ヴィタリック氏が明かす「仮想通貨都市構想」とは:シティトークンやDAO活用など提案
ブロックチェーンと都市運営の親和性
暗号資産(仮想通貨)イーサリアム(ETH)の共同創設者Vitalik Buterin氏は10月31日、ブログで独自の仮想通貨都市構想について語った。
同氏は、国家レベルでは社会や人々のニーズの急速な変化に迅速に対応することまでは難しいが、地方都市や州政府レベルであれば、理論的には「真のダイナミズム」の実現が可能だとして、すでにブロックチェーン技術導入の取り組みが始まっている米国の都市や州の例を示した。
- 米フロリダ州マイアミ市:独自トークン「マイアミコイン」を活用
- 米ワイオミング州:分散型自律組織(DAO)に適した法体系の整備
- 米ネバダ州リノ市:市長が率先してブロックチェーン技術の導入を模索 (公共アートのNFT化、リノコインで運営されるDAOの設立など)
また、既存のスマートシティ関連のイニシアチブでは、中央集権的なガバナンスや透明性の欠如、並びにデータのプライバシーが懸念されているが、ブロックチェーンや暗号技術がこれらの問題解決における有望な鍵となるだろうと希望をのぞかせた。
ブロックチェーン技術で改善できること
Buterin氏は、都市の運営でブロックチェーンが貢献できる分野として最も「理にかなう」のは、以下の二つだと主張した。
[A]ブロックチェーンを使って、より信頼性が高く透明性があり、検証可能なものに既存のプロセスをバージョンアップすること。
[B]ブロックチェーンを使って、土地や希少資産などの所有権及び民主的なガバナンスに関する新しく実験的な方法を実施すること。
Buterin氏はこのような分野とブロックチェーン技術の適合性は高いと述べている。
具体的には
[A]のカテゴリーの具体例として、政府内の決済に限定して発行されるステーブルコインに言及。コインの発行歴はオンチェーンの公開記録に結びつけられ、コインを請求・受領できる権利を持つ部署や個人のみが、換金できる仕組みとなる。また、プライバシーの面から個々の金額等を非公開にすることも、ゼロ知識証明を利用することで可能になるという。
ステーブルコインは、米ドルなど法定通貨にその価値をペッグされており、仮想通貨特有の大きなボラティリティ(価格変動性)がなく、決済目的で重宝されやすい。
また地方自治体が発行する証明書なども、安全性と検証可能性を高めるためにオンチェーンでできるようになると同氏は示唆した。
[B]のカテゴリーでは、土地や不動産の登記や、複雑な財産所有権などに関して完全に分散化することは難しい場合もあるが、その記録をオンチェーン化することで時系列での確認が容易になる利点がある。
Buterin氏は、望まれるプライバシーとセキュリティを達成するためには、高度なソリューションが必要だが、最終的には選挙もオンチェーン上(バーチャル)で行うことが可能になると予想。その場合には地方自治体が、最も適したスタート地点になると考えているようだ。
実証実験
Buterin氏は、さらにブロックチェーンを用いて限定的に実証実験を開始することで、実社会からの貴重なフィードバックが得られるとして、二つの分野を提案した。
一つは、”シティトークン”をより包括的に活用する方法で、もう一つは市民参加型のガバナンスの形態を探ることだ。
例えば、都市が繁栄することでその価値が高まるような”シティトークン”を作成する場合、次のような目的の設定が考えられるという。
- 政府の持続可能な収入源の確保
- 住民と都市の間に経済的なつながりを作る
- 利害関係者の「貯蓄と富の形成」を促進
- 都市全体の社会的な活動の奨励
- 平等主義を基盤に:ベーシックインカムの提供
ガバナンスについてButerin氏は、投票方法や課税方法の変更など、より急進的な参加型のシステムへの移行のアイディアに言及した。そしていずれの場合でも、自治体が注意すべきなのは、少数のアーリーアダプターだけに有利にならないように、さまざまなオプションを残しながら、ゆっくりと物事を進めていくことだと、同氏は結んでいる。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します