「もしコインベース株をイーサリアム基盤トークンで発行していたら」創業当初の社員が持論を展開
トークンエコノミー時代の上場手段
暗号資産(仮想通貨)ベンチャーキャピタル、Polychain Capitalの創業者兼CEOであるOlaf Carlson-Wee氏は、米仮想通貨取引所最大手コインベースのナスダック上場について、DeFi(分散型金融)という選択肢の方が理想的だったとの持論を披露した。
Carlson-Wee氏は、コインベース創業時に初めて雇用された社員だったこともあり、思い入れも強いようだ。
仮想通貨メディアDeCryptのインタビューで、Carlson-Wee氏は「もしコインベースがイーサリアム基盤のERC-20トークンで株式公開していたら、取引の可能性はもっと広がっただろう。」と切り出し、以下のように展開すべきだったと説明した。
- 顧客確認後に、株式をERC-20トークンとして発行
- ステーブルコインUSDCのモデルに倣った方法で、同社のプラットフォームで新規株式公開(IPO)を実施
- トークンをDeFiの「ワイルドで素晴らしい世界」に送金すると、プールの担保として使用したり、レバレッジをかけたりなど、個人ユーザーが様々な用途に用いることが可能に
- コインベースの取引所でトークンを実際の株式に戻すことができる
もし、トークンの取引をコインベースに限定していたならば、ナスダック上場で投資した機関投資家の多くは参加していなかったかもしれないが、コインベースの株価は現在の倍以上になっていただろうと、Carlson-Wee氏は主張した。
関連:仮想通貨取引所コインベース「COIN」、ナスダック上場
DeFiの可能性
「USDCモデルに基づいて規制に準拠した、トークン化した株式がDeFiに登場していたら、本当にエキサイティングなことだ」とCarlson-Wee氏は語る。
同氏は、DeFiの可能性を高く評価しており、米経済誌フォーブスとのインタビューでは、仮想通貨分野における最大の技術的進歩の一つとしてDeFiを取り上げ、イーサリアム上のスマートコントラクトに預け入れられている資産総額は、1年間で約80倍に成長したと指摘。互いに身元を知らない個人や企業間でも、何百万ドル(数億円)という金融契約が、普通に交わされているのが、DeFiの凄さだと述べた。
DeFi分析サイトDeFi Pulseのデータによると、現在、DeFiプロトコルへ預け入れられ、ロックされている仮想通貨資産の総額、TVL(Total Value Locked )は、約9兆円(810億ドル)。
Carlson-Wee氏は、このような巨大な資本プールで、「仮想通貨よりも、少し安全なリスク・リターンプロファイルを持つコインベース株」に、TVLの10%を割り当てると仮定すると、従来の公開市場やIPO投資家に匹敵する規模になると主張。このように、仮想通貨をベースにした株式公開こそ、自身が望んでいた道だったと述べた。
一方、同氏は「仮想通貨業界の誰かが、正面玄関から入る必要があったのだろう」と、業界初の大規模な株式公開となったコインベースのナスダック上場背景を考慮する姿勢も見せた。
世界最大手の取引所バイナンスのChangpeng Zhao CEO(CZ)は、コインベースの上場は仮想通貨関連企業が上場する際の手本になるだろうと、高く評価する姿勢を見せている。
関連:仮想通貨取引所バイナンスのCZ氏「コインベースの株式上場は見本に」
コインベースの株価(COIN)
コインベースは新規株式の発行による一般的なIPOではなく、ナスダックへの直接上場(DPO)という手法をとった。4月14日の取引初日に株価は、1株381ドルで始まり、一時428.9ドルまで高騰したが、338ドルで取引を終えた。
その後株価は下落傾向を続けたものの、先週金曜日からは復調の兆しを見せ、現在は290ドル近辺で推移する。
画像はShutterstockのライセンス許諾により使用
「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します