バイナンス、FTXの買収は行わないと正式発表 FTX破産可能性高まる
FTXの買収は行わないと決定
大手暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンスは10日、FTXの買収は行わないと正式に発表した。
FTXに対する調査(デューデリジェンス)を行い、ユーザー資産の管理方法や米規制機関の動向に関する報道も加味して決定したと説明。FTXユーザーの流動性危機をサポートしたいと考えていたが、FTXの状況がバイナンスが支援できる限度を超えていたと述べている。
バイナンスは、どの業界でも大きなプレイヤーが失敗すると、消費者が被害を受けると指摘。しかし、仮想通貨のエコシステムは回復力が強まってきており、ユーザーの資産を間違った方法で管理してしまうような企業は、自由な市場から退場させられていくと信じているとコメントした。
また、規制が整備され、業界が分散化に向けて発展して行けば、エコシステムはさらに強化されていくと述べている。
最大手取引所であるFTXの財務危機については様々な情報が伝えられており、FTXがどのように顧客の資産を管理していたか、米規制機関が調査しているとの報道がある。
バイナンスのチャンポン・ジャオ(CZ)CEOは9日、同社がFTXのデューデリジェンスを行なっている間に、再度述べておきたい内容として、以下の5点をバイナンスチームに伝えていた。
- 今回の買収は事前に計画していたことではない。FTXの状態は私はほとんど知らなかった。
- FTXの調査はまだ継続中であり、FTTトークンの取引はしないで欲しい。
- 買収について、社内でもコメントしてはいけない。
- FTXの財務危機は「我々の勝利」ではない。ユーザーの信頼は揺らいでおり、規制が厳しくなる可能性がある。
- 仮想通貨の価格は気にせず、プロダクトの開発を継続して欲しい。
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事前報道
買収撤回については公式発表の前から、バイナンスが買収を行わない方向に傾いていることを複数の海外メディアが報じていた。
バイナンスのPatrick Hillmann最高戦略責任者(CSO)は、買収は行わないことを検討していると米メディア「Fox Business」に話し、以下のように述べていたという。
FTXに対する調査を開始して、36時間が経過した。調査が終了した時点で、我々はバイナンスユーザーのことを最優先に考えて結論を出す。
また何か新しい情報ができたら共有する。
また、買収の発端となった、FTXの姉妹企業アラメダリサーチのバランスシートの漏洩を報じたCoinDeskは、情報筋の話として、FTXは米コインベースやOKXといった大手取引所にも支援を求めていたが断られたと伝えた。
さらに、FTXのバランスシートには、8,700億円(60億ドル)超の穴(負債総額が資産総額を超過する状態)があるとの報道もある。ブルームバーグの最新報道によると、FTXが緊急資金調達ができないと、破産申請をせざるを得なくなる状況になるという。
なお、FTX.comで現在ユーザーの出金を停止している状態が続く中、OTC取引専用のテレグラムチャットでは凍結された資産に関して、1ドル分に対して0.1〜0.2ドルのトレーダー間の投げ売りのやりとりが見られているという。
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(*追記)App Storeから、FTX Proのアプリが削除された模様。FTX.US版アプリ健在だ。
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