パウエルFRB議長、デジタル・ドルで議会との協力を訴える
デジタル・ドルに言及
米FRB(連邦準備制度理事会)のジェローム・パウエル議長は28日の上院銀行委員会の公聴会で、FRBが議会と協力してデジタル・ドルの開発を進めるべきだと指摘した。
CBDC(中央銀行デジタル通貨)に関する議題は、ペンシルバニア州のパット・トゥーミー上院議員の質問の中で出たもの。トゥーミー議員は、仮想通貨支持派の議員として知られいる。
トゥーミー議員はこれまでも他の議員と連携し、暗号資産(仮想通貨)の規制確立の必要性を米証券取引委員会(SEC)や議会に訴えていた。24日にはSECのゲーリー・ゲンスラー委員長あてに、仮想通貨への規制を明確にするよう求める手紙を送付している。
パウエル議長は今回の公聴会で、FRBの活動に関する既存の法律は、デジタル・ドルを発行するにあたるベースにはなるが、現在の法律を拠り所に押し進めることを勧めると述べ、次のように続けた。
FRBと議会がデジタル・ドルについて幅広く協議し、最終的には議会が決めて法案を作ることが最も望ましいだろう。
パウエル議長は今年初め、デジタル・ドルは議会の承認が必要になるだろうと言及。仮想通貨の普及から米ドル通貨の価値を守るためにも、政策としてデジタル・ドルの導入は慎重に進めるべきだと述べていた。28日の発言から、議長はすでにこのことについて関与しているとみられる。
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5月には、ランダル・クォールズ副議長が上院銀行委員会の公聴会で、デジタル・ドルに関する今後のFRBの取り組みには、議会の承認が必要であるとの考えを示していた。フィンテック企業がデジタルアセットを扱うことにより、銀行と同じ機能を持ち始めていることを指摘、これに対する規制が必要になるとも言及した。
また、ボストン連銀支部は現在、マサチューセッツ工科大学と共同でデジタル・ドルのプロトタイプを作っており、年末までにそのプロセスの一部を公開する予定だ。一方で、仮にFRBが主導しデジタル・ドルを発行した場合、どのような形になるかはまだ定かではない。
パウエル議長は今年の5月、デジタル・ドルの設計について以下のように述べていた。
CBDCを設計する際には、金融政策、金融安定性、消費者保護、法律、プライバシーなど様々な面で重要課題が浮上するため、一般市民や議員の意見も参照しながら、慎重な検討や分析が必要である。
FRBは、米国の家計と企業に広範な利益をもたらす、安全で効率的な決済システムを確保すると同時に、イノベーションを受け入れることにも重点を置いている。
また、先週の記者会見でデジタル・ドルの発行について「未定である」と話していた。
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CBDCとは
「Central Bank Digital Currency」の略で、各国・地域の中央銀行が発行するデジタル化された法定通貨を指す。通貨の管理や決済等においてコスト削減や効率性向上が期待できる一方で、個人情報やプライバシーの保護、セキュリティ対策、金融システムへの影響など考慮すべき課題も多い。
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