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ステーブルコイン流動性ショックとAI進化が突きつける新局面|仮想NISHI 仮想通貨アナリストが相場分析

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

*本レポートは、クリプトアナリストである仮想NISHI(@Nishi8maru)氏が、CoinPostに寄稿した記事です。

クリプト市場マーケットレポート特別編

寄稿者:仮想NISHI仮想NISHI
クリプトアナリスト。BTC Status Alert制作協力者、DECOCHARTの企画・監修者。著書に『暗号資産の裏・投資戦略』。日本の業界に必要な投資関連情報の配信に携わっている。

2026年4月のDeFi市場は、単発のハッキング被害として片づけられない局面に入った。4月1日のDrift Protocol、4月18日のKelp DAOと、大型事故が相次いだことで、市場が突きつけられたのは、単なるセキュリティ問題ではない。今回、表面化したのは、ステーブルコイン流動性ショックと、AI進化によって加速する金融プラットフォームの脆弱性である。

焦点は、どのプロジェクトが狙われたかだけではない。DeFi市場全体が複雑につながり、資金が利回りを求めて高速移動する構造そのものが、危機時には一斉に不安定化することを示した点にある。

出典:Coinpost Terminal

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Aaveで起こったオンチェーン金融の取付け騒ぎ

今回、市場へのインパクトが特に大きかったのは、Kelp DAO事件後のAave周辺の混乱である。Aave自体が直接攻撃を受けたわけではない。それにもかかわらず、大口資金の引き揚げが連鎖し、DeFi市場全体から約2兆円規模の資金が逃避した。短期間でTVLが大きく縮小し、オンチェーン版の取り付け騒ぎが現実のものとなった。

深刻だったのは、価格下落だけではない。問題の本質は、売りたくても売れない、引き出したくても引き出せないという流動性の枯渇である。Nansen APIなどを用いたウォレット分析でも、Kelp DAO事件直後に、暗号資産をステーブルコインへ交換し、DeFiから退避する動きが広がったことがうかがえる。

出典:Nansen

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ステーブルコイン流動性の盲点

今回、重大な被害の中枢にあったのは、ステーブルコインの価格安定性そのものではなく、流動性の枯渇である。AaveではUSDTやUSDCの利用率が100%近辺に張り付き、名目上は巨額の残高が存在していても、実際には自由に動かせない状態が生じた。

これは重要な示唆を持つ。DeFi上のUSDTやUSDCは、しばしば即時に動かせる安全資産のように受け止められる。しかし実際には、どのチェーン上にあるのか、どのブリッジを経由しているのか、どのプロトコルにどのような形で預けられているのかによって、安全性も換金性も大きく異なる。

発行体としての信用力、チェーンごとの信頼性、プロトコル上での配置状況は、切り分けて評価しなければならない。表面上は同じステーブルコインでも、中身のリスクは同一ではないということである。

つながる強みが、危機時には伝染経路になる

さらに厄介なのは、この流動性不足が自己増幅した点だ。引き出しにくくなった参加者は、預け入れ資産を担保に追加借入を行い、別のプールや別のチェーンから流動性を確保しようと動く。その結果、逼迫は単一プロトコルにとどまらず、他市場へ波及していく。

平時にはDeFiの強みとされるプロトコル間の相互接続性が、危機時にはリスクの伝播経路へと変わったのである。あるプロトコルの問題が、担保、借入、再担保、ブリッジ、LRT、流動性供給を通じて連鎖的に拡散する構造が改めて浮き彫りになった。

今回の混乱は、単なる個別事故ではない。DeFi市場全体に内在する構造的な脆弱性が露呈したと見るべきである。加えて、こうしたプロトコル群や運用戦略に資金を投じている企業にも、間接的な影響が及ぶ可能性がある。

AI進化が脅威を「一過性」にしない

この問題をさらに重くしているのがAIの進化である。脆弱性探索、攻撃経路の分析、資金移動の最適化、市場心理を踏まえた高速執行まで、AIは攻撃側にも防御側にも強い影響を与え始めている。

特に懸念されるのは、AIが攻撃の速度と複雑性を同時に引き上げる点だ。従来は人手と時間を要した分析や実行が短時間で行われるようになれば、24時間稼働し、グローバルに接続されたDeFi市場は、その影響を最も受けやすい。今回の一連の出来事は、市場が人間中心の前提だけでは守り切れない段階に入りつつあることを示している。

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DeFiの混乱は、既存金融の未来図の可能性

見落としてはならないのが、この種の流動性ショックが、将来的に既存金融プラットフォームでも起こり得るという点である。現時点ではDeFi特有の現象に見えても、AIの進化が続けば、同じ構造リスクを既存金融も抱え込みかねない。

平時には効率性や利便性として評価されるプラットフォームが、危機時には資金流出の速度を高め、局所的な問題を広域に波及させる回路へ変わる。DeFiはいま、その未来を先に市場へ示しているとも言える。

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