反響広がる仮想通貨関連「米大統領令」、政府関係者や有識者らの見解は?
仮想通貨の大統領令、有識者の見解まとめ
米バイデン大統領は米時間9日、財務省や司法省など15以上の政府機関に対し、暗号資産(仮想通貨)の調査などを命じる大統領令(行政命令)を発表した。
CBDC(中銀デジタル通貨)を実装した際の影響やリスクについての分析も含めて指示しており、米国内の仮想通貨規制の明確化に向けて、ようやく米政府が動き出したとみる声も少なくない。
米政府の高官や仮想通貨規制に向けたロビー活動を行う業界団体など、有識者の見解をまとめた。
米国の動きを受け、日本国内では自民党の塩崎あきひさ議員が、衆議院の財務金融委員会の質問に立つことを告知。自民党のデジタル社会推進本部本部長代理でNFT(非代替性トークン)プロジェクトチームをけん引する平将明議員も言及した。
明日、11日(金)13時00分〜13時15分に行われる。
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同議員は、NFTなどブロックチェーンエコノミーに関する提言に関係するなど、デジタル金融分野のキーパーソンの一人とされる。
米政府機関トップの見解
イエレン財務長官は、今回の大統領令が「歴史的」なものだとコメント。「より公正で、包括的かつ効率的な金融システムを促進しつつ、違法金融や金融安定リスク、そして国家安全保障リスクの削減に努めていく」とした。
なお、財務省は大統領令の正式発表に先駆けて声明を発表。これまで憶測が飛び交っていた大統領令が今週発表されることが確定したとして、注目を集めていた。
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SEC(証券取引委員会)のゲリー・ゲンスラー委員長は、「政府機関と連携していく事に期待している」と言及。投資家保護や違法犯罪の防止、金融的な安定の保証に努めていくとコメントした。
仮想通貨推進派議員の見解
一方で、仮想通貨推進派で米議会のブロックチェーン党員集会会長の一人を務める共和党派のTom Emmer議員は現政権のこれまでの仮想通貨コミュニティに対する規制対応を踏まえると、今回の大統領令が「オープンでパーミッションレスな技術を優先する仮想通貨政策で世界をリードする重要性を十分認識した結果をもたらす可能性は低い」と悲観。
仮想通貨やブロックチェーン、NFT(非代替性トークン)やスマートコントラクト、ステーブルコインなど個人の自由を尊重するイノベーションを促進するための戦略策定が不可欠だとコメントした。
また、大統領令では仮想通貨界隈で重要視される「分散化」に関する言及が皆無であると指摘。経済の分散化は全ての米国市民が経済状況に関わらず、大手IT企業や政府に頼らずとも自分自身の将来を決める環境を作り出すため、より強調されるべきだと主張している。
ただ、仮想通貨企業に対して厳しい姿勢をとってきたゲンスラー委員長率いるSECのインプットが少ないのは及第点であると評した。
しかし、米国が世界の舞台でリーダーシップを維持するのは重要であるとコメント。米国内の仮想通貨コミュニティを維持するために、超党派の解決策を見出す努力を続けていきたいとした。
同じく、仮想通貨推進派として定評のあるCynthia Lummis議員はバイデン政権の仮想通貨に対する関心の向上を評価しつつ、大半の仮想通貨ユーザーは犯罪者ではないと反論。仮想通貨の犯罪利用を過度に懸念する規制ではなく、思慮深い政策方針がカギになると語った。
また、最終的にこのような仮想通貨規制を決定する権限は米議会にあるとして、実質的な政策の策定に向けて議論を進めていくべきだと述べた。
業界ロビー団体の見解
また、米国における仮想通貨・ブロックチェーン業界のロビー団体であるブロックチェーン協会は9日、大統領令を歓迎する公式声明を発表。バイデン政権とともに、業界の調査や政策を定める上で、連携していく姿勢を示した。
さらに、今回の大統領令は仮想通貨エコシステムが米国経済に必要不可欠な部分になっていることを証明する事例だと説明。業界との連携を促した。
ブロックチェーン協会は米国の首都であるワシントンDCに拠点を置くロビー団体。加盟企業は80を超えており、チェイナリシスやコンセンシス、グレースケールやクラーケン、リップル、ユニスワップなど多数の大手プロジェクトが参画している。
また、21年4月に新設された業界団体「Crypto Council for Innovation」(CCI)は長らく課題とされてきた「仮想通貨規制の明確化」につながる動きとして大統領令を歓迎。バイデン政権のより公正で包括的な経済に向けた金融インフラへのコミットメントに賛同を示し、規制当局と連携していくことに期待を示した。
さらに、業界シンクタンクCoinCenterのディレクターであるJerry Brito氏は大統領令は「連邦政府が仮想通貨を米国経済、そして社会の正当で重要な一部であることを認めた」ことを示すと分析。
Brito氏は政府関係者の中でも、仮想通貨のもたらすリスクだけではなく、リスクを低下する手段があり、将来性を評価する層がいると説明。落ち着いて分析すれば、政府も仮想通貨は保護して、促進していくべきイノベーションであることを認めていると述べた。
また、ホワイトハウスの調査から開始するアプローチは一部議員の仮想通貨に対する真っ向から反対する姿勢と対照的であると考察。真剣に仮想通貨について取り組んでいく政治家との対話を望むとコメントしている。
米民主党からは仮想通貨に懐疑的な姿勢を示す議員も一部おり、2020年の大統領選で立候補したエリザベス・ウォーレン議員はロシアの仮想通貨を利用した制裁逃れを防止する法案を提出した。
業界有識者の見解
大手ステーブルコインUSDCの運営企業である米サークル社のJeremy Allaire CEOは今回の大統領令が「仮想通貨やWeb3.0業界にとって大きな分岐点」であると考察。米政府がインターネット技術を受け入れ始めた1996年〜97年の時期に擬え、「今こそ仮想通貨企業は政策立案者と対話を行う機会だ」と語った。
また、米国は現在、地政学的にも歴史的にもターニングポイントにあり、オープンでインターネットネイティブな経済インフラに傾注する機会があると分析。米政府が仮想通貨が21世紀で最も重要な技術であることを認めていると評した。
なお、サークル社は上述のブロックチェーン協会の初期メンバーでもあり、Allaire氏は「9年来の努力がようやく実り、ホワイトハウスがこのような発表を行ったのは非常に嬉しい」と述べた。
また、ステラ開発財団のDenelle Dixon CEOは「本日の大統領令は業界にとって大きなマイルストーン」となったとコメント。ホワイトハウスが仮想通貨規制に直接対処して、政府全体の連携を促すのは初となるため、これが規制の明確化につながることに期待を示した。
また、仮想通貨のもたらすリスクと機会を特定する上で、業界団体の賛同は必要不可欠であると言及し、政府との連携していくと述べた。
仮想通貨分析企業Messariの創設者であるRyan Selkis氏は、「最も重要な締め切りは違法金融(ランサムウェア)やKYC(顧客確認業務)やAML(資金洗浄対策)に関するリスクに関する調査である」と指摘。
財務省は90日(6月9日)から120日後(7月7日)に調査報告書や提案などをを提出する義務があると説明した。
また、仮想通貨規制における国際的な連携は自主カストディウォレットやビットコインのマイニング(採掘)、トラベルルールの遵守、P2PのDeFi(分散型)規制なども想定されると分析。
こうなった場合、米国政府だけではなく、G20主要国と争う(規制について提言する)必要が生まれるため、業界関係者は今後さらなる活動を行うことになるだろうと語った。
さらに、米ロビー団体のブロックチェーン協会のポリシー責任者であるJake Chervinsky氏は「全体的にいい内容だった」とコメント。これまでは、過度な規制や新たな制限の設立が懸念されていたが、過度な規制や新たな制限の設立が懸念されていたが、そういった内容はなかったため大統領令を危惧する必要はもうないと述べた。
CBDCに関する内容は多かったものの、最終的には米国にとって合理的であるかがカギになると分析。現段階では、米国がCBDCを実装する決断には至っていないと強調しつつ、最終的には発行という決断に至る可能性は低いと予想した。
ただ、仮想通貨税制における疑問が多く残る中で、全く言及がなかった点は問題であると指摘した。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します