中国北京、デジタル人民元のテストエリア開設へ
北京にデジタル通貨のテスト地域開設
中国の北京政府機関が9日、貿易と金融のパイロットゾーンを開設すると発表、取り組みの一環として中国人民銀行が発行するデジタル人民元の試運転を行うことが判明した。深圳市での大規模な試運転に次ぐ動きとなる。
「中国(北京)パイロット自由貿易圏総合計画」により、デジタル通貨の分野では人民銀行の研究機関が金融技術センターを設立、合法的なデジタル通貨テストゾーンやデジタル金融システムを構築するという。
その他にも、首都北京の金融産業を発展させるため、合計102の革新的な試みが行われる見込み。
外国金融機関の市場アクセス、国境を越えた金融サービスの開発、国際的な投資と資金調達、国際ベンチャー資本の開発などを支援することや、外国の人材に個人所得税の点で免除措置を与えること、環境に配慮したグリーンファイナンスの開発、金融技術イノベーションの促進などが挙げられている。
また、ブロックチェーンの実験も行う予定だ。人民銀行の貿易金融ブロックチェーンプラットフォームを利用して、金融テクノロジーを適用するパイロットエリアを構築し、適用事例をリリースする仕組みを確立するという。
中国の中央銀行(中国人民銀行)は先日新たな改正案でデジタル人民元を合法化し、「人民元は、物理的な形とデジタル版の両方を含める」と定義した。
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市民5万人にデジタル人民元を配布
中国では10月、広東省の深圳市で1週間にわたり、デジタル人民元(DCEP)の大規模実験が実施された。
抽選で選んだ一般市民5万人に総額1000万人民元(1億5600万円相当)を配布し、3000以上の加盟店舗における利用を促した。選ばれた5万人の95%がDCEPを受け取り、配布総額の88%が消費され成功裏に終わった格好である。
DCEP決済を行うためのシステム導入等も、政府の負担で行われ、決済状況の調査だけではなく、それを支えるシステム全般の試験運用も兼ねていた。
中国ではキャッシュレス化が進んでおり、特にモバイル決済は、民間セクターのアリババ系AliPayと、大手IT企業テンセントのWeChatPayがモバイル決済をほぼ独占している。実験に参加した消費者からは、こうした既に浸透しているモバイル決済に比べると、オプションが少なく利便性の面で物足りないという声も挙がっていた。識者からは、DCEP利用を促進するインセンティブを用意すべきという意見も聞かれた。
一方で、デジタル人民元を使えば、加盟店から決済手数料が徴収されないこと、利用者の個人情報が民間決済業者の手に渡らないことはDCEPが優位性を持つ点だ。
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深圳市での実験は、単体で1億5000万円を超える大規模実験であったものの、人民銀行(PBC)のファン・イーフェイ副総裁が明かしたところによると、すでにデジタル人民元のテストは、8月下旬までに合計11億人民元(約171億円)相当にも達する規模で行われているという。
請求書の支払い、ケータリングサービス、輸送、ショッピング、政府サービスなど様々な分野で、6,700のケースが試行されており、2022年に北京で開催予定の冬季オリンピックでも試験が実施される予定だ。副総裁はまた、国や地域などの管轄地域同士でデジタル法定通貨の同盟を確立し、国際的な規制基準を遵守することにも言及。
欧州連合や米国、日本などの政府は中国が中銀発行デジタル通貨(CBDC)の分野で先駆者となることに警戒しているところだが、規制基準や技術基準の点でも、先に開発した国の標準が影響力を持つ可能性もあり、中国以外の国がCBDC研究を推進しようとする理由になり得る。
デジタル人民元が先に普及すれば、新興国を中心に人民元を基軸にした経済圏ができる可能性があり、シェアを広げると、現状の米ドルとユーロ、円の通貨の3極体制が脅かされることが懸念されている。
財務省の岡村健司財務官も10月8日、人民元のデジタル化が比較的速く進んでおり、先行者利益には警戒するべきだと述べた。日本でも中銀発行デジタル通貨(CBDC)の検討について着手しており、10月に個人や企業など幅広い主体の利用を想定した一般利用型のCBDCについて、取り組み方針を公表している。
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