DeFi取引に必要な税金知識と損益計算方法を詳しく解説 Aerial Partners寄稿
DeFi取引で発生する税金とは?
伝統的な金融市場と異なり運営主体不在で運営されている分散型金融(DeFi)市場は、2020年後半頃から急速に拡大し利用者は1年で約5倍に急増したとも言われています。日々刻々と進化・複雑化するDeFiですが、その性質から損益計算が煩雑となりやすく、確定申告ができずに困惑する人が増えています。
そこで本記事では、DeFiにまつわる税制の大枠や、損益が発生するタイミングについて解説していきます。確定申告を行う上で必須な損益計算の流れについてもわかる内容になっているので、DeFiの取引を行っている方はぜひ参考にしてください。
DeFi税制の現在地
DeFi取引の税制については、2022年2月現在国税庁から正式に公表されていません。そのため、既存の税制や、それをつかさどる税法の基本原則に基づいて判断することになります。
なお、国税庁から公表されている「暗号資産の税務上の取扱いについて」のルールに当てはめると、DeFiで得た暗号資産取引による利益については、雑所得に区分されると考えられます。
DeFiについては、個々の取引種別毎に税法の基本原則に即した取り扱いが必要です。計算方法や判断に迷うときは、税務署や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
DeFiの取引で損益が発生するタイミング
一言でDeFiといっても、UniswapやCompound、PancakeSwapなど利用するプロトコルによって行える取引内容が異なります。ここでは、DeFiの代表的な4つの取引である「スワップ」「ステーキング・レンディング」「流動性提供」「ラップド・トークンへの交換」を例に、DeFiの取引で発生する損益が発生するタイミングを解説します。
スワップ
暗号資産同士を交換できるスワップ取引は、暗号資産を交換したタイミングで損益を計算します。例えば1ETHで3000XRPに交換した場合の損益計算は以下のように実施します。
例
2月3日 1ETH 100,000円で購入
10月21日 1ETHで3,000USDCを購入(1USDC=100円)
300,000円(USDCの購入価格 3,000USDC×100円)ー 100,000円(ETHの購入価格)
=200,000円(利益額)
上記例の場合、1ETHで3000USDCを購入(交換)した10月21日のタイミングで利益が発生します。また、利益額は購入に利用したETHの「時価 – 取得価格」の200,000円となります。
ステーキング・レンディング
ステーキングとは特定の暗号資産を保有することで、報酬を得ることができる仕組みです。身近な例だと、預金利息のイメージに近いです。一方、レンディングは暗号資産を貸し出すことで報酬(利子)を得ることができる仕組みです。
どちらの取引も、報酬を受け取る権利が確定したタイミングで利益を計算します。利益の金額は、受け取る通貨の時価となります。
流動性提供
流動性提供とはPancakeSwapやCompoundなどのDEX(分散型取引所)に、暗号資産をプールして(預けて)流動性を提供する見返りに取引手数料を報酬として受け取る仕組みです。
この流動性提供についても、本来であればスワップやステーキング・レンディングと同様に、報酬を受け取った時点で損益を認識するべきです。しかし、プールした暗号資産の残高が刻々と変化するため、報酬部分を認識するだけでは損益計算は完結せず、計算も煩雑になります。そこで、簡便的にプールした暗号資産を引き出したときに、預け入れた数量と引き出した数量の増減で損益計算する方法が考えられます。
例えば2ETHと2,000DAIをプールし、引き出したら1ETHと3,000DAIになっていたとします。この場合、2ETHから1ETHに減少した1ETHを費用、2,000DAIから3,000DAIに増加した100DAIを収益として損益計算することが考えられます。
また、流動性提供を行うと、CAKEやCOMPなどのガバナンストークンが付与されることがあります。このトークンについてはエアドロップなどと同様に、付与された時点での時価がそのまま利益となると考えられます。
ラップド・トークン
wBTCやwETHなど、異なるブロックチェーンやトークン規格でも取引が行えるように暗号資産を表現したトークンであるラップド・トークンの取り扱いについても国税庁からの見解は公表されていないため、考えられる取り扱い方法について紹介します。
ラップド・トークンの説明に入る前に、前提となる暗号資産同士の交換時の損益計算方法について確認しておきましょう。
BTCで他の暗号資産を購入するといったような、暗号資産同士の交換を行う際、購入時よりも価格が変動している場合には損益を認識します。
■BTCとETHを交換する場合
・1月1日 100万円で1BTCを購入。
・10月1日 1BTC=400万円に価格が上昇。1BTCで10ETH(1ETH=40万円)を購入した
【計算式】
400万円(BTCの時価)ー 100万円(1BTCの取得価額)=300万円(利益)
では、「BTCとwBTC」「ETHとwETH」など、暗号資産とラップド・トークンの交換時にはどのような計算が必要になるでしょうか?
BTCとWBTCでは、価格がほぼ同じになる性質とはいえ、それぞれ別のチャート(時価)が存在しており損益計算上は別の暗号資産として取り扱うと考えられます。そのため、損益計算上も暗号資産同士の交換として扱われ、交換時にBTCに含み益がある場合は利益、含み損がある場合は損失が発生する可能性が高いです。
一方で、経済的実質がBTCを担保にwBTCを借り入れている取引の場合は、交換時点で損益は発生しないと考えられます。
この点については、ルールが明文化されていない以上個別での判断が必要になるため、税理士や税務署に相談の上、確定申告を行うことをおすすめします。また、仮に将来に国税庁から正式な見解が発表され、過去の損益計算方法が間違っていたことが判明した場合は、再度損益の計算を行い、修正申告を行いましょう。
なぜDeFiの損益計算が難しいと言われているのか?
DeFiの損益計算が難しいと言われているのは、取得できる取引履歴の情報が整理されておらず、投資家自身で取引内容の整理が必要になるためです。
一般的な暗号資産取引所では、損益計算用に整理された取引履歴をダウンロードすることが可能です。例えば以下のような内容です。
取引日時:2022/01/01
・種別:売買
・増加資産(購入資産):1ETH
・減少通貨(支払通貨):40万円
取引履歴を見れば第三者でも取引の内容がわかり、国税庁から公表されているエクセルの計算書やGtaxのような損益計算ツールを利用して、年間の損益額を計算することができます。また、税理士に依頼することも可能です。
しかしDeFiの取引は以下のように計算に必要な情報が不足しています。
【履歴A】
・取引日時:2022/01/01
・減少通貨:0.1ETH
【履歴B】
・取引日時:2022/01/01
・増加通貨:10UNI(Uniswap)
【履歴C】
・取引日時:2022/01/01
・増加通貨:0.01ETH
【履歴A】、【履歴B】はスワップで0.1ETHと10UNIを交換した取引ですが、履歴が2つに分かれそれぞれが紐付けられていません。また【履歴C】はステーキングによる報酬ですが、0.01ETHを受け取ったという事実しか記載されておらず、第三者からみるとステーキング報酬によってETHを受け取ったということがわかりません。
DeFiはスワップやステーキングなど様々な取引を実施できるにも関わらず、取得できるのは基本的に暗号資産の入出金データのみです。そして、入出金データだけでは入出金の背景となる取引内容を把握することができません。場合によっては数千件、数万件にものぼる取引について、すべて内容を覚えておくことは困難でしょう。
DeFiの損益計算を行うには
DeFiの損益計算の流れは主に2つに区分されます。それは「取引を記録し整理する」「整理した履歴をもとに損益計算を行う」です。
1. 取引を記録し整理する
DeFiの損益計算をするためには、全ての取引内容を自分で記録し整理することが大切です。取引が記録されていないと、正確に計算を行うことが難しくなります。言い換えると、DeFiの取引がしっかりと記録されていれば、損益計算はそこまで難しくありません。
先述したようにDeFiの取引では、詳細な取引履歴を取得できない特徴があります。そのためDeFi取引を行う場合、行った全ての取引を投資者自身で記録する必要があります。
記録方法にルールはありませんが、後で見て取引の内容がわかるように、以下の情報は記録しておきましょう。
【記録しておきたい情報】
- 取引日時
- 取引の種類(スワップ、ステーキング、etc…)
- 増えた通貨
- 減った通貨
- 手数料
2. 整理した履歴をもとに損益計算を行う
DeFiの損益計算を行う際は「①国税庁の暗号資産の計算書を利用する」「②Gtaxなどの損益計算ツールを利用する」「③税理士へ依頼する」の3つの方法があります。「①国税庁の暗号資産の計算書を利用する」は無料で利用できますが、難易度が非常に高くなる、もしくは計算できない場合があるため、おすすめできません。そのため以下の2パターンを推奨します。
損益計算ツールを利用する
損益計算ツールを利用すると、DeFiの損益計算が可能です。Aerial Partnersが提供する「Gtax」では、DeFiの取引に対応しているため、行った取引をしっかりと記録できていれば、計算作業を効率化することができます。
しかしすべての作業を自動で行えるわけではなく、追加の情報を手動で登録する作業が必要になる場合があるため、取引の記録・管理が重要となります。
損益計算ツール「Gtax」の詳細はこちら
税理士へ依頼する
損益計算ツールの計算が難しい、手間を省きたい方は税理士に依頼する方法もあります。しかし、DeFiの損益計算に対応できる税理士は非常に少ないため、早めに動き出すことが大切です。
税理士へ依頼する場合、取引所の履歴を持参しただけでは詳細な取引の内容が不明なため損益計算が困難です。そのため、先ほどと同様にDeFi取引の記録・管理が重要になってきます。税理士に依頼するときは、取引履歴に加えて投資家自身が記録した情報を提示するといいでしょう。
まとめ
DeFi取引の税制は2022年2月現在、国税庁から正式に公表されていませんが、通常の暗号資産の取引と同様に、その所得は雑所得に区分されると考えられています。DeFiでは管理者なしでスワップやステーキングなど様々な取引を行うことができるため、新しい金融システムとして注目されている一方、税金・確定申告まわりの環境はまだまだ整備されていない状況です。
面倒だからといって確定申告を怠ると加算税などの罰則を受ける場合があります。Gtaxのような損益計算ツールを活用することで損益計算の作業を効率化することができますので、一定以上の利益が出ている場合は必ず確定申告を行いましょう。
仮想通貨の損益計算サービス「Gtax」を提供する株式会社Aerial Partnersが、NFT取引にかかる税金とその計算例を寄稿で紹介・解説。企業情報
企業名:株式会社Aerial Partners
設立:2016年12月27日
代表者名:沼澤 健人
グループ会社:Aerial法律事務所/Atlas Accounting/税理士法人堀口会計
運営サービス:Gtax(ジータックス)、Guardian(ガーディアン)
事業概要:仮想通貨損益の自動計算ソフト『Gtax』、税理士紹介&仮想通貨取引の損益計算サービス『Guardian』などの開発
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