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ダラス連銀が警告、トークン化預金は銀行にとって諸刃の剣か  預金の安定性を揺るがすリスクも

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

この記事のポイント
  • 高品質流動性資産の積み増しなど対応策を提言
  • 残存期間10%短縮で銀行の金利リスク許容力5,800億ドル減

ステーブルコインの競合として

米ダラス連邦準備銀行は25日、トークン化預金の普及が銀行の預金基盤や流動性管理、満期(マチュリティ)変換に影響を及ぼしかねないとの分析を公表した。同行のエコノミスト、ロージー・レヴィ氏とスリニ・ラマスワミ氏は、トークン化預金の普及が進むと預金金利が市場金利に敏感になり、預金の保有期間が短縮されることで、銀行にとって預金の安定性が低下する恐れがあると論じた。

トークン化預金とは、商業銀行の預金をブロックチェーンなどの分散型台帳上でトークン化する仕組みだ。急速に普及するステーブルコインへの銀行側の対抗手段として期待されている。ステーブルコインが発行企業により主に現金や国債などの資産で裏付けられるのに対し、トークン化預金は銀行自身が発行主体となり、既存の銀行規制の枠組みの下で機能する点が異なる。

ほぼ即時の決済、スマートコントラクトによる取引の自動化、24時間365日の資金移動を実現できることから、多くの銀行がトークン化預金の開発・導入に向けた取り組みを進めている。

一方で、発行者間での移動が必ずしも容易ではないため、決済手段としての柔軟性ではステーブルコインに劣る。普及を後押しするには、複数の銀行間でトークンを利用できる仕組みや相互運用性の確立が欠かせない。そのため、銀行各社は、コンソーシアムや業界団体など、さまざまな導入モデルの検討を進めている。

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諸刃の剣となるか

トークン化預金は、銀行の顧客に迅速な決済やより効率的な流動性管理をもたらすと期待される一方、レヴィ、ラマスワミ両氏は、その高い柔軟性ゆえに、銀行が預金を安定的な資金調達源として使うことが困難になる可能性があると懸念を示している。

銀行は比較的安定した預金を原資に、融資を含む長期資産を保有している。企業が決済や資金管理などの事業運営に必要とする預金は、短期間で引き出されにくく、こうした「粘着性」の高い預金が銀行にとって安定した資金調達源となってきた。

しかし、預金がトークン化され資金移動が容易になれば、より高い金利を求めて預金が他行へ流出しやすくなる。加えて、AIエージェントの進化とスマートコントラクトなどのプログラム機能が組み合わさることで、預金者自身が操作しなくても預金を自動的に移動させることが理論上は可能になる。

ダラス連銀の試算によると、預金の加重平均残存期間(預金が流出するまでの期間)が10%短くなった場合、銀行が長期融資や証券に伴う金利リスクを引き受ける余力は約5,800億ドル縮小するという。

さらに、預金金利の市場金利に対する感応度が10%高まれば、銀行が抱えられる長期の金利リスクの容量は、10年物相当額で約7,000億ドル縮小する可能性があるとしている。

こうした変化への対応として、銀行は預金金利の引き上げ、中央銀行準備預金や国債などの高品質流動性資産(HQLA)の積み増し、ターム債などの発行による市場調達の強化に動く可能性がある。

ただし、ホールセール市場での資金調達に頼って従来の融資規模を維持しようとすれば調達コストが上昇し、消費者や企業向け融資のコストを押し上げかねないと、両氏は警鐘を鳴らした。

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ブラジルの先行事例

こうした影響を考えるうえで、ダラス連銀はブラジルの即時決済システム「Pix」を参考事例として取り上げた。

Pixは2020年に導入され、24時間365日の銀行間リアルタイム送金を可能にした仕組みだ。2026年第1四半期にはアクティブユーザーが約2億人、月間取引額は約6,500億ドルに達している。

Pixはトークン化預金とは異なる技術基盤だが、銀行預金をリアルタイムで移動できる点では共通する。

2025年の研究では、Pixの利用が活発になるほど、銀行の流動性資産、特に国債への需要が増加する一方で、信用仲介機能が縮小したことが示された。また、銀行はより高い収益を求めた結果、残存する融資ポートフォリオに占めるサブプライムローンの割合を高めていったという。

ダラス連銀は、これらの結果がトークン化預金の普及によって生じ得る影響と重なるとしたうえで、米国で公的・民間の双方によるリアルタイム決済がさらに普及した場合の帰結を考える際に、重要な示唆を与えるとまとめた。

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