イーサリアム・ロンドンハードフォークによる影響とは|Orchid(オーキッド)寄稿
大型アップデート「ロンドン」とは
イーサリアムは、分散型アプリケーション(dApps)の開発に最も適したブロックチェーンネットワークとして評価されています。イーサリアム上には、現在最も多くのdAppsが存在し、最大の開発者コミュニティを形成しています。
これは、オーキッドが分散型VPNマーケットプレイスの基盤としてイーサリアムを選択した際の重要な要因となりました。しかし、イーサリアムは普及するにつれ、成長の痛みに直面するようになりました。特に、高いガス料金と限られた拡張性(スケーラビリティ)が、ネットワークの成長を制限しました。
現在、イーサリアムの全面的な見直しが行われています。これはイーサリアム 2.0と呼ばれるネットワーク全体のアップグレードで、ネットワークの力学を全面的に変更し、エコシステム全体に重要な影響を与えるものです。
Ethereum.orgによると、今回のアップグレードの主な目的は、ネットワークの「拡張性(スケーラビリティ)、安全性(セキュリティ)、持続性(サステナビリティ)」を高めることです。この目的のために、ネットワークは一連の構造的な変更を行っています。なかでも最も顕著なものとしては、プルーフオブワーク(PoW)コンセンサスアルゴリズムから、プルーフオブステーク(PoS)アルゴリズムへの切り替えとなります。
ハードフォークとは
当初、イーサリアム2.0は2021年半ばまでに完全実装される予定でした。しかし、開発上の不具合により、アップグレードの開始は何度か延期されています。今後も更なる延期の可能性はありますが、2021年後半から2022年前半までには完全な機能を備えたイーサリアム2.0の立ち上げが完了する予定です。
アップグレードを確実に成功させるため、新機能のインストールは「ハードフォーク」と呼ばれる3回の小さなマイルストーンに分けられています。
ハードフォークとは、あるブロックチェーンが実質的に新バージョンと旧バージョンの2つに分岐することです。これは、ブロックチェーンのプロトコルに変更があった場合に起こります。ハードフォークが行われると、分岐した2つのブロックチェーン間には互換性がなくなります。
これには2つの可能性があります。一つは、旧バージョンのプロトコルがノードによって放棄され、すべてのノードが新しいプロトコルを採用する場合です。
そしてもう一つは、十分な数のノードが新しいアップグレードの採用を拒否し、旧バージョンのサポートを続けた場合です。この際、2つの独立したブロックチェーンとして継続され、それぞれが固有のトークンを持つことになります。この後者のシナリオによって、2015年にイーサリアムクラシック(ETC)が誕生しています。
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今年の4月には、イーサリアム2.0の実装に向けた第1弾のアップグレード、通称「ベルリンハードフォーク」が実施されました。このアップグレードには、手数料の最適化とネットワークセキュリティの向上を目的とした「Ethereum Improvement Proposals(EIP)」が含まれていました。ほとんどの取引でガス料金を削減する「EIP-2565」や、サービス拒否(DoS)攻撃を抑止する「EIP-2929」などが含まれています。
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ロンドンハードフォーク
21年8月初めにメインネットで稼働したロンドンハードフォークは、これらのアップグレードの第2弾となります。
ロンドンの主な目的は、ネットワークの拡張性を高めることと、取引手数料を安定させることです。イーサリアムを取引上の「高速道路」と考えると、ロンドンは効果的にいくつかの車線を追加して、交通量を減らし、料金を標準化させるものです。
しかし、このようなポジティブな変更にもかかわらず、フォークはイーサリアムコミュニティの一部の派閥(特にマイナー)から抵抗を受けました。
イーサリアムのマイニングは廃止されるのか
イーサリアム2.0に移行することで、イーサリアムは最終的にPoSネットワークになります。そうなれば、マイニングは廃止され、ネットワーク上の取引を確認する役割をステーカーが担うことになります。当然のことながら、マイナーはこの変化に抵抗を示しています。
ロンドンハードフォークでは、PoSへの移行は完了しませんでしたが、マイナーの報酬獲得能力に影響する重要な変更がいくつか行われています。また、マイナーにとっては、イーサリアムで稼げる時間が残り少なくなっているという心理的な影響もあるでしょう。
バーン機能の導入
ロンドンハードフォークをめぐる論争のほとんどは、アップグレードの5つの改善提案のうちの1つに起因しています。その提案が「EIP-1559」です。
この提案は、イーサリアムの手数料体系に「バーン(焼却)機能」を導入するというものです。基本料金と呼ばれる各取引料金の一部(取引を行うために必要な最低限の費用)が破棄、つまり「バーン(焼却)」されることで、イーサリアムのトークン経済にデフレという要素が加わります。
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イーサリアムは、この変更が施される前はインフレ通貨であり、ETH(イーサ)の供給量には上限がありませんでした。マイナーへの支払いのために新たに生成・発行されたETHは、年に4%ずつ供給量を増加させていました。ETHの価格が上昇することで、インフレの影響を打ち消すことができていましたが、そのせいでETHは健全な価値の保存手段とはみなされてきませんでした。言い換えると、その要因による購買力の上昇や下降の可能性があったということです。
今回のデフレメカニズムの導入は、これを変えることを目的としています。ETHの供給量には依然として上限はありません。しかし、バーン機能によって、ETH供給数は1億1930万以下に制限されると予測されています。これにより、ETHはインフレに対するヘッジとしてより有効になる可能性があります。
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マイニングコミュニティが抱く懸念
ETHの保有者は、このデフレのメカニズムを自らの資産価値にとってプラスになると考えている一方で、イーサリアムのマイニングコミュニティは、収益が減るのではないかという懸念から、これに抵抗しています。
ほとんどの場合、新しい料金体系はマイニングの利益を減少させる可能性があるため、彼らの懸念を抱くのはもっともです。デフォルトでは、マイナーは各ブロックの確認作業によって2ETHを受け取ります。
今後、マイナーはトランザクションを送信する際に支払われる基本料金は一切受け取れなくなる代わりに、送信者が取引をより早く処理するために支払う調整可能な費用である「プライオリティ・フィー」を受け取ることになります。
ロンドンハードフォークによる基本料金への影響
「EIP-1559」では、イーサリアムの基本料金(ベースフィー)に、マイニング収益を減少させる他の変更も導入しています。これらは、イーサリアムのガス代をより予測しやすくするという目的に由来します。
ロンドンハードフォーク以前は、取引コストはオークションの仕組みで決定されていました。ユーザーは、取引の準備をする際に、その取引を実行するためにマイナーに支払う最大金額を「入札」します。マイナーは、できるだけ高い利益を求めて、最もコストの高い取引を選択します。こうした仕組みによって、特にネットワークのトラフィックが多い時には、取引コストが急上昇していました。
EIP-1559では、この問題を解決するため、ネットワークの利用状況やブロックスペースの空き状況を測定するアルゴリズムを用いて、基本料金を動的に調整します。
ブロック内の取引数があらかじめ設定された「ガス・ターゲット」を超えた場合、基本料金は12.5%増加します。また、その逆も同様です。この新しい価格設定の仕組みは、手数料が予想外に高騰することを防ぎ、その結果、マイナーが不当に高い取引手数料を引き出せないようにするための策です。
つまり、この取引価格設定メカニズムとイーサリアムの新しいバーン機能の組み合わせにより、マイニング収益は20~35%減少すると予想されます。また、取引量が大幅に増えれば、この減少分を補うことができる可能性もありますが、それを保証するものではありません。
マイナーたちの抵抗活動
当然のことながら、EIP-1559による収益減少の影響は、イーサリアムのマイニングコミュニティからの抵抗を受けており、提案の変更を求める署名活動も行われています。
このため、マイナーが反発してロンドンハードフォークの実施を拒否し、アップデートが失敗に終わるのではないかという懸念が生じました。しかし、アップグレードへの対応を拒否すれば、さらに多くの収益を失うリスクがあることをマイナーが認識したため、最終的に抵抗は収まっています。
また、アップグレードの影響を受けそうなのは、マイニングの収益だけではありません。「EIP-3554」と呼ばれる最新のハードフォークに含まれる別の改善案では、イーサリアムの採掘難易度が徐々に上昇することになります。それはつまり、取引を確認するために必要な時間とお金の量が徐々に増えていくことを意味します。この難易度の上昇は、PoSへの移行が近づくにつれ、マイニングを続けるインセンティブを低下させ、マイナーのステーカー化を促す可能性があります。
レイヤー2は不要なのか
イーサリアム 2.0の登場によって作り直されるのは、マイニングだけではありません。アナリストの中には、ロンドンのハードフォークによって、ネットワークのレイヤー2ソリューション(別名「ロールアップ」)が不要になると主張する人もいます。しかし、これはコンセンサスの見解とはかけ離れたものです。
レイヤー2ソリューションとは、イーサリアムのメインネットから離れた場所で取引を処理することで、取引速度を高めたり、取引コストを下げたりする二次的なフレームワークおよびプロトコルのことです。大量の少額トランザクションを高速で送信しなければならない状況でよく使用されます。
例えば、オーキッドのVPNマーケットプレイスは、「確率的ナノペイメント」と呼ばれるレイヤー2ソリューションを採用しています。確率的ナノペイメントは、偶然性に基づくシステムを使用して、パケット単位のネットワーク決済を迅速に送信します。
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オーキッドのレイヤー2ソリューションの仕組み
オーキッドの確率的ナノペイメント機能は、1回の支払いを送るコストを大幅に削減させるため、支払いチケットをオフチェーンで送信します。オンチェーン取引は、取引の受信者が支払いを請求した場合にのみ行われます。ほとんどのナノペイメントチケットは「勝ち取る」必要がないため、関連する取引にコストはかかりません。
今後イーサリアムがオーキッドのように、数百万の取引をサポートできるようになる可能性はあるかもしれません。しかし、オーキッドの確率的ナノペイメントは、引き続きユーザーにとってはコスト効率の良いものとして、不可欠な役割を果たし続けることができます。ネットワーク上のVPNサービスは従量制で、ユーザーが使用した帯域幅に対してのみ課金されます。利用開始時の費用はわずか1ドルで、一般的なクレジットカードでの支払いが可能です。
プライバシーはオーキッドの果たすべき使命であり、ユーザーが自由にインターネットを楽しむことができるよう、チームは常に努力し続けています。確率的ナノペイメントは、このミッションにおいて重要な役割を担っています。
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