「DeFiの先へ進もう」ヴィタリック氏、イーサリアムのさらなる可能性を語る
「DeFiのみに安住しない」
暗号資産(仮想通貨)イーサリアムの考案者・共同創業者のヴィタリック・ブテリン氏は、イーサリアム・コミュニティ・カンフェレンス(EthCC、フランス・パリで開催)の基調講演で、分散型金融(DeFi)以外の分野における開発に積極的に取り組むべきだとの考えを明らかにした。
イーサリアムのビジョンは、常に、金融を遥かに超えたところで、分散化、信頼性の最小化、そしてメカニズム設計の実験を行うことだとブテリン氏は聴衆に訴えた。
確かに「中央集権的な技術が最も苦手とする」金融分野において、イーサリアム上に構築されたDeFiは驚くべき成長を遂げたが、現在、金融関連のアプリが「イーサリアム空間を支配している」ことに対して同氏は警鐘を鳴らした。
DeFiによって(イーサリアムが)特徴づけられることは、何の特徴もないことよりは好ましい。しかし、もっと先へ進む必要がある。
取引手数料の高騰
ブテリン氏は、DeFiが急速に発展したことによって、イーサリアムの取引手数料の高騰が引き起こされた問題にも触れた。例えば、収益が見込まれるDeFiでは許容範囲でも、「NFT化されたツイート」を送るケースなどが考えられる分散型ソーシャルメディアの手数料として、1トランザクションあたり「5.22ドル」(約575円)の場合はネットワークとして機能しないだろうと述べた。
一方、レイヤー2ネットワークの開発やシャーディングによるスケーラビリティの拡大により、手数料問題は徐々に解決されつつあると付け加えた。しかし、プロジェクトの目的は有用性をもたらすことであり、価格ではないとして、「価格はあくまでも、実用性の結果としてもたらされるものだ」と念を押した。
DeFi投資の限界とリスク
ブテリン氏はまた、DeFi分野で注目されるイールドファーミングなどの収益活動は有用であるものの、「トークンの取引に役立つトークン」が無限に生み出されるループに陥る可能性を指摘。複雑な金融派生商品が持つシステミックリスクについて警告した。
このようなものは、レイヤー1とレイヤー2までは価値があるが、レイヤー6ともなると実際には金融不安と全てが崩壊してしまうリスクを高めることなる。そうなると、規制当局の怒りに触れる恐れもある。
注目する分野
ブテリン氏は金融以外のユーティリティこそが、「汎用ブロックチェーンのビジョンの中で最も興味深い分野」であると述べており、最も面白いイーサリアムのユースケースは、「金融と非金融の要素を組み合わせた」領域で誕生するだろうと主張した。
その一例として、分散型ソーシャルメディアにおけるイーサリアム利用の可能性ついて言及。ブロックチェーンの中立的で検閲耐性を持つ特徴と、トークンを利用した「経済レイヤー」を用いた設計が容易にできるなど、技術的に優れた点を説明した。また、「イーサリアム上のツイッター」の構築がAaveに提案されたことにも触れた。
また、イーサリアムを分散型のログインサービスとして利用するアイディアや、ゼロ知識証明を利用した認証エコシステム構築を目指す複数のプロジェクトを紹介した。
さらに、ブテリン氏は「遡及的な公共財のための資金調達」というコンセプトに積極的に関わっていることを発表した。
通常、スタートアップやプロジェクトへの資金提供は、その将来の可能性に対して行われるものだが、このコンセプトは、その逆の発想に基づいている。つまり、すでに一定の成果を出したプロジェクトに対し、コミュニティの目的に見合った価値をもたらしたと評価された場合に資金を提供するというもの。プロジェクト評価のために分散型自立組織(DAO)を設立し、プロジェクトトークンの発行などが行われるという仕組みだという。
開発の社会的意義を問い続けるブテリン氏と、大きな開発者コミュニティをかかえるイーサリアムが、DeFiを超えて、今後どのように発展していくのか、期待しつつ見守っていきたい。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します