米テザー社、コマーシャルペーパーをUSDT準備金から完全に排除
コマーシャルペーパー保有量ゼロを達成
暗号資産(仮想通貨)の米ドルステーブルコイン「USDT」などを発行する米テザー社は13日、ステーブルコインの準備金からコマーシャルペーパーを完全に削除したと発表した。この分を米国財務省証券(米国債)に置き換えたとしている。
テザー社は次のように続けた。
テザー社は損失を出すことなく、これまで4.4兆円(300億ドル)以上のコマーシャルペーパーを手放してきた。このことは、当社の裏付け資産が保守的かつ専門的に管理されていることを証している。
また、当社は前四半期に米国債への直接のエクスポージャーを約1.5兆円(100億ドル)以上増やした。
また、今回の動きにより「リスクの高い資産の保有を限定し、分散されたポートフォリオを持つことをさらに確実にする」とも述べている。ステーブルコイン業界の透明性向上に向けた継続的な取り組みの一環だと説明した。
これまでの経緯
USDTの裏付け資産については、特にコマーシャルペーパーについて、契約先企業などの詳細が不明であることを懸念する声が上がっていた。これを受けて、テザー社は段階的にコマーシャルペーパーの保有量を削減してきた形だ。
7月1日には、裏付け資産のコマーシャルペーパー保有を約5,150億円(35億ドル)まで削減したと報告。さらに、9月30日には、コマーシャルペーパー保有額が約74億円(5,000万ドル)を下回ったと発表していた。そして今回、コマーシャルペーパー保有を完全に無くすという目標を達成した形だ。
テザー社は、「当社だけでなく、ステーブルコイン業界全体の透明性と信頼性をさらに高めるための一歩」になるとしている。なお、テザー社のパオロ・アルドイノ最高技術責任者(CTO)によると、9月末時点ではステーブルコインの裏付け資産において、米短期国債が占める割合は58%超だった。
スイスの店舗で決済導入へ
最近のUSDT採用事例としては、テザー社とスイスのルガーノ市の共同イニシアティブ「Plan ₿ Foundation」が4日、ビットコイン(BTC)、USDT、スイスフラン連動のステーブルコイン「LVGA」による決済を、正式にルガーノ市で導入することを目指すと発表したところだ。
マクドナルドやアートギャラリーから開始し、2023年末までには2,500超の店舗に3銘柄の決済を導入する計画である。
関連:マクドナルドで仮想通貨支払い開始 テザー社とスイスのルガーノ市が連携
当局の注視
ステーブルコインについては、米連邦準備制度理事会(FRB)のマイケル・バー監督担当副議長が12日、そのリスクについて言及したところだ。ビットコインなどの仮想通貨と比較して、法定通貨などに紐づけられた価格変動の少ないステーブルコインは、「民間セクターが発行する貨幣として機能する可能性が高い」と述べている。
このため、広く普及すれば、ステーブルコインは将来的に金融の安定にリスクをもたらす可能性もあるとして、規制枠組みの必要性を唱える形だ。
関連:米FRB副議長、銀行が仮想通貨業界とつながるリスクを指摘
画像はShutterstockのライセンス許諾により使用
「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します