「Astar zkEVM」が仮想通貨ASTRの実用性に与える影響は? 渡辺創太氏がAMAで解説
イーサリアムL2進出のねらい
Astar Networkのファウンダーで、Startale Labs代表取締役CEOの渡辺創太氏は16日にAMA(Ask Me Anything:なんでも聞いて)を開いた。
最近の「Astar zkEVM Powered by Polygon」の発表を受けての大きな反響に応え、支持者や投資家からの質問に答える場としてこのセッションが設けられた。緊急の開催にもかかわらず、1,400人以上がこのオンラインイベントに参加した。
Astar Networkは13日に新たなネットワーク「Astar zkEVM」を発表し、イーサリアムのレイヤー2(L2)においてポリゴンが提供するzkロールアップの技術製品(Polygon CDK)を実装する計画を明かした。この動きは特に、イーサリアムとのほぼ等価性(zkEVM)を獲得し、Astar(パラチェーン)での主流なティア1プロジェクトの誘致を加速させる狙いがある。
渡辺氏によると、「Astar zkEVM」はイーサリアムとポルカドットの間にブリッジを築く革新的な取り組み。しかし、従来のAstar Networkとの連携に関するコミュニケーションが満足なものにならず、一部のユーザーに誤解を与えていた。
渡辺氏はイーサリアムのレイヤー2およびzkEVMの導入を「Web3.0の主要トレンド」として位置づけ、これが日本でのリーダーシップを保持するための鍵であると強調。また、ASTRトークンの機能拡大の方向性についても詳細に説明した。
zkEVMとは
イーサリアムチェーン上でスマートコントラクトを実行し、互換性を持たせるためのソフトウェア環境であるイーサリアム仮想マシン(EVM)とゼロ知識証明(ZKP)を併せ持った技術
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渡辺氏の見解では、イーサリアムにより近い等価性が導入されることで(多くの実績のあるスマートコントラクトが利用可能となる等の理由から)開発環境は格段に向上する。また、ASTRトークンのホルダー数は531,580であるのに対し、ETHの累積アドレス数は2.44億に上るため、より多くのユーザーにリーチ可能になる見込みだとした。
Astar Networkは、ポルカドットとの接続ネットワーク(パラチェーン)としての総預金価値(TVL)がトップクラスを誇り、日本国内の大手企業とも提携を重ねるなど国内外からの注目度が高い。渡辺氏はイーサリアムエコシステムへの参入を通して、「Astar」ブランドの更なる発展を目指している。
Astar zkEVMのアナウンスまでには5.6ヶ月をかけ、周到に準備を進めてきた。皮切りとしてポリゴンの最大手DEX(分散型取引所)であるQuickSwapと交渉しており、Astar zkEVMへのオンボーディング計画が19日にQuickSwapのコミュニティ投票で可決したばかりだ。
渡辺氏はシンガポールでのTOKEN 2049という大規模カンファレンスで、ポリゴンの共同創設者、Sandeep Nailwalと共に登壇。ブロックチェーンの大規模な普及を目指す共通の志を持っていることをアピールした。イベントで同氏は、UniswapやAaveといったキープレイヤーとの接触を果たし、20近くのプロダクトとのディールを進行中だという。1年後には充実したエコシステムの実現を目指している。
長期的な目標として渡辺氏は、米コインベースが支援するイーサリアムL2「Base」における「Friend.tech」のようなヒットコンテンツの創出を置く。特に、エンタメ、ゲーム分野に注力する方針で、ソニーネットワークコミュニケーションズのブロックチェーンとの連携構築も見据えているとした。
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ASTRトークンのユーティリティ
投資家が最も関心を寄せるのは、Astar NetworkのネイティブトークンASTRの将来についてだ。渡辺氏は、Astarエコシステムが2つのチェーン-オリジナルの「Astar Network(パラチェーン)」と新設の「Astar zkEVM(イーサリアムL2)」-を持つことになるが、トークンはASTR一つで統一されると強調。
これにより、イーサリアムL2でのトークンユーティリティが増加することで、ASTRの需要も増大するとの見解を示した。
また、渡辺氏は、今後ASTRのブリッジが2つのチェーン間に設けられることで、両エコシステムでの統一された総資産価値「Total Value Locked(TVL)」が共有されると語り、投資家が懸念する価値の希薄化リスクについても否定した。
ASTRの需給面での展望も明らかにされた。イーサリアム上のユーティリティの増加に伴い、Astar zkEVMのDeFiプロジェクトにおいて、ASTRの利用が奨励されることが期待されており、そのための支援策も検討中。Astarの新しい管理画面「dApp Staking」への組み込みも進行中で、これにより、ユーザーは簡単な操作での流動性提供が実現されるだろう。
そして、Astar zkEVMの使用量が増加すれば、それだけAstarエコシステムへの寄与が増すとされる。特に、Astar zkEVM内の「シークエンサー」がトランザクションの状態データを束ねる際に、トランザクション手数料(ガス代)として蓄積されるETHが、ASTRのバイバックや助成金として活用されることも明らかにされた。
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日本企業がWeb3導入を検討
日本のWeb3・ブロックチェーン業界は、現在急速な変化を遂げており、その中心にはAstarとポリゴンの対立が存在していることが、Startale Labsの渡辺氏のコメントから浮かび上がっている。
水面下でのAstarとポリゴンの選択に関する対立が存在していたものの、Astarがポリゴンとの提携を通じてイーサリアムL2への進出を果たすことで、その方針は「Web3 for billion」、つまりWeb3の普及と市場の拡大に重点を置く点で目的が共有された。
この提携のもと、日本の企業はガス代が低価格な「Astar Network」や開発リソースが豊富な「Astar zkEVM」のいずれかを選択することが可能となる。
こうした進展の背景には、ポリゴンが新たに始動した大型アップグレード計画、Polygon 2.0がある。Polygon 2.0の目玉は、他のレイヤー2ネットワークとのクロスチェーン取引の円滑化で、ユーザーが一つの連続したチェーンを使用しているかのような体験を実現するねらい。
渡辺氏はこのアプローチに賛同し、特に、Astar NetworkやAstar zkEVMの違いをユーザーに意識させないような使い勝手の改善が、ブロックチェーンの導入(マスアダプション)にとって必要だと強調。Polygon2.0の動きに早くから取り組むことで、市場における先行利益を狙っていると加えた。
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Astarのロードマップ
「Astar zkEVM」のテストネットは10月末にローンチ予定で、年内から来年初めにかけてメインネットの立ち上げを目指している。この間に、トークン設計の更新やDapps Stakingの改善も同時に行われる見込みで、トークン設計2.0にはトランザクションフィーの一部を焼却する仕組みが取り入れられるとのこと。
加えて、Startale Labsの一環として、渡辺氏はエコシステムの拡大と大企業との連携によるWeb3の普及を強化する方針を示しており、地域としては2023年は日本、来年はアジア、そして再来年にはアメリカ市場への進出を計画している。
最後に、渡辺氏が特に強調したのは、Astarエコシステムへのコミットメントであり、最近は古巣であるポルカドット財団やパリティとの対話も増加しているとのこと。AstarのイーサリアムL2進出が、ポルカドット側の新たな施策へと駆り立てる可能性もあるだろう。
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