リスク回避姿勢強まりビットコイン続落、マウントゴックス大口債権者の売り圧懸念は後退か
マクロ経済と金融市場
8日の米NY株式市場では、ダウは前日比58ドル(0.18%)安、ハイテク株中心のナスダックは45ドル(0.4%)高とやや反発して取引を終えた。
インフレ(物価上昇)高止まりによる金融引き締め長期化懸念が再び強まる中、経済のハードランディングへの警戒感は根強い。同日発表されたADP雇用リポートでも市場予想を上回っており、労働市場の底堅さを印象付けた。
今週金曜日には雇用統計、14日にCPI(米消費者物価指数)、22日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えており、様子見基調が強まりそうだ。
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仮想通貨市況
暗号資産(仮想通貨)市場では、ビットコインは前日比1.75%安の21,783ドル。
ターニングポイントになり得るFOMCが迫っていることもあり、直近の相場は主要な経済指標や要人発言に左右されやすく、ビットコインはドル指数や米株指数に追従するだけの主体性に乏しい値動きと言える。
21,500ドルのサポートライン(下値支持線)を割り込むようだと、FTX・アラメダショック前に揉み合っていたレンジ下限(1BTC=18,000〜19,000ドル)まで下げ足を強めるおそれもありそうだ。
ここのところインフレ指標の高止まりやFRB(米連邦準備制度)パウエル議長のタカ派発言などを受け、金融相場全体で投資家のリスク回避姿勢が強まっており、年初来大きく上昇していたアルトコインを中心に軒並み下落するなど資金抜けが顕著な状況にある。
9日にかけてシルバーゲート銀行の業務停止および事業清算発表の影響で親会社(持株会社)シルバーゲート・キャピタルの株価が時間外取引で暴落したほか、米ウォール・ストリート・ジャーナルの報道で、米銀行大手JPモルガン・チェースが仮想通貨取引所Geminiとの「銀行取引関係」を終了すると伝わったことも相場の重石となった。Gemini側はこれを否定している。
シルバーゲート銀行は2日、「財務諸表等における年次報告書を期限内に提出できない」と発表していた。
昨年11月に発生した大手取引所FTX破綻の影響でシルバーゲートの顧客預かり資産が激減、資産売却でも損失が膨らみ、規定される自己資本比率の水準を下回る可能性が高まっていた。自己資本比率とは、総資本のうち純資産が占める割合であり、会社の財務健全性を示す指標のひとつ。
詳細:仮想通貨サービス提供の米シルバーゲート・キャピタル、銀行事業の清算を発表
マウントゴックス、9年越しBTC弁済へ
ブルームバーグが報じたところによれば、Mt.Gox(マウントゴックス)最大の債権者であるマウントゴックス・インベストメント・ファンド(MGIF)は、今年9月までに返済予定のビットコインについて、売却せず保有する方針を示した。関係筋が明かした。
同じく「早期一括弁済」を選択し、ビットコイン保有継続の意向を示すとされる2大債権者のBitcoinicaと合わせると、返済予定総額の内、約20%に相当する約30,000BTCの売り圧力懸念は後退した。
BitcoinicaはMt.Gox口座を保有していたニュージーランド拠点の暗号資産取引所(現在は閉鎖)。MGIFは、ソフトバンクグループ傘下の米投資会社フォートレス・インベストメント・グループの1部門。
変更通知書によると、変更された登録期限の3月10日以降「速やかに債権者への弁済を実施する」としており、今後手続きが完了次第、段階的に返還される可能性がある。弁済期限日は23年9月30日に設定されている。
Mt.Goxは、約480億円(当時レート)の仮想通貨不正流出事件を引き起こし、14年2月に経営破綻した暗号資産取引所だ。
仮想通貨バブルの発生した17年11月には、東京地裁の決定を受け債権者利益を最大化するために「破産手続き」を取り止め、破産時レートでの現金返却ではなくBTCのまま配当可能な「民事再生法」の手続きへと移行。21年10月に「再生計画案」が認可された。
東京地裁の報告書によれば、Mt.Goxの小林破産管財人は17年9月以降、仮想通貨を売却して債権者への返済原資に充てる分の現金を確保している。2018年以降の大量売却では、仮想通貨バブル崩壊後の下落トレンド局面(1BTC=8,000〜10,000ドル前後)で数百億円相当の売り圧力が繰り返し発生したこともあり、投資家の反感を買うなど物議を醸した。
19年9月時点の保有資産としては、現預金約690億円のほか、14万1,686ビットコイン(BTC)、14万2,846ビットコインキャッシュ(BCH)が報告されており、この内暗号資産で返済される一部は、9年越しの“利益確定”に向かう可能性がある。
23年3月現在のBTC価格約22000ドル(約300万円)に対し、Mt.Gox破綻直前のビットコイン価格は約800ドル(当時為替レートで約8万円)だったことから、保有資産を長年に渡って凍結された結果、その後の仮想通貨高騰の影響で多額の含み益が生じている計算となる。
一方、14年2月に日本経済新聞が報じた当時の記事によれば、東京を拠点に運営されていたMt.Gox破綻で127,000人の顧客が影響を受けたが、仮想通貨黎明期だったため利用者は海外投資家が中心とみられる。日本人比率は0.8%の約1000人にすぎない。
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