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米インフラ法案が及ぼすプライバシーへの影響とは|Orchid(オーキッド)寄稿

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

「インフラ法案」の重要性

8月10日、米国の上院は、「インフラ投資・雇用法案(Infrastructure Investment and Jobs Act)」を可決しました。このいわゆるインフラ法案は、超党派による稀に見る合意のもと、米国のインフラ整備に1.2兆ドル(約130兆円)を割り当てるものです。

この法案には、単なる道路や鉄道の整備にとどまらない、米国のインターネット全般、特にブロックチェーンや仮想通貨業界に影響を与える、多くの新たな規制が盛り込まれています。

この法案は、バイデン大統領が署名する前に下院を通過しなければならず、依然としてその見通しは不透明です。しかし、もしインフラ法案がこのまま施行されれば、デジタル空間全体に大きな影響を及ぼすことが懸念されています。本記事では、その理由について、インフラ法案の詳細と共にご紹介します。

インフラ法案とは

米上院から提出され、今後8年間で1.2兆ドル(約130兆円)を道路・橋、鉄道、港湾・空港、水道、高速通信網、電力網などの国内インフラへの投資を提案する法案。バイデン政権の経済分野の主要政策の1つである。

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インフラ法案の中身

この法案では、米国の道路や鉄道、その他の物理的インフラの改善に数千億ドルの資金が必要であると書かれています。その中には、クリーンな発電を促進するための条項や、アメリカ人が清潔な飲料水を利用できるようにするための条項などが含まれています。

また、この法案で注目されているのは、インターネットアクセスが必須サービスとして扱われていることです。これは過去30年の間に、多くのアメリカ人が仕事・コミュニケーション・買い物・テレビ視聴などを行うための主要な手段としてインターネットを利用するようになり、大きな変化が起きたことを受けてのものです。

具体的には、米国内の農村部や低所得者層へのインターネットアクセス提供のため、650億ドルの予算が計上されています。また、サイバーセキュリティ対策を強化するために、州政府や地方自治体に10億ドルが割り当てられています。

プライバシーに関する懸念が最も顕著になるのは、これらの措置の実施においてです。実際、提案されている法律の多くが、詳細な報告・データ収集・人々の活動の追跡を要求しています。個人のプライバシーを守るためには、これらの新しいルールの潜在的な影響を理解することが必要になります。

懸念を招く「ブローカー」に関する曖昧な表現

インフラ法案に対しては、ブロックチェーン分野における金融監視の強化と、煩雑なコンプライアンス基準につながる可能性が高い条項があるとして、すでに批判の声が上がっています。

まず、インフラ法案の中では「ブローカー」とみなされる者に新たな要件を課します。ブローカーの定義としては、「デジタル資産移転の代行サービスを提供する責任を有し、それを定期的に提供する者」とされています。

この規定は現在のところ、仮想通貨業界全体のマイナー、ノードバリデータ、およびステーカーに適用される可能性があります。また、これらに該当する事業体は、ユーザーの名前や住所といった、IRS(アメリカ合衆国内国歳入庁)の報告義務を果たすために必要な個人情報を収集する義務も生じます。

この文言の曖昧さは、P2Pネットワークや分散型取引所で行われる広範かつ匿名の仮想通貨取引の合法性について、パンドラの箱を開くかのような大混乱を引き起こす可能性があります。業界団体はこれまで、「それらの取引所の多くは報告データを収集できる能力がない」と述べています

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基本的プライバシー侵害の懸念

さらに、仮に影響を受ける事業者がこのユーザーデータを収集できたとしても(可能性は極めて低いと思われますが)、その義務は基本的プライバシーの侵害となる可能性があります。電子フロンティア財団(EFF)は、「匿名による他人との直接取引は、市民的自由の基本です。財務記録の開示は、個人のプライベートな生活を覗き見るようなものです。」と述べています

多くの上院議員は、この法律の文言を修正して、「ブロックチェーン技術やウォレットを開発している個人には適用されない」ようにすることを推し進めたものの、この修正案は法案の承認を前に通過しませんでした。とはいえ、議員の間には、同法の文言がブロックチェーンネットワークの運用に携わる者に適用されるとみなすべきではないという大きなコンセンサスがあるようです。

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オハイオ州のロブ・ポートマン上院議員は、議院でスピーチを行い、この法律の趣旨がブロックチェーン・プラットフォームを対象としたものではないことを明確にすることに尽力しています。また彼は、財務省がこの解釈を確認するために、さらなる規制ガイダンスを示す可能性も示唆しています。

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オンラインとオフラインでのプライバシーへの影響

上院のインフラ法案は、ブロックチェーン分野だけでなく、インターネットや個人のプライバシーにも大きな影響を及ぼすと考えられています。

特に一部のアナリストは、このインフラ法案を、財務報告要件を強化するための広範な取り組みの一環であるとしています。また、この法案がもたらすプライバシーへの影響は、デジタル領域だけでなく、人々が日常生活で利用する物理的な空間にまで及びます。

インフラ法案の中の「モビリティ強化と交通の革新」と名付けられた部分では、センサーや自律走行車、ドローンなどの技術を実験的に導入する都市に5億ドル(約510億円)を提供する助成プログラムが含まれています。この制度の目的は、交通や物資の配送などをよりスマートに、よりクリーンに、より効率的にすることで、都市の生活水準を向上させることにあります。

このような「スマートインフラ」の可能性は魅力的ですが、個人のプライバシーとセキュリティを優先した形で導入されることが重要です。このような実験に使用されるデバイスは、管理が不適切である場合、人々の日常生活に関する膨大なデータを収集する可能性があり、プライバシーにとって大きなリスクとなる可能性があります。

プライバシーを考慮した公共インフラの設計方法

インフラ法案の条項の多くは、「プライバシーかセキュリティか」、あるいは「プライバシーか利便性か」といった誤った二項対立を示しています。

実際には、物理的にもデジタル的にも、プライバシーとセキュリティを向上させつつ、人々の生活をより便利にするようなシステムを設計する技術が、現在の私たちにはあるはずです。適切なツールと考え方さえあれば、優先事項をすべて重視した21世紀の物理的・デジタル的なインフラを構築することは可能なのです。

しかし、上院のインフラ法案が最終的に法制化されるかどうかにかかわらず、オンライン上で強固なプライバシーを維持するためには、正しい手順を踏むことが不可欠です。オーキッドは、可能な限り強力なデジタル・プライバシー基準を提供することで人々に力を与える、自由で開かれたインターネットを支援することで、この実現に向けて努力しています。

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