
決済インフラ企業との提携で実現
米暗号資産(仮想通貨)取引所最大手のコインベースは14日、仮想通貨決済プラットフォームMercuryoとの戦略的提携を発表。この提携により、仮想通貨ウォレットMetaMask(メタマスク)ユーザーのUSDC購入手数料が50%削減される。ステーブルコイン需要の高まりを受けたこの取り組みにより、ステーブルコインの利用がさらに拡大すると見られている。
手数料削減は、Baseネットワーク上でステーブルコインUSDCを使用する、新規および既存のMetaMaskユーザーが対象となる。
Baseはコインベースが開発したイーサリアムのレイヤー2(L2)ネットワークで、OptimismのOP Stackを基盤に構築され、低コストで高速な取引を実現。コインベースの信用とユーザー基盤を活かして急速に拡大しており、そのTVL(ロックされた総資産額)は約48.5億ドル(約7,160億円)で、全L2チェーン中、最大規模となっている。
MetaMaskは世界有数のセルフカストディ型ウォレットで、Web3の標準ツールとして幅広く使用されている。2024年1月には月間アクティブユーザー数が3,000万人を突破したと報告された。同社のシニア製品マネージャーであるLorenzo Santos氏は、「MetaMaskユーザー基盤が急成長する中、ステーブルコインのユースケース拡大に伴い、USDCの急速な普及が見込まれる」と述べた。
Mercuryoプラットフォームにおけるステーブルコインの需要は2025年初頭から増加しており、その後も堅調な推移を見せている。同社のPetr Kozyakov最高経営責任者は、「2025年の仮想通貨市場において、ステーブルコインは最前線に立つ存在であり、USDCは極めて重要な役割を果たすだろう」と展望を語った。今回の手数料削減によってMetaMaskユーザーによるUSDCの利用が促進されると期待されている。
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Circle社の新計画
米Circle社が発行するUSDCは、時価総額約676.5億ドル(10兆円相当)で業界第2位の地位を占め、その市場シェアは約25%に上る。
同社は6月に実施した新規株式公開(IPO)で大きな成功を収めた。当初予定の25倍を超える応募が殺到し、最終的に計画された8億9,600万ドルを大幅に上回る11億ドルの資金調達を完了した。
Circle社は12日に発表した第2四半期の決算報告の中で、新たなEVM互換のレイヤー1(L1)ブロックチェーン「Arc」の開発計画を明らかにした。Arcはステーブルコイン決済に特化したブロックチェーンで、USDCをネイティブガストークン(手数料)として使用するため、価格変動リスクの回避にもつながる設計となっている。
Arcは、決済、外国為替、資本市場向けに設計された企業・機関投資家仕様のブロックチェーンで、 Circle社がサポートする提携チェーン(Baseを含む)との相互運用性も確保される。Arcは今秋、パブリックテストネットでのローンチが予定されている。
7月に米国初のステーブルコイン規制であるジーニアス法が成立したことを受け、ステーブルコインへの関心が一層高まっている。Circle社による新計画発表は、競合するUSDTや新興ステーブルコインに対する競争力強化を図る動きと見られる。
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コインベースとCircle社の関係
コインベースとCircle社は、USDC発行のために、2018年に共同で立ち上げたCENTREコンソーシアムを通じて強固なパートナーシップを築いてきた。2023年にコンソーシアムは解散し、コインベースが出資する形でUSDCの発行とガバナンスはCircle社内に一本化された。
コインベースは7月25日時点で、Circle株を850万株保有しており、その価値は約16億ドル(2,350億円)に上る。
同社は、第1四半期にプラットフォーム上で保有するUSDCから1億2,500万ドル(184億円)の収益を計上した。さらに、プラットフォーム外でコインベースは、USDCの準備金からの収益をCircle社と50対50の割合で分配しており、同四半期に1億7,000万ドル(250億円)を獲得した。
JPモルガンは、Circle関連事業がコインベース株主にもたらす経済的価値を総額550億ドルから600億ドルと推計しており、投資家が依然としてUSDCエコシステムにおけるコインベースの役割を過小評価している可能性があると指摘している。
また、JPモルガンはCircle社が資金提供するUSDCのインセンティブがユーザー増加の原動力になっていると分析しており、コインベースはほとんどコストをかけることなく、新規顧客を獲得できる構造になっていると述べた。
Circle社によるステーブルコインに特化したArcブロックチェーンの開発は、USDCエコシステムをさらに強化する戦略的取り組みと見られており、コインベースも大きな恩恵を受けること期待されている。
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