大型アップデート控える"カタパルト"『ネム』の技術や今後の展望をわかりやすく解説 2019/07/08 12:00 10/03 12:25 NEM.io Foundation Ltd NEM.io Foundation(以下、NEM.io財団)より、CoinPost誌とコミュニティの皆さんのお力をお借りし、シリーズで『NEM』ブロックチェーン技術に関する知識やユースケースなど様々なトピックをお届けします。 今回が第1回となる本コラムは、『NEM』ブロックチェーン技術について知識を深めたい方はもちろん、仮想通貨投資に関心があるCoinPost誌の読者の皆様、ブロックチェーンの採用を検討している企業様に、『NEM』ブロックチェーン技術とプロジェクトについてご紹介する事を目的としています。 近日の相場の動きや、国内の大手仮想通貨交換業者の数社が新規口座開設の受付を再開し、仮想通貨に再び関心が集まりはじめています。 ブロックチェーンは仮想通貨などを発行・流通・管理する基盤のソフトウェア技術ですが、暗号化・P2P分散技術などその仕組みは奥が深く、プログラミングの経験やIT知識が限られている方の中には「もっと詳しくなりたい!でも、ハードルが高い」と感じられているとのお声を聞く事があります。 初回は下記の『NEM』の特徴やこれから注目すべきポイントについてご紹介します。 NEMは導入が簡単で人気がある 今秋以降に、大規模なバージョンアップを予定している バージョンアップ後は充実した新機能で、さらに採用が進む可能性 NEMは導入が簡単で人気がある 『NEM』は初心者でもすぐに使える多目的ブロックチェーンとして、特に日本で人気の高い、パブリック・ブロックチェーンプロジェクトです。今秋以降に大型アップデートとして、『Catapult(カタパルト)』と呼ばれるバージョンへの移行が予定されています。 人気の高さの理由の一つとして、スマートフォンのアプリやWebサービスなどの開発に従事しているエンジニアからの支持があります。「ブロックチェーンという、話題の技術を自分でも簡単に実装でき、またセキュリティも高い」といった声を聞きます。 トークン発行や、マルチシグネチャなどのブロックチェーンならではの必須機能は、通常はプログラミングをして利用しますが、『NEM』ブロックチェーンでは標準機能としてWebAPIで提供されており、低い学習・開発コストで簡単に利用できます。それゆえ実装までのリードタイムが短く、実稼働ユースケースが多数あることで知られています。 New Economy Movement それでは『NEM』ブロックチェーンプロジェクトの始まりから、見ていきたいと思います。 『NEM』は New Economy Movement (新しい経済活動) の頭文字をとり、経済的な自由と平等を標語として開始した国際的なプロジェクトです。2015年3月28日に『NEM』のNemesis blockが作られました。 Nemesis block(ネメシスブロック)とは ビットコインのGenesis blockに相当する、ブロックチェーンソフトウェアのチェーン上に生成された一番最初のデータブロック 『NEM』ブロックチェーンのネイティブトークン*としてXEM(ゼム)が発行され、8,999,999,999 XEMが公募で集まった買い手のアドレスに送付されました。 *ブロックチェーン上で発行され、そのブロックチェーン自体を維持し、運用し続けるために利用される通貨 当時の様子はBitcoin forumに投稿されています。こちらのURL からご覧ください。 また、Nemesis blockに記録された取引データは、nembex v.3.2のサイト右上の”Search”欄に、Nemesis blockの以下のハッシュ値を入力するとすぐ閲覧できます。 「438cf6375dab5a0d32f9b7bf151d4539e00a590f7c022d5572c7d41815a24be4」 参考図1 上述の”参考図1”から、さらにブロックに記録された内容をご覧になられたい方はこのURLをクリックしてください。 Nemesis blockが作られた時 このNemesis blockが作られた時、「NEM stake」として2,250,000 XEMが、希望者(NEM stake holders)に販売されました。 この2,250,000 XEMは、NEMネットワークがローンチと同時に発行されたXEMの4,000分の1に相当します。当初は4,000人の購入希望者を見込んでいましたが、その数に達しなかったそうです(2,250,000 XEMのアカウントは898が確認できます)。 また当初は、追加購入や売却が出来ませんでしたが、後にNxt asset exchangeにて売買が可能となっています。 現在、NEMのネットワークを主に支えている”Super Node”の制度は、2015年の終わり頃に発案され、2016年の2月から始まりました。テスト期間を終え、2016年の4月から報酬の支払いが始まっています。 Super Node制度の始まりと共に、2,250,000 XEMを保有していたNEM stake holdersの中で、Super Nodeを建てたい人は、追加で750,000 XEMを購入したそうです。 Nemesis blockには、『NEM』ブロックチェーン技術の開発や、普及の為のファンド(資金)が確保された履歴なども含まれています。 Super Node(スーパーノード)とは 全てのトランザクション(取引)記録が書かれたブロックチェーンの管理、承認をしているノード(サーバー群)のうち、一定の品質を担保するための要件を満たしているもの。 300万XEM以上の保有など、スーパーノードを立てるにはいくつかの条件を満たすことが必要となっています。 ビットコインやイーサリアムは、PoW(Proof of Work)という仕組みを使い”マイニング”(ソフトウェアのアルゴリズムを利用し、ネイティブトークンの供給量を増加させ、またブロックを作成・承認しチェーンにつなぐ仕組み)を行うのに対し、『NEM』はPoI(Proof of Importance)と呼ばれる仕組みを使い”ハーベスト”を行います。 PoIは『NEM』に固有のコンセンサス・アルゴリズムと呼ばれるブロックチェーンの根幹となる技術で、独自に『NEM』プロジェクトで開発されたものです。PoWの技術は、多大な電力消費を必要とすることが課題となっていますが、PoI技術を使うXEMや『NEM』ブロックチェーンで発行されたトークンの流通・管理は、安価な電力・サーバー費でブロックチェーンのセキュアなネットワークが運用できます。また、量子コンピューターなど用いたとしても、51%攻撃のリスクが無い事もメリットとして謳っています。 ハーベストとは “ハーベスト”は『NEM』のブロックチェーン上で、”トランザクション”と呼ばれるデータの記録処理を行う際に、そのトランザクションの内容の真正性を確認し、ブロックを作成・承認しチェーンにつなぐ一連のソフトウェアの仕組みを指します。 どのノードがハーベストを行うかは、ノードオーナーが保有するXEMの量や、過去に行った取引回数や処理したトランザクション実績でスコアが付けられており、選ばれたノードがブロックの承認作業を行っています。『NEM』ブロックチェーンのネットワークを支えているノード群には、ハーベストの承認作業を行うと手数料報酬が支払われます。 例えば、仮想通貨XEMを送金人から受取人のアドレスへ送った時や、またはトレーサビリティといって、商品が流通した経路をあらかじめ設定したチェックポイントで確認し、その証跡をブロックチェーン上にデータとして記録する時に”トランザクション”が発生します。 その手数料としてXEMを支払わないと、トランザクションを処理する事ができないため、多くのトランザクションを実行しようとすると、必然的に多額のXEMが必要となります。手数料としてネイティブトークンの支払いが必要なパブリックのブロックチェーンでは、不正なスパム攻撃が行われないように手数料の仕組みを設けている、という側面もあります。 『NEM』のトランザクションでユニークなのは、1,024バイトのフリーテキストで任意のメッセージを書き込んで送る事ができる点です。またそのメッセージは、暗号化する・しないを選択できます。 より詳しく知りたい方は、以下のページもご覧ください。 NEMのメッセージ暗号化の仕組み りゅーたさん 今秋以降、大規模なバージョンアップ予定 『NEM』ブロックチェーンの現在のバージョンは、NEM v.1と呼ばれており、NEM V.1で使われているPoIの仕組みは、今秋以降にNEM v.2である『Catapult』で、PoS+へとバージョンアップが予定されています。 コンセンサスアルゴリズムのみならず『Catapult』で何が変わるかは、NEM Forumで随時アップデート情報が配信されており、和訳も順次公開されています。 本コラムでも秋頃に、より詳しい『Catapult』のご紹介をお届けする予定です。本稿では『Catapult』のリリースにより期待される機能の大幅な向上を、v.1とv.2の比較表で見ていきたいと思います。 比較表 データ1 NEM v.1 NEM v.2 (Catapult) コンセンサス・アルゴリズム PoI PoS+(ピーオーエスプラス) トークンの発行 WebAPIを用い、プロトコル内で簡便に発行が可能。プログラミングが不要。 WebAPIを用い、プロトコル内で簡便に発行が可能。プログラミングが不要。 マルチシグ(マルチシグネチャー) m of n(それぞれ1から32人の連署人アカウントが設定可能) 一段階 24時間で失効(オンチェーンで署名が集まるまでの期限) m of n(連署人の数はこれから決定) マルチレイヤー・最大三段階 有効期限の任意な設定が可能 トランザクション処理数 1分あたり約120 高速化 複数のトランザクションをラップしたトランザクション – アグリゲート・トランザクション アトミック・スワップ – シークレットロック・トランザクション トークンの発行(mosaic) 先に「パブリックのブロックチェーンでは、トランザクションの処理時に手数料としてネイティブトークンが必要」だとご紹介しました。『NEM』ブロックチェーンでは、mosaicという機能を使い開発者はWebAPIや、使い慣れたJava・Typescriptなどの言語によるSDK、また一般の仮想通貨ユーザーはNEM WalletのGUIを使って簡便にトークンの発行・流通・管理が行えます。 ブロックチェーンで発行されるトークンは、仮想通貨の他に、ポイント、電子マネー、商品券、トレーディングカード、所有権、投票権、電子チケット、ユーザーID、通行許可証など”デジタルアセット”として、様々な用途に活用する事が可能です。 デジタルアセットとしてのトークンに興味がある方はこちらもご覧ください。 ブロックチェーン上に生まれるいろいろなトークン @mincoshiさん 『NEM』でトークン発行のススメ 『NEM』ブロックチェーンでトークンを発行する最大のメリットは、安全性にあります。他ブロックチェーンとの違いとして、プログラムを書かずにトークンの発行が可能です。 これはつまり、万が一プログラムにバグ(欠陥)があった時に、使えなくなってしまう、というリスクが無く、それゆえリスクを防止するために行われる”コードレビュー”といった作業も必要としません。なぜなら『NEM』ブロックチェーンで発行されるトークンは”プロトコル”と呼ばれる、ブロックチェーンのソフトウェアを動かすための、データ通信の取り決めの中で生成されるからです。 従って、トークンを発行するためにプログラムを書くことが必須である他のブロックチェーン技術と異なり、属人的なプログラミングのスキルによって出来上がったトークンの質が左右される、という事がありません。 NEM.io財団がオススメするmosaicについての解説 NEM/mijinで備わっている基本機能 @daokaさん NEMのモザイクを使って独自通貨を作ってみる 実際にNEM Walletとmosaic機能を使い、オリジナルの独自通貨を発行された体験談 @oggataさん マルチシグとは? 2018年の初頭に、仮想通貨XEMがコインチェックから流出した事で新聞・雑誌で報道され、テレビ番組でも取り上げられたのが「マルチシグ(マルチシグネチャー)」と呼ばれる『NEM』のセキュリティ機能です。 マルチシグは、あらかじめ設定されたn人のうちm人(m of n)のデジタル署名が揃う事により指定されたトランザクション(送金など)が実行できる、という多重署名(マルチシグ)アカウントです。 デジタル署名をすることができる連署人は、それぞれ1から32人の間で設定でき、また追加・変更が可能です。仮想通貨取引所のXEMの出金アカウントなどに実装されており、悪意を持ってXEMを引き出そうとするサイバー攻撃を防ぐために、セキュリティーのハードルを高くする一助となります。またXEMを保有する多くの一般ユーザーが、NEM Wallet上で実際に利用しています。 『NEM』ブロックチェーンでは、このマルチシグも標準機能として、mosaicと同様にプロトコルに組み込まれています。開発者やユーザーは、保有する仮想通貨XEMやmosaicトークンを、容易に第三者が引き出せないようセキュリティ手段として実装するほか、webサービスのユーザー認証システムや、設定された連署人の同意が無いと決済が完了しないシステムなど、様々な用途に活用できます。 バージョンアップ後は充実した新機能で、さらに採用が進む可能性 『NEM』の『Catapult』へのバージョンアップによって、期待される事の一つが、トランザクション機能の向上です。数名のエンジニアの方達がご自身で環境を構築し、実証実験をされています。 <実証実験に貢献されたエンジニアの紹介> ・お財布に優しいCatapult 4000TPSチャレンジ (その1) @hide825jpさん ・複数のCatapultノードで4,000TPSに挑戦してみた(瞬間4,000TPS) @44uk_i3さん ・カタパルトで秒間4000内部トランザクションを目指してみる @planethoukiさん ・プライベートチェーンのカタパルトで秒間4000トランザクションを目指してみる @planethoukiさん 上記は、NEM v.2(Catapult)のプライベート・ブロックチェーンである『mijin』のオープンソース版を使って行われた実証実験です。 プライベートのブロックチェーンとパブリックとの大きな違いは、管理者が存在しネットワークを構築するサーバーや、通信帯のスペックを任意に揃えチューニングが可能である点です。トランザクションの処理速度を求めるシステムや、自社だけでブロックチェーン・ネットワークを持ち、自分たちのデータだけを記録したい場合などには、プライベート・ブロックチェーンが利用されます。これらの実証実験では、秒間4,000のトランザクション処理数を目指し環境が構築され、実際にその目標が達成されています。 パブリックブロックチェーンである『NEM』が、『Catapult』にアップデートすることで、秒間のトランザクション数がどれくらい向上するかは、これからテストネットで実証実験が行われ、最適化されていきます。しかし実際の数値は、テストから本番環境へ移行するまでは、分からないと考えられています。 もし本稿をお読みになられた方で、より詳しく『NEM』ブロックチェーンについて知りたいと思われた方は、下記リンクも参照してください。 それでは次回のNEMコラムも、どうぞお楽しみに!最後までお読み頂き、ありがとうございました。 『NEM』ブロックチェーンについて、世界中の参加者から様々なトピックが投稿されているフォーラム(英語) https://forum.nem.io/ NEM Walletを開発・提供しているNEM.io Foundationの公式website(英語) https://nem.io/ NEMを用いたプロジェクトへの投資活動を行うVCであるNEM Ventures株式会社の公式website(英語) https://nemventures.io/ NEM開発者センター(日本語) https://nemtech.github.io/ja/index.html NEMについての情報収集の方法(日本語) @nem_takanobuさん NEMブロックチェーンを利用したアプリケーションを開発するためには(日本語) @hukusuke1007さん
大型アップデート控える"カタパルト"『ネム』の技術や今後の展望をわかりやすく解説
10/03 12:25 NEM.io Foundation Ltd
NEM.io Foundation(以下、NEM.io財団)より、CoinPost誌とコミュニティの皆さんのお力をお借りし、シリーズで『NEM』ブロックチェーン技術に関する知識やユースケースなど様々なトピックをお届けします。
今回が第1回となる本コラムは、『NEM』ブロックチェーン技術について知識を深めたい方はもちろん、仮想通貨投資に関心があるCoinPost誌の読者の皆様、ブロックチェーンの採用を検討している企業様に、『NEM』ブロックチェーン技術とプロジェクトについてご紹介する事を目的としています。
近日の相場の動きや、国内の大手仮想通貨交換業者の数社が新規口座開設の受付を再開し、仮想通貨に再び関心が集まりはじめています。
ブロックチェーンは仮想通貨などを発行・流通・管理する基盤のソフトウェア技術ですが、暗号化・P2P分散技術などその仕組みは奥が深く、プログラミングの経験やIT知識が限られている方の中には「もっと詳しくなりたい!でも、ハードルが高い」と感じられているとのお声を聞く事があります。
初回は下記の『NEM』の特徴やこれから注目すべきポイントについてご紹介します。
NEMは導入が簡単で人気がある
『NEM』は初心者でもすぐに使える多目的ブロックチェーンとして、特に日本で人気の高い、パブリック・ブロックチェーンプロジェクトです。今秋以降に大型アップデートとして、『Catapult(カタパルト)』と呼ばれるバージョンへの移行が予定されています。
人気の高さの理由の一つとして、スマートフォンのアプリやWebサービスなどの開発に従事しているエンジニアからの支持があります。「ブロックチェーンという、話題の技術を自分でも簡単に実装でき、またセキュリティも高い」といった声を聞きます。
トークン発行や、マルチシグネチャなどのブロックチェーンならではの必須機能は、通常はプログラミングをして利用しますが、『NEM』ブロックチェーンでは標準機能としてWebAPIで提供されており、低い学習・開発コストで簡単に利用できます。それゆえ実装までのリードタイムが短く、実稼働ユースケースが多数あることで知られています。
New Economy Movement
それでは『NEM』ブロックチェーンプロジェクトの始まりから、見ていきたいと思います。
『NEM』は New Economy Movement (新しい経済活動) の頭文字をとり、経済的な自由と平等を標語として開始した国際的なプロジェクトです。2015年3月28日に『NEM』のNemesis blockが作られました。
ビットコインのGenesis blockに相当する、ブロックチェーンソフトウェアのチェーン上に生成された一番最初のデータブロック
『NEM』ブロックチェーンのネイティブトークン*としてXEM(ゼム)が発行され、8,999,999,999 XEMが公募で集まった買い手のアドレスに送付されました。
*ブロックチェーン上で発行され、そのブロックチェーン自体を維持し、運用し続けるために利用される通貨
当時の様子はBitcoin forumに投稿されています。こちらのURL からご覧ください。
また、Nemesis blockに記録された取引データは、nembex v.3.2のサイト右上の”Search”欄に、Nemesis blockの以下のハッシュ値を入力するとすぐ閲覧できます。
参考図1
上述の”参考図1”から、さらにブロックに記録された内容をご覧になられたい方はこのURLをクリックしてください。
Nemesis blockが作られた時
このNemesis blockが作られた時、「NEM stake」として2,250,000 XEMが、希望者(NEM stake holders)に販売されました。
この2,250,000 XEMは、NEMネットワークがローンチと同時に発行されたXEMの4,000分の1に相当します。当初は4,000人の購入希望者を見込んでいましたが、その数に達しなかったそうです(2,250,000 XEMのアカウントは898が確認できます)。
また当初は、追加購入や売却が出来ませんでしたが、後にNxt asset exchangeにて売買が可能となっています。
現在、NEMのネットワークを主に支えている”Super Node”の制度は、2015年の終わり頃に発案され、2016年の2月から始まりました。テスト期間を終え、2016年の4月から報酬の支払いが始まっています。
Super Node制度の始まりと共に、2,250,000 XEMを保有していたNEM stake holdersの中で、Super Nodeを建てたい人は、追加で750,000 XEMを購入したそうです。 Nemesis blockには、『NEM』ブロックチェーン技術の開発や、普及の為のファンド(資金)が確保された履歴なども含まれています。
全てのトランザクション(取引)記録が書かれたブロックチェーンの管理、承認をしているノード(サーバー群)のうち、一定の品質を担保するための要件を満たしているもの。
300万XEM以上の保有など、スーパーノードを立てるにはいくつかの条件を満たすことが必要となっています。
ビットコインやイーサリアムは、PoW(Proof of Work)という仕組みを使い”マイニング”(ソフトウェアのアルゴリズムを利用し、ネイティブトークンの供給量を増加させ、またブロックを作成・承認しチェーンにつなぐ仕組み)を行うのに対し、『NEM』はPoI(Proof of Importance)と呼ばれる仕組みを使い”ハーベスト”を行います。
PoIは『NEM』に固有のコンセンサス・アルゴリズムと呼ばれるブロックチェーンの根幹となる技術で、独自に『NEM』プロジェクトで開発されたものです。PoWの技術は、多大な電力消費を必要とすることが課題となっていますが、PoI技術を使うXEMや『NEM』ブロックチェーンで発行されたトークンの流通・管理は、安価な電力・サーバー費でブロックチェーンのセキュアなネットワークが運用できます。また、量子コンピューターなど用いたとしても、51%攻撃のリスクが無い事もメリットとして謳っています。
ハーベストとは
“ハーベスト”は『NEM』のブロックチェーン上で、”トランザクション”と呼ばれるデータの記録処理を行う際に、そのトランザクションの内容の真正性を確認し、ブロックを作成・承認しチェーンにつなぐ一連のソフトウェアの仕組みを指します。
どのノードがハーベストを行うかは、ノードオーナーが保有するXEMの量や、過去に行った取引回数や処理したトランザクション実績でスコアが付けられており、選ばれたノードがブロックの承認作業を行っています。『NEM』ブロックチェーンのネットワークを支えているノード群には、ハーベストの承認作業を行うと手数料報酬が支払われます。
例えば、仮想通貨XEMを送金人から受取人のアドレスへ送った時や、またはトレーサビリティといって、商品が流通した経路をあらかじめ設定したチェックポイントで確認し、その証跡をブロックチェーン上にデータとして記録する時に”トランザクション”が発生します。
その手数料としてXEMを支払わないと、トランザクションを処理する事ができないため、多くのトランザクションを実行しようとすると、必然的に多額のXEMが必要となります。手数料としてネイティブトークンの支払いが必要なパブリックのブロックチェーンでは、不正なスパム攻撃が行われないように手数料の仕組みを設けている、という側面もあります。
『NEM』のトランザクションでユニークなのは、1,024バイトのフリーテキストで任意のメッセージを書き込んで送る事ができる点です。またそのメッセージは、暗号化する・しないを選択できます。
より詳しく知りたい方は、以下のページもご覧ください。
今秋以降、大規模なバージョンアップ予定
『NEM』ブロックチェーンの現在のバージョンは、NEM v.1と呼ばれており、NEM V.1で使われているPoIの仕組みは、今秋以降にNEM v.2である『Catapult』で、PoS+へとバージョンアップが予定されています。
コンセンサスアルゴリズムのみならず『Catapult』で何が変わるかは、NEM Forumで随時アップデート情報が配信されており、和訳も順次公開されています。
本コラムでも秋頃に、より詳しい『Catapult』のご紹介をお届けする予定です。本稿では『Catapult』のリリースにより期待される機能の大幅な向上を、v.1とv.2の比較表で見ていきたいと思います。
トークンの発行(mosaic)
先に「パブリックのブロックチェーンでは、トランザクションの処理時に手数料としてネイティブトークンが必要」だとご紹介しました。『NEM』ブロックチェーンでは、mosaicという機能を使い開発者はWebAPIや、使い慣れたJava・Typescriptなどの言語によるSDK、また一般の仮想通貨ユーザーはNEM WalletのGUIを使って簡便にトークンの発行・流通・管理が行えます。
ブロックチェーンで発行されるトークンは、仮想通貨の他に、ポイント、電子マネー、商品券、トレーディングカード、所有権、投票権、電子チケット、ユーザーID、通行許可証など”デジタルアセット”として、様々な用途に活用する事が可能です。
デジタルアセットとしてのトークンに興味がある方はこちらもご覧ください。
『NEM』でトークン発行のススメ
『NEM』ブロックチェーンでトークンを発行する最大のメリットは、安全性にあります。他ブロックチェーンとの違いとして、プログラムを書かずにトークンの発行が可能です。
これはつまり、万が一プログラムにバグ(欠陥)があった時に、使えなくなってしまう、というリスクが無く、それゆえリスクを防止するために行われる”コードレビュー”といった作業も必要としません。なぜなら『NEM』ブロックチェーンで発行されるトークンは”プロトコル”と呼ばれる、ブロックチェーンのソフトウェアを動かすための、データ通信の取り決めの中で生成されるからです。
従って、トークンを発行するためにプログラムを書くことが必須である他のブロックチェーン技術と異なり、属人的なプログラミングのスキルによって出来上がったトークンの質が左右される、という事がありません。
NEM.io財団がオススメするmosaicについての解説
マルチシグとは?
2018年の初頭に、仮想通貨XEMがコインチェックから流出した事で新聞・雑誌で報道され、テレビ番組でも取り上げられたのが「マルチシグ(マルチシグネチャー)」と呼ばれる『NEM』のセキュリティ機能です。
マルチシグは、あらかじめ設定されたn人のうちm人(m of n)のデジタル署名が揃う事により指定されたトランザクション(送金など)が実行できる、という多重署名(マルチシグ)アカウントです。
デジタル署名をすることができる連署人は、それぞれ1から32人の間で設定でき、また追加・変更が可能です。仮想通貨取引所のXEMの出金アカウントなどに実装されており、悪意を持ってXEMを引き出そうとするサイバー攻撃を防ぐために、セキュリティーのハードルを高くする一助となります。またXEMを保有する多くの一般ユーザーが、NEM Wallet上で実際に利用しています。
『NEM』ブロックチェーンでは、このマルチシグも標準機能として、mosaicと同様にプロトコルに組み込まれています。開発者やユーザーは、保有する仮想通貨XEMやmosaicトークンを、容易に第三者が引き出せないようセキュリティ手段として実装するほか、webサービスのユーザー認証システムや、設定された連署人の同意が無いと決済が完了しないシステムなど、様々な用途に活用できます。
バージョンアップ後は充実した新機能で、さらに採用が進む可能性
『NEM』の『Catapult』へのバージョンアップによって、期待される事の一つが、トランザクション機能の向上です。数名のエンジニアの方達がご自身で環境を構築し、実証実験をされています。
<実証実験に貢献されたエンジニアの紹介>
・お財布に優しいCatapult 4000TPSチャレンジ (その1)
@hide825jpさん
・複数のCatapultノードで4,000TPSに挑戦してみた(瞬間4,000TPS)
@44uk_i3さん
・カタパルトで秒間4000内部トランザクションを目指してみる
@planethoukiさん
・プライベートチェーンのカタパルトで秒間4000トランザクションを目指してみる
@planethoukiさん
上記は、NEM v.2(Catapult)のプライベート・ブロックチェーンである『mijin』のオープンソース版を使って行われた実証実験です。
プライベートのブロックチェーンとパブリックとの大きな違いは、管理者が存在しネットワークを構築するサーバーや、通信帯のスペックを任意に揃えチューニングが可能である点です。トランザクションの処理速度を求めるシステムや、自社だけでブロックチェーン・ネットワークを持ち、自分たちのデータだけを記録したい場合などには、プライベート・ブロックチェーンが利用されます。これらの実証実験では、秒間4,000のトランザクション処理数を目指し環境が構築され、実際にその目標が達成されています。
パブリックブロックチェーンである『NEM』が、『Catapult』にアップデートすることで、秒間のトランザクション数がどれくらい向上するかは、これからテストネットで実証実験が行われ、最適化されていきます。しかし実際の数値は、テストから本番環境へ移行するまでは、分からないと考えられています。
もし本稿をお読みになられた方で、より詳しく『NEM』ブロックチェーンについて知りたいと思われた方は、下記リンクも参照してください。
それでは次回のNEMコラムも、どうぞお楽しみに!最後までお読み頂き、ありがとうございました。