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AIメビウスの輪と日本の活路 シンプレクス金子氏が語るWeb3時代の戦略|WebX2026

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WebX 2026 | 基調講演レポート

AIメビウスの輪と日本の活路 シンプレクス金子氏が語るWeb3時代の戦略

金子英樹

2026年7月13日、WebX 2026のBinanceステージで行われた「Simplex Keynote」で、シンプレクス株式会社代表取締役社長CEOの金子英樹氏が登壇した。1991年のウォール街での金融工学体験から、日本独自のFX市場の誕生、暗号資産の規制整備、そして生成AIがもたらす「メビウスの輪」問題まで、35年超の軌跡を縦糸に、日本がWeb3でどのように世界に打って出るかを論じた。

金子英樹

金子 英樹(かねこ ひでき)

シンプレクス株式会社
代表取締役社長(CEO)

1991年ソロモン・ブラザーズに入社し、金融工学を活用したトレーディングシステム開発を主導。1997年にシンプレクスを創業し、国内主要金融機関向けのフロントシステムを提供し続けている。暗号資産・Web3分野にも早期から取り組み、金融インフラとしての実装を推進。


金融工学の熱狂から生まれた創業の原点

金子氏が金融の世界に飛び込んだのは1991年。ウォーレン・バフェット氏が暫定会長に就いたソロモン・ブラザーズで、デリバティブや金融工学を活用したトレーディングシステムの開発チームを率いた。当時のウォール街には物理学者や数学者が次々と流れ込み、まったく新しい金融の基礎が築かれつつあった時代だ。
「当時のウォール・ストリートには、何かめちゃくちゃ新しいサイドが集まって、何かイノベーティブな何かが起きそうな、そんな熱狂が街を包んでいた」
その熱気を日本で再現したいという思いから、1997年にシンプレクスを創業。以来、売り上げの約70%は金融機関向けであり、各時代の市場誕生を「黒子」として見届けてきたと金子氏は語った。

日本独自のイノベーション、ミセス・ワタナベの時代

2000年代に入るとインターネットが金融を変え、ネット証券が若年・勤労世帯という新たな個人投資家層を生み出した。ただし彼らは元手が少なく、レバレッジを効かせられるFXへと自然に流れていった。2005年頃から個人によるFX市場は急拡大し、「ミセス・ワタナベ」が世界の為替相場を動かすと言われるほどの規模に成長した。
「ネット証券はグローバルの波に後押しされていたが、FXの市場は日本独自のニーズを捉えて日本が育て、気が付くと世界に冠たる大きな市場になっていた。すなわち、日本は市場を作れるんです」
補足:日本の外国為替証拠金取引(FX)の個人取引高は2000年代後半から急増し、一時は世界最大規模とされた。「ミセス・ワタナベ」は日本の個人投資家(特に円売り・高金利通貨買いのキャリートレーダー)を指す国際的な通称として広まった。

AIメビウスの輪と日本の「外側」問題

WebX 2026 Simplex Keynote セッション写真
暗号資産については、日本は世界に先駆けて規制を整備し、安全に取引できる環境を作り上げた。しかし世界は別の角度からアプローチを進め、ビットコインを「デジタルゴールド」として保有資産と位置付け、カナダやアメリカがETFというラップをかぶせることで機関投資家の資金流入を実現した。この差が、日本市場の何十倍ものマネーを呼び込んだと金子氏は指摘した。
そして現在、日本が直面するもう一つの構造問題が、生成AIが生み出す「メビウスの輪」だ。企業がAIネイティブを推進し利用料を支払うと、その資金はAI企業、データセンター、GPU、クラウドと巡り、ぐるりと一周してさらに大きくなって還ってくる。ところが、その輪を構成するプレイヤーはAnthropicやOpenAI、NVIDIA、Amazon AWS、Microsoft、Googleとすべてアメリカ企業だ。
「問題なのは、我々がその外側にいるということです」
補足:金子氏が語った「メビウスの輪」とは、AI利用料の支払いがAI・クラウド・半導体の各レイヤーを循環し、企業価値と資本を自己増殖させる構造を指す。日本企業がどれだけAI活用を進めても、その果実がアメリカ企業の輪の中を回り続けるという問題意識を示した。

Web3と熱狂するプレイヤーが日本の勝ち筋

WebX 2026 Simplex Keynote セッション写真
では、どうすれば「外側」から内側に打ち込めるか。金子氏が指す答えの一つがWeb3だ。AIの世界と異なり、Web3ではまだメビウスの輪は形成されていない。日本には、少額決済向けのJPYC、大口決済向けの信託型JPYSC、そして日本円という信頼を裏付けとした円建てステーブルコインがある。RWA(現実資産のトークン化)の文脈でも、アニメ・キャラクター・伝統芸能など、世界に通じるコンテンツ資産を豊富に持つ。
金子氏は締めくくりに、金融工学の誕生、インターネットの波、日本のFX市場の成長、いずれの局面にも「熱狂」があったと振り返り、Web3の時代においても熱狂するプレイヤーの存在が不可欠だと訴えた。
「政策を作る側にいる方は、ぜひそういう熱狂するプレイヤーを優しく背中を押してあげられる、そういう社会を作っていただきたい。我々も含めて、これからの30年を担える新しいメビウスの輪を一緒に作っていきたいと考えております」

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