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SETTLENETについて

目次
  1. はじめに
  2. SETTLENETとは
  3. SETTLENETの特徴
  4. おわりに

はじめに

2020年6月にCrypto Garage社よりリリースされましたSETTLENETというアトミックスワップ技術を用いたOTC取引決済プラットフォームについて、ご紹介したいと思います。

今回のコラムを寄稿するにあたり、SETTLENETのDEMO版をお借りして、この決済プラットフォームを体験させて頂きました。Chatセッションによるシンプルな取引操作性やファイナリティ2分による即時決済、第三者を仲介しない同時交換、そしてハードウォレットによる資産管理など、革新的テクノロジーとLiquidネットワークのメリット享受による次世代プロダクトを体感することができ、とても刺激を受けました。少しでもこの興奮を読者の皆様と共有できればと思い投稿致します。

出典:https://settlenet.io/https://medium.com/crypto-garage/announcing-the-global-launch-of-settlenet-11a3b74fe4ce

Liquidネットワーク

SETTLENETはBitcoinのサイドチェーンであるLiquidネットワークを利用した国内初のプロダクトです。Liquidネットワークについての概要やその特徴である高速な送金などは前編で、また後編では、Federation(連合)メンバーである参加者からガバナンスに関する内容をご紹介しております。Bitcoinの刻々と変化するテクノロジーがより身近になるかと思いますので、是非ご参照ください。

「Liquidネットワークについて(前編)」はこちら

「Liquidネットワークについて(後編)」はこちら

SETTLENETとは

SETTLENETは、Liquidネットワーク上でアトミックスワップという同時交換技術を用いて、日本円建てトークン(JPYS)とLiquid‐Bitcoin(L-BTC)を第三者に資産を預託せずに同時決済を実現するOTC取引決済プラットフォームです。

これまでは、プロである暗号資産交換業者間向けのカバーマーケットが存在せず、 流動性、価格面で不安定な状況にあり、また暗号資産でのOTC取引[※1]は、決済リスクである代金の受け渡しなど、取引相手に対してとらざるを得ない多大な信用リスクを抱えておりましたが、これらの問題を解決するためのプラットフォームがSETTLENETです。

リリースまでの経緯ですが、首相官邸が進める「規制のサンドボックス制度」の認定を昨年の2019年1月に受け、その後国内の暗号資産取引所4社による実証実験を2020年1月に完了させ、プラットフォーム及びLiquidネットワークの安全性、安定性が検証されリリースされたプロダクトです。

出典:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/regulatorysandbox.html

[※1]OTC(Over The Counter)取引
カウンター越しの取引ということで相対取引とも訳されますが、各一人の売り手と買い手とが双方の合意により価格や数量また決済方法を決めて取引し売買契約を締結する方法です。暗号資産の日々の取引ボリュームにおいて、OTC市場が一般個人向け取引であるリテール市場を上回っているという試算もレポートされており暗号資産OTC市場は大変重要視されています。

SETTLENETの特徴

暗号資産OTC市場に特化した共通決済基盤としてリリースされたSETTLENETの主な特徴は以下になります。

  1. 日本円建てトークン発行・償還および信託保全
  2. アトミックスワップによる同時交換
  3. ハードウェアウォレットによる資産管理

1)日本円建てトークン発行・償還および信託保全

Liquidネットワークでは、利用者がIssued Assets(IA)と呼ばれる機能を使用して、独自トークンを作成して発行と償還をすることができます。SETTLENETでは、日本円建てトークンであるSETTLENET-JPY(ティッカー・シンボル:JPYS)を発行し、スムーズな法定通貨建ての決済を提供します。
IAの下での義務は発行者に属します。Liquidネットワークは原資産が存在するかどうか、または適切に維持されているかどうかを検証しません。
JPYSは、Crypto Garage社のKYC/AMLチェックを受けた国内外の暗号資産交換業者およびトレーディングデスク、ブローカー等の取引支払い方法としてのみ使用されます。原資となる円資産は信託銀行に完全分離されています。

2)アトミックスワップによる同時交換

アトミックスワップ(Atomic Swap)とは、A社(Alice)とB社(Bob)との間で、違う種類の暗号資産を取引できるようにします。

  1. Atomicity:原子性などと訳されますが、取引に含まれる個々の手順が「すべて実行される」か「1つも実行されない」のどちらかの状態になるという性質です。AliceとBobの取引が発生するか、または発生しないかの状態でお互いに相手をだますことができません。
  2. Untrusted:信用を必要としない、または信頼できるサードパーティーが不要です。

アトミックスワップのユースケースは、異なるブロックチェーン上での異なる暗号資産を交換するケースもありますが、今回のケースはLiquidネットワーク(サイドチェーン)上でのJPYSとL-BTCの同時交換になります。

以下がLiquidエクスプローラで表示されたトランザクションになります。

LiquidもBitcoin同様のUTXO型トランザクションになりますが、Confidentialトランザクションのため、暗号資産の種類と金額は、取引当事者以外の第三者からは確認することはできません。この例ではAliceとBob間での同時交換が、一つのトランザクションの中で完了しています。1分間隔で生成されるブロックに取り込まれ、2分間での決済処理が確定します。

Chatセッションによる取引イメージは、以下になります。

Chat セッションでAliceとBobが合意した内容をシステムに連携することでAtomic Swapのトランザクションが生成され、当該トランザクションに両者が署名し、Liquid Networkにブロードキャストすると同時決済が実現されます。この一連のプロセスは概ね2分間で完了した後、各自のウォレット残高に反映されます。DEMO環境で動作確認をさせて頂きましたが、非常にシンプルで分かり易い操作環境なので安心感がありました。また何よりチェーンに対してファイナリティ2分で完了することに感動を覚えました。
SETTLENETはAPIも準備されているので、プログラミングによりトレードの自動化も可能です。

3)ハードウェアウォレットによる資産管理

ハードウェアウォレットは、ネット(オンライン)から切り離した状態で暗号資産を保管する安全な手段として重要なデバイスですが、DEMO環境ではLedger Nano S(仏Ledger社製品)によるJPYSとL-BTCの資産管理について、動作確認をさせて頂きました。安全性と利便性を考慮した大変重要な機能でした。また、今後は他のウォレットやカストディ等への対応を検討しているそうです。

参考:https://www.ledger.com/ledger-joins-the-liquid-network

おわりに

先端技術であるBitcoinのサイドチェーン上でさらに新しい技術が、折り重なる様はとても感動的でワクワクします。今後もテクノロジーの進化により暗号資産業界が安全、安心、そして便利で効率化される様子をご紹介できればと思います。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。


【寄稿者プロフィール】



 y.takamatsu

Bitcoinでの物質の三態に例えるアナロジーに興味を惹かれました。

・Bitcoinメインチェーン:氷
・Liquidネットワーク:水
・Lightningネットワーク:蒸気

(株)CAICAテクノロジーズ
クリプトカレンシー&テクノロジー事業部
高松良仁

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