財務官がCBDCに言及
財務省の岡村健司財務官は8日、中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC)について、中国が先行者利益を得ようとしているとの見解を示した。複数の国内メディアが報じた。
人民元のデジタル化が比較的速く進んでいると述べ、先行者利益には警戒するべきだと語っている。
現状、「デジタル人民元」の開発は順調に進んでいる模様だ。昨日にはテストが大規模に行われている現状が明らかになっており、8月下旬までに合計11億人民元(約173億円)相当、300万件以上の取引が行われているという。
また運用テストでは、11万を超える個人用デジタルウォレットと約9000の企業用ウォレットの作成が行われた。
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一方で日本もCBDCに関する取り組みは加速している。日本銀行は昨日、個人や企業を含む幅広い主体の利用を想定した一般利用型のCBDCについて、取り組み方針を公表した。
加藤官房長官は9日の閣議後の記者会見で「デジタル化を含めた時代のなかで、CBDCは当然検討すべき」と述べており、政府の関心の高さもうかがえる。2021年度の早い時期に実証実験を開始できるよう目指すという。
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デジタル人民元が先に普及すれば、新興国を中心に人民元を基軸にした経済圏ができる可能性があり、シェアを広げると、現状の米ドルとユーロ、円の通貨の3極体制が脅かされることが懸念される。また技術面でも中国が国際標準となる可能性がある。
日米欧の取り組み
日銀や米連邦準備理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)など7中銀と国際決済銀行(BIS)は9日、CBDCに関するレポートを発表した。基本原則や中心的な機能をまとめている。
今回発表されたCBDCに関する原則は以下の3点。
- 金融や財務の安定を妨げないこと
- 既存の通貨を補完し、共存すること
- 技術や効率性を向上させること
今年1月に日銀やECBら6中銀はCBDCの共同研究するために、新しい組織を作ると発表。そこに途中から米FRBが加わった。日米欧の主要中銀がそろったことで、レポートの実効性が高まったとの見方もある。
各中銀は今回合意した共通理解をもとに実証実験を開始するなど、より具体的な準備を進めるという。