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「トランプ相場は終わった」Animoca Brandsのヤット・シウ会長、実用トークンへの回帰を訴える|独占インタビュー 

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

「仮想通貨は、トランプ大統領の多くの子供のうちの一人だ。私たちはその現実と向き合わなければならない」Animoca Brandsのヤット・シウ(Yat Siu)氏共同創業者兼会長はCoinPostの独占インタビューでこう言い切った。

トランプ相場への過度な依存を戒めたシウ氏が今、業界に求めるのは政治への期待ではなく実用価値への回帰だ。機関投資家の本格参入、トランプ相場の終焉、そして仮想通貨の大衆普及に向けた同社の新たな一手とは何か。その答えが、このインタビューに詰まっている。

自律が問われる業界

仮想通貨業界では、トランプ政権への期待感が米大統領選を経て2024年末から高まっていたが、シウ氏はその依存構造に警鐘を鳴らす。

「トランプ政権の規制面での動きは仮想通貨にとってプラスだろう。しかし経済面での行動は必ずしもそうではない。優先順位の観点から言えば、トランプ大統領にとって仮想通貨は最も重要なことではない。彼が気にかけるのは中国であり、グリーンランドであり、イランだ」。

仮想通貨の優先順位について、シウ氏は印象的な比喩を使う。「仮想通貨は彼の10番目の子供のようなもの。すべての子を愛してはいるが、他の子よりサポートをしなければいけない子もいる。仮想通貨はそちら側だ」

同氏は業界内の内輪もめや責任転嫁も批判し、「私たちは自分たちで頑張るしかない。基本に目を向けて、作り続けて、本当にここにいる理由に集中することが大事だ」と訴える。

「PANトークン」を提案

シウ氏は、アルトコイン市場の混乱を整理するために「PANトークン」という新たな概念を提唱する。PANとはProtocol(プロトコル)、Access(アクセス)、Network(ネットワーク)の頭文字を取ったもので、具体的な機能と用途を持つ実用トークンを指す。

「ユースケースを持つアルトコインと、ユースケースを持たない(投機的な)ミームコインを一緒くたに語る人が多すぎる。私たちが注目しているのは、取引手数料(ガス代)として使われるイーサリアムや、ゲーム内で消費されるトークン、教育プラットフォームで必要とされるトークンのような、具体的な機能を持つものだ」とシウ氏は語る。

その上で、「ネットワークトークンなのか、アクセストークンなのか、メンバーシップなのか、プロトコルなのかという形で分類している」と説明した。

この区別が今特に重要になっているのは、機関投資家が仮想通貨市場最大の買い手として台頭してきたからだ。「機関投資家は株式を理解するのと同じように、トークンを理解できなければならない。価値提案は何か、なぜ買うべきか、成長可能性はあるか、長期計画は何か。それは株式と何ら変わらない」とシウ氏は言う。

教育分野では、Open Campusが今年1月、インド・マディヤプラデーシュ州政府と5000万件の学術記録デジタル化に関する覚書を締結した。

同プロトコル上では学生ローンのサービスやAI学習プラットフォームの構築も進んでおり、シウ氏はこうした事例こそ機関投資家が理解できるビジネスモデルだと強調する。「EDUが機関からの支持を得ているからこそ、市場の他のトークンと比べてパフォーマンスが良かった」

こうした実用トークンへの強い確信は、シウ氏のアルトコイン市場全体への見方にも表れている。「金は価値の保存手段であり、ビットコインはデジタル版の金になった。アルトコインは株式市場に相当する。株式市場は金の6〜7倍の規模がある」

その理由について、シウ氏は「マイクロソフトやメタやエヌビディアを私たちが使っているからだ。それらは金より大きくはならないが、集合体として常に金を上回る。同じ論理が実用トークンにも当てはまる」と説明する。

「仮想通貨界のソフトバンク」、日本では橋渡し役

日本での取材ということもあり、シウ氏はAnimoca Brandsをソフトバンクになぞらえて説明する。「私たちをひと言で表すなら、暗号資産界のソフトバンクだ。ソフトバンクはインターネット時代の最大の早期投資家だった。Animocaはその暗号資産・AI領域版だ」

同社は現在600社超のポートフォリオを持ち、毎年50〜100社のペースで投資を続けている。また、2026年中にはナスダック上場企業Currenc Groupとのリバースマージャー(逆さ合併)によるナスダック上場も予定しており、完了後はAnimoca Brands株主が合併後の新会社株式の約95%を保有する見込みだ。

日本市場の潜在力を認めつつも、シウ氏は制約要因を率直に指摘する。「日本には仮想通貨に関する基準(JFSA)がすでにある。それを満たせば日本の人々は自由に買える」

その上で税制の問題を強調する。「日本の投資家を阻んでいるのはむしろ税制の問題だ。税制は改革中だが、法整備にはまだ時間がかかる。今は保有しても強い財務的インセンティブが生まれにくい」

ゲーム分野については、プレートゥアーン(Play-to-Earn:P2E)がギャンブルと見なされる可能性がある点や、トークン化の国内適用に制限があることを挙げ、「規制上のフレームワークがゲーム会社の完全なトークン化を認めていないため、日本国外向けにしかトークン化できない」と説明する。

それでもシウ氏は、日本市場の潜在力を評価する。「日本には大きなゲーム市場とモバイルゲーム市場がある。ゲーミングは日本にとって最大の潜在性を持つ分野の一つだ」。ただし、「日本は仮想通貨とブロックチェーンに関して、残念ながら世界に遅れを取っている」とも率直に指摘する。

一方でAnimoca Brandsの日本戦略は、国内での主導権よりも「世界と日本をつなぐ」ことに重きを置く。IP保有者のグローバル展開支援やRWA(実物資産)のトークン化、収益性の高い金融商品の組成支援などが具体的な方向性だ。

NFTは「ヴェブレン財」、富裕層が支える市場

NFT(非代替性トークン)市場についてシウ氏は経済学の概念を持ち出す。「ほとんどのNFTは、それが属する経済圏のヴェブレン的なステータス財だ(価格が高いほど需要が増す高級品)。なぜ中国の現代アートは高いのか。富裕な中国人が多いからだ」

さらに歴史を振り返る。「40年ほど前、中国経済がまだ豊かでなかった頃、中国のアートはそれほど高くなかった。NFTも同じ。仮想通貨で富を築いた人たちが増えれば、自分たちの世代のステータスシンボルとしてNFTを買い求める」

NFTの用途はステータスシンボルにとどまらない。不動産の権利証明や知的財産の保護にも使えるとシウ氏は言い、ゲームのスキンを例に挙げる。「スキンは非常に価値がある。売買もできない。基本的にNFTそのものだ。ただ売れないだけで」

現在NFT市場は月間2億〜3億ドル規模で推移しており、シウ氏は「決して小さくない」と評価する。取引されているのはCryptoPunksやBored Apesのような著名コレクションだけでなく、トークン化されたポケモンカードなど多様な資産が含まれる。

NFTへの否定的な見方については、シウ氏はデジタル音楽の歴史を引き合いに出す。「昔はMP3が海賊行為と結びついていたが、今は『デジタル音楽』とすら言わない。ただの音楽だ」

NFTも同じ道をたどるとシウ氏は見る。「将来はブロックチェーン技術がバックエンドで動いているだけで、ユーザーは意識しないだろう」。つまり、NFTは投機的な資産ではなく、日常的に使われる技術インフラとして普及していくという見通しだ。

「AIエージェントが仮想通貨の入口になる」、新サービスを発表

インタビュー当日、シウ氏がスマートフォンで実演して見せたのが、2月5日に発表されたばかりの新サービス「Animoca Minds」だ。AIエージェントと仮想通貨ウォレットを一体化させたもので、CryptoSlamが開発するEthoswarmプロトコルを基盤とする。

従来のAIとの最大の違いは主体性だ。ChatGPTはユーザーが問いかけて初めて動く。Animoca Mindsのエージェントはクラウド上で常時稼働し、毎朝市場情報を届け、設定した条件でトークンを自動売買し、家族のスケジュールを調整する。メールにCC(同報送信先)として加えれば、チェーン全体を要約して次の行動を提案することもできる。

「今、仮想通貨でどう取引するか。メタマスクを開いて、送金して、署名して、あれこれやる。私たちには慣れているかもしれないが、ほとんどのユーザーには難しい」とシウ氏は言う。

その上で、「エージェントにこれを買ってと言うだけでいいとしたら、それが仮想通貨への自然な入口になる」と普及の鍵を語る。

信頼性の担保にはMOCA IDを活用する。「エージェントには評判が必要だ。MOCA IDがあれば、ウォレットのオンチェーン面から誰がそれを所有しているか確認できる。所有者を知らなくてもいい。評判が高ければそれで十分だ」

現実の商取引と同じロジックをデジタル空間に持ち込む仕組みで、シウ氏は2026年中に数百万人への普及を目指すとしている。

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