会計事務所Mazars、仮想通貨企業への監査サービス提供停止
仮想通貨企業への監査サービス停止
会計事務所Mazarsグループは、暗号資産(仮想通貨)企業に監査業務を提供することを、一時的にすべて停止する。CNBCなど複数メディアが報じた。
サービス停止は、大手仮想通貨取引所バイナンスが明らかにしたものだ。バイナンスの広報担当者は、「Mazarsは、Crypto.com、KuCoin、そしてバイナンスなどを含めて、世界的にすべての仮想通貨企業との仕事を一時的に停止することを示した」と述べている。
資産証明の方法に懸念か
Mazarsは、この動きについて、仮想通貨取引所が資産証明を行い始めたことに関連しているとして、次のように説明した。
仮想通貨企業の準備金証明レポートの提供に関する活動を一時停止した。そうした資産証明を、一般的に人々がどう理解するかについて懸念したためである。
さらに、Mazarsは、資産証明の報告は、「合意に基づいた手続きによる報告基準に沿って行われる」ものであり、資産についての「保証や監査見解」ではないと続けた。あくまで、一定の手続きに基づく「限定的な所見」だとしている。資産証明の厳格さに限界があることを示唆した形だ。
背景として、FTXの破綻により、仮想通貨取引所への信頼が揺らぐ中、業界ではユーザーの全資産をカバーできるだけの資金があることを検証可能な方法で証明しようとする動きがある。
バイナンスは11月、資産証明(PoR:Proof of Reserves)システムをリリースする計画を発表。ユーザーが、ビットコイン(BTC)など仮想通貨のPoRのページを閲覧できるようにすると共に、PoRの結果を第三者に監査してもらうことも計画していると述べた。
その後12月7日には、「バイナンスのユーザー資産の透明化とPoRのアップデートの一環として、グローバルな金融監査・税務・アドバイザリー企業Mazarsのデジタル資産専門家と連携する」ことを公表。Mazarsが発行したビットコイン資産証明レポートを紹介した。しかし、現時点ではこのレポートへのリンクは切れている。
他に、コインベースやクラーケン、BitMEXなどの取引所も資産開示についての声明を発表した。
一方、開示方法によっては不完全だという指摘もある。クラーケンのジェシー・パウエルCEOは、「マイナス残高を有する顧客アカウントについても評価に含める必要がある」として、バイナンスやCoinMarketCapなどのPoRは、こうした負債を含めていないことに欠点があると論じている。
Armaninoも撤退姿勢か
Mazarsの他には、FTXの監査を行っていた会計事務所Armaninoも、仮想通貨企業の監査から撤退する姿勢であることが伝えられる。
情報筋によると、Armaninoに対して、仮想通貨業界以外の同社クライアントが、風評リスクにより監査結果に疑問が付されることになるとして、圧力をかけているという。
Armaninoは2021年に、米国版FTXの監査を行っており、同取引所の不正を発見できなかったとして、FTXのサム・バンクマン=フリード前CEOらと共に、集団訴訟を起こされている状況だ。
FTXとは
SBF容疑者が率いていた仮想通貨取引所。2019年の創設後、急速に頭角を表し、業界最大手バイナンスに次ぐ大手取引所へと成長していた。その後に経営破綻し、今年11月に破産申請を行なっている。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します