仮想通貨取引所BitMEX訴訟、裁判官が原告による「仮想通貨の基礎レッスン」提供を却下
仮想通貨のレッスンは必要ない
暗号資産(仮想通貨)デリバティブ取引所BitMEXに対する訴訟で、基本的な仮想通貨のレッスンを提供するという原告の申し立てを、裁判官が却下したことがわかった。法律メディアLaw360が報じた。
米カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所のWilliam H. Orrick判事は、原告であるBitcoin Manipulation Abatement LLC(BMA)の提案に対し、次のように述べている。
「原告は、仮想通貨に関する個別指導が裁判に有益だと考えているが、私はそうは思わない。原告は目下の課題、つまり、もっともらしい申し立てを行ったと私を納得させることに、重点的に取り組むべきである。」
訴訟内容と経緯
BMAは、BitMEXの元親会社であるHDR Global Trading Limitedとその幹部であったArthur Hayes氏、Ben Delo氏、Samuel Reed氏を、ゆすりや資金洗浄、また相場操作によって巨額の不正利益を得ていたとして、訴えている。Hayes氏ら3人はBitMEXの共同設立者である。
BMAがBitMEXに対し、初めて訴訟を提起したのは2020年の5月に遡る。BMA側の申し立ては、裁判所から繰り返し却下されており、今回が4度目の訴訟提起となる。
前回に原告の主張が却下されたのは今年3月だった。
BMA
原告であるBMAに関する公的な情報は限られているようだ。プエルトリコで登記され、法人登記簿に記載された取締役は、Pavel Pogodinという人物ということだけが明らかになっている。なお、Pavel Pogodin氏はConsensus Lawという法律事務所を代表する弁護士で、BitMEX訴訟を担当している。
BMAは、これまでにリップル社に対しては、未登録の証券を販売したとして(2020年5月)、またFTX取引所に対しては、未登録証券の販売と市場操作を主張して(2019年11月)、提訴した経緯がある。
被告のHDR Global Tradingは、BMAが「仮想通貨分野で”特許トロール”(注:大企業相手に法外な賠償金を請求)のように活動していると認識されている」と語っている。
Pavel Pogodin氏は最近のツイートで、米大手取引所Krakenを不正取引で調査しており、損害を被ったユーザーに連絡するよう呼びかけている。本命の訴訟
BitMEXに対してはBMAの他にも複数の民事訴訟が起こされている。なお、両件とも担当弁護士は、BMA訴訟と同じPavel Pogodin氏である。
しかし、同取引所や元幹部にとって最も重要な意味を持つのは、米司法省(DOJ)と米商品先物取引委員会(CFTC)による刑事訴訟だろう。
昨年10月、DOJとCFTCは、Arthur Hayes氏(元CEO)をはじめとする幹部4人を、BitMEXへのマネーロンダリング防止要件の導入、実施および維持を故意に怠ったとして、銀行秘密法違反および銀行秘密法違反に対する共謀罪で起訴した。これらの罪状が確定すると、それぞれ最高5年の懲役刑が科せられる。
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幹部の一人Samuel Reed氏(元CTO)は、同月逮捕され、その後500万ドル(約5.5億円)の保釈金で釈放された。Hayes氏とBen Delo氏は自主的に当局に身柄を預けた後、それぞれ1,000万ドル(約11億円)と2,000万ドル(約22億円)の保釈金で釈放されている。
この3人に対する裁判は、2022年3月に開始される予定だが、BitMEXの事業開発責任者であったGregory Dwyer氏は、依然として逃亡中の模様だ。
なお、取引所としてのBitMEXは、幹部を刷新して新体制を敷き、規制遵守を徹底させ「世界最大の規制に準拠した仮想通貨デリバティブ取引所」として新規サービスの拡大を図るなど、企業努力を続けている。
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