- Googleが量子計算の新手法を実証
- エラー率を40分の1に削減
新たな理論を実証
米グーグル・クアンタムAI(Google Quantum AI)は15日、量子コンピュータの実用化に欠かせない「マジック状態(Magic State)」を効率よく生成する新たな手法を、実機で実証したと発表した。研究成果は米科学誌「Science」に掲載された。
今回、実証したのは「マジック状態の培養」という手法で、自社の量子プロセッサ「Willow」上で行われた。培養しない場合と比べてエラーが約40分の1に減り、マジック状態の一種であるT状態(T-state)の論理忠実度(Logical Fidelity)は99.99%に達した。
量子コンピュータで汎用的な計算をするには、誤り訂正(Error Correction)を施したマジック状態(T状態など)と呼ばれる特殊な量子状態を継続して供給する必要がある。ところが、これには以下のような構造的問題があった。
- リソースの消費が大きい:高品質で誤り訂正されたマジック状態を作るには莫大なリソースが必要。(量子コンピュータの全容量の最大95%)
- 使い捨てである:一度使用したら再利用できず、常に新しく生成し続ける必要がある
この「コストの高さ」が20年間にわたり、量子コンピュータの大規模化を妨げてきた。グーグルの研究チームは2024年、この難関を打破する理論として「マジック状態の培養」を提唱していた。今回はそれを実機で実証したことになる。
「培養」はフィルターに近い仕組みだ。まず、量子チップ上の小さな領域にノイズを含む粗い状態を注入する。次に同期した測定を連続して行い、欠陥のある試行をリアルタイムで検出し、除去していく。検査を通過した高品質な状態のみを、より大きな誤り訂正コードへと移行させる。
これは理論上は非常に有望な手法だったが、実用化には技術的な工夫が必要だった。開発中には、ラボ内の電磁機器の不規則な変化(ドリフト)や室温のわずかな揺らぎによって、異常なデータが過剰に生じる課題に直面した。研究チームは、システムの制御精度を高めた上で、培養システム自体を測定ツールとして活用する新しいベンチマーク手法を考案し、このノイズの影響を抑えた。
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成果と今後の課題
今回の研究では、マジック状態の培養に適した「カラーコード(Color Codes)」と、広く研究されてきた「表面符号(Surface Code)」という2種類の量子誤り訂正方式の間で、量子状態を移行させる技術も実証された。
研究チームは、距離3のカラーコードから距離5の表面符号へ量子状態を移行させる「グラフト(grafting:移植)」に成功し、2024年に提唱された手法が実機でも正常に機能すること、精製した状態を保ったまま、異なる符号方式へ移植できることを確認した。
今回の実験成功によって、マジック状態の生成にかかる量子リソースを大きく減らせる見通しが立ち、実用的な量子コンピュータの実現に一歩近づいたことになる。
一方で、課題も残る。全試行のうち検査を通過したのは約8%で、歩留まりが低く、大規模な連続処理にはまだ使えない。また、達成した論理誤り率は1万分の1程度で、暗号解読や複雑なシミュレーションといった本格的な計算に必要な水準には届いていない。
グーグルのスンダー・ピチャイ(Sundar Pichai)CEOは、物理ハードウェア上でマジック状態の培養を実証したのは初めてだと述べた。一方でグーグルは、実用的な量子計算に向けては、より大規模な環境で実証する必要があり、技術的な課題も多く残っているとしている。
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