる利点は、①第三者機関を必要としないこと、②自社のデータの流通範囲をコントロールできること、になります。Cordaは従来の中央集権型の仕組みとブロックチェーンの良いところをそれぞれから取り入れていると言えます。
7. 終わりに
STATICEを紹介しましたが、なぜCordaによって代理店・募集人管理業務の効率化を図れるかお伝えできたかと思います。事業者間の情報共有を実現しようとした場合、従来は第三者機関を設置する方法によって実現していましたが、ブロックチェーンの登場で第三者機関を必要としない仕組みの構築が可能となりました。
この利点は少額短期保険業界に限らず、他にも様々な業界で適用が期待されています。そして、Cordaであればプライバシーが確保された状態で、データを共有することが可能です。
もし、皆さんの業界で事業者間の情報共有における課題がありましたら、Cordaを選択肢の一つに加えて頂けると有難いです。
最後までお読み頂き誠にありがとうございます。記事へのご質問やブロックチェーンに関してお困りごとがございましたらお気軽にご連絡下さい。ブレインストーミングやアイデアソンも大歓迎です。
Facebook: https://www.facebook.com/R3DLTJapan
Twitter: https://twitter.com/R3Sbi
HP: https://sbir3japan.co.jp/product.html
お問い合わせ:info-srj@sbir3japan.co.jp
おすすめ記事
記事一覧はこちら
(記事作成:SBI R3 Japan/Takeshi Yagishita)