仮想通貨にまつわる誤解を解説
2021年4月、ニューヨークタイムズ紙は「We’re All Crypto People Now. (もはや仮想通貨は生活の一部だ)」と宣言しました。確かに、ここ1年でデジタル通貨はかつてないほど集団意識の中に入り込んできました。しかし、大きな変化には大きな抵抗がつきもので、仮想通貨もその例外ではありません。
ブロックチェーン技術の性質や機能にまつわる誤解は、普及と同じくらいの速度で拡大しています。非合法活動、環境への負荷、ネットワークの非効率性などに関する噂や誤解は簡単に見つかります。
誤解に対する最も強力な武器は、「事実」の提示です。この原則に基づき、ここでは、仮想通貨に関して最も広く普及している5つの誤解と、それらが的外れである理由をご紹介します。
誤解1:仮想通貨には価値がない
仮想通貨に価値がないのであれば、米ドルやゴールドなど、人々が「価値がある」とみなすものにも価値はないことになります。現実的には、多くの専門家が主張するように、すべての形態のお金は「共同幻想(shared illusion)」なのです。
紙切れであれ、金属であれ、画面上の数字であれ、お金の存在意義は、「価値」を簡単に定量化し、交換できることです。言い換えれば、お金が価値を持つのは、人々がそれを使い、「価値がある」ということに共同で合意するからです。デジタル資産もこの点においては、紙幣や貴金属とまったく変わりません。
2020年6月から2021年6月までの1年間で、仮想通貨への投資総額は、2,700億ドル未満から1兆5,000億ドル近くにまで大幅に増加しています。
誤解2:ブロックチェーンのプライバシーは過剰である、あるいは不足している
「プライベート」や「パブリック」という言葉は、ブロックチェーンに関連してよく使われますが、多くの人にとっては混乱を招き、矛盾しているように見えるようです。
ブロックチェーン技術は、基本的に個人の自律性と透明性という概念を前提としています。
ブロックチェーンは、従来の金融システムよりもはるかに高度に実世界のアイデンティティを隠蔽します。この特徴により、ブロックチェーンの主な目的は「秘密の活動や不正な活動であるに違いない」と主張する人もいます。
一方で、ビットコインやイーサリアムのようなパブリックネットワーク上で行われたすべての取引は、誰でも見ることができます。これは、従来のゲート式の経済システムよりもはるかに高い透明性を持ちます。
ブロックチェーンの中には、意図的にプライベート(許可制)にされているものもあります。一方、イーサリアムのようなパブリック・ブロックチェーンは、真の意味での「匿名」ではありません。むしろ、それは「偽名」に近いと言えます。
そこでの全取引は可視化され、パブリックウォレットアドレスにリンクされています。この公開識別子は、ユーザーだけが知る秘密鍵と関連付けられており、他の現実世界のIDとは関連付けられません。
とはいえ、公開台帳を使えば、同じウォレットで行われた取引を見ることができます。そのため、取引履歴から、ウォレットの所有者が誰であるかをある程度は推測することができてしまいます。
誤解3:ブロックチェーン技術は、日常的な取引には非効率、または高コストである
ブロックチェーンに対する別の議論には、「ブロックチェーン運用は高コストで、主流産業に必要な取引量をサポートするには遅すぎる」というようなものがあります。実際、一部のブロックチェーンが価格や取引速度で苦戦していることは事実です。
しかし、これは分散型ネットワークとエコノミクス(経済学、価値が巡る仕組みやメカニズム)がまだ未成熟であることが原因です。30年前には、ダイヤルアップモデムで1曲をダウンロードするのに何時間もかかっていましたが、インターネットは現在、何十億人もの人々に高品質のストリーミングビデオを無制限に提供できるまでに成長しました。
スピードとコストの課題に対する解決策は、すでに提供されています。Orchidが互換性を持つ「xDai」のように、取引コストを大幅に削減したブロックチェーンが最近多く登場しています。
xDaiを利用すれば、ガス代は低く抑えられます。xDaiにより、Orchidの利用コストはすでに1ドルにまで下がっていますが、これはまだ開始されたばかりです。多くのレイヤー2ソリューションもすでに存在しており、基礎となるチェーンよりもはるかに速い取引速度を実現しています。
例えば、Orchidの「確率的ナノペイメント(Probabilistic Nanopayments)」は、毎秒数百万人のユーザーをサポートすることができます。さらに、Ethereum 2.0への移行により、ネットワークの速度は大幅に向上することが期待されています。
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誤解4:仮想通貨の用途は、ほとんどが犯罪取引の決済である
この誤解は、仮想通貨に関して最も古く、かつ一般的なもののひとつです。これは本当なのでしょうか?
ブロックチェーンの主な使用例が違法行為であるという主張は、ブロックチェーン批判者が頼る、安易で魅力的な戦術となり得ますが、現実にはブロックチェーンと犯罪の結びつきは希薄なものです。
仮想通貨分析会社Chainalysis社の2021年のレポートによれば、2019年の全取引量(約214億ドル)のうち、犯罪行為で利用されたものはわずか2.1%であることが判明しました。2020年には、この数字はわずか0.34%(約100億ドル)にまで低下しています。現在の軌道が続けば、仮想通貨関連の犯罪が全ネットワーク活動に占める割合は、時間の経過とともにますます小さくなっていくでしょう。
誤解5:仮想通貨は詐欺である
仮想通貨が「詐欺」だという主張は、ブロックチェーン関連の誤解の中で最も幅広く、かつ最も一般的なものでしょう。疑わしいプロジェクトや詐欺的なプロジェクトが、ブロックチェーン業界の誕生以来、絶え間なく誕生していることは事実です。
また、斬新で複雑なアイデアや破壊的なアイデアが悪意から生まれるという考え方は、新しい現象ではなく、他の産業の変革期にも当てはまります。
例えば、第一次インターネットブームでも、詐欺行為や犯罪行為は見られました。しかし、当時の野心的な創業者たちの失敗は、彼らが利用しようとした技術の真価の否定とはなりません。
一つの仮想通貨詐欺に対して、何十件もの非常に革新的なユースケースを持つ合法的プロジェクトが存在しています。実際、仮想通貨産業が成熟するにつれ、詐欺の事例は減少しています。2020年、仮想通貨詐欺は2019年に比べて57%減少し、45億ドルから19億ドルに減少しました。
「暗号通貨は詐欺だ」と断言することは、デジタル資産によってすでに達成された真の革新と変化を無視することになります。そうした主張は、暗号通貨の技術がどのように機能するのか、あるいはどのような用途があるのかをほとんど理解していないことによるケースがほとんどです。
これらの誤解に事実はあるのか
確かに、ブロックチェーン技術やデジタル通貨一般は、他の新たな技術と同様に、克服すべき課題を抱えています。特に、スピードとコストに関する懸念に対処することは、今後数年間のうちで重要な課題となるでしょう。
しかし、インターネット上のプライバシーを含め、世界や経済を再構築・改善するブロックチェーンの大きな可能性や、すでに達成されている目覚ましい進歩について見失うべきではありません。