EU規制当局、金融セクターのリスクとして仮想通貨にも言及

ESMAが仮想通貨のリスクに言及

欧州証券市場監督局(ESMA)は1日、金融セクターの現況・リスク・脆弱性(TRV)に関するレポートを発表。その中で暗号資産(仮想通貨)がもたらすリスクについても言及した。

仮想通貨はイノベーションの一形態だとしつつ、その環境負荷や投機性について懸念した格好だ。TRVレポートの発表は、2021年に入ってから2回目となる。

欧州証券市場監督局とは

EUの専門機関の一つ。フランスに本拠地を置く機関であり、EU全体の金融市場の監視役として、証券法と規制を担当する。また、EU各国の金融当局間での協力と投資家保護を促進する。

▶️仮想通貨用語集

環境負荷や投機性を指摘

レポートによると、持続可能性に取り組む、環境・社会・ガバナンス(ESG)分野の投資に焦点を当てたファンドの資産が、2021年の年初から現在までに20%増加しているという。ESMAは次のように続けた。

フィンテックソリューションのようなイノベーションは、ESG分野の情報が行き渡るようにして、持続可能性を促進することができる。しかしイノベーションの中でも、仮想通貨の環境コストは増大している。

ビットコイン(BTC)などPoW(プルーフオブワーク)アルゴリズムを採用する仮想通貨のマイニングに多くの電力が消費され、炭素排出することを念頭に置いたものだ。

また、仮想通貨のボラティリティ(価格変動)の大きさも指摘した。これには、個人投資家の参加が増えていることも背景にあると分析している。

個人の取引や投資が大幅に増加したことで、ビットコインなど、規制対象になっていない仮想通貨の価格が大幅に上昇した。

個人のトレーディングが増加した大きな要因の一つは、消費者がオンラインやモバイルの取引プラットフォームに簡単にアクセスできるツールが普及したことだ。

米国にならってEUでも、手数料を無料とする取引プラットフォームが増えており、投資への参加を気軽に行える「ゲーム化」も起こっているとする。

デジタル金融の規制を構築中

現況についてESMAは、「デジタル化と新技術の活用」が進んでおり、企業やユーザーにとっては効率化などの恩恵もあるが、規制当局にとっては「セキュリティ、データ管理、企業間競争」などに関する新たな課題をもたらしているとみている。

レポートによると、こうした変化に対応するため「欧州委員会は、EUの規制の枠組みをデジタル金融に適したものにするために、意欲的な戦略を策定」しているところだという。

ESMAは3月に今年1回目のTRVレポートを発表。その際にも、仮想通貨は投機性が高く、まだ従来型資産のような投資家保護もないとして、消費者に注意を促していた。

EUは、仮想通貨に関する統一的な規制案として2020年9月に「MiCA(Market in Crypto Assets)」を発表。しかし規制当局間で調整する必要もあり、導入は2024年頃になる見込みだとされている。

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炭素排出削減に取り組む仮想通貨業界

今回ESMAは環境負荷を指摘していたが、仮想通貨業界では、炭素排出量削減に向けた試みが加速しているところだ。

一例としては、4月にブロックチェーンと仮想通貨のエネルギー問題に取り組む国際的な業界連合「Crypto Climate Accord(クリプト気候協定)」が立ち上げられている。

2025年までにすべてのブロックチェーンを100%再生可能エネルギーで動かすこと、2040年までに仮想通貨業界全体の温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを目標に掲げた。

イーサリアム(ETH)開発企業ConsenSysやリップル社、マイニング企業Hut 8 Miningなど様々な企業が参加している。

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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します

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