欧州中銀理事、仮想通貨の規制強化に世界レベルの協調を要請 P2P決済も対象に
デジタルゴールドラッシュ
欧州中央銀行(ECB)のファビオ・パネッタ(Fabio Panetta)専務理事は25日、暗号資産(仮想通貨)について米コロンビア大学で講演。現在の仮想通貨市場の隆盛を「貪欲と無法」に満ちた米国の西部開拓時代になぞらえ、厳しく批判した。
仮想通貨は、世界的な金融危機の中、銀行に対する不信感の高まりと技術革新が相まって生まれた「デジタルゴールドラッシュという新しい夢」であると、パネッタ氏は評している。
西部開拓時代、米国の一部の州では新たな銀行法により、銀行開設要件が緩和された結果、「疑わしい資産」を裏付けに独自の銀行券を発行する、いわゆる「山猫銀行」が出現した。その多くが債務不履行に陥り、銀行に対する信頼が損なわれたという歴史に同氏は言及した。
またパネッタ氏は、「仮想通貨市場の規模は今や、世界金融危機の引き金となったサブプライムローン市場(166兆円≑1.3兆ドル)を凌いでいる」と指摘。
規模だけでなくそのダイナミクスも非常に類似しているため、同じ過ちを繰り返さないためにも、明確な規制の枠組みの中でのみ、仮想通貨は使用されるべきだと主張した。
加えて「社会に大きな損害をもたらす可能性のある投機的資産」に対しては、グローバルレベルで協調した規制措置が必要だと訴えた。
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規制で重視すべき点
パネッタ氏は仮想通貨に対する規制整備の上で特に重要な点として、次の四つを取り上げた。
1. 他の金融システムと同基準で管理する
- 金融活動作業部会(FATF)が定めた基準に基づき、マネーロンダリングやテロ資金供与を防止
- P2P(ピアツーピア)送金もその範囲に含めることを目指す
2. 仮想通貨への適切な課税方法を検討する
- 仮想通貨のグローバルな性質を考慮し、法域を超えた整合性を目指す
- 一定の閾値以上の取引に報告義務を導入=経済協力開発機構(OECD)の提案
- 環境への配慮から、PoWベースの仮想通貨などに、さらなる課税の可能性も
3. 情報公開と規制当局への報告義務を強化
- ステーブルコインの準備資産の開示方法を改善する
- 金融機関に対する強制的な開示要件の導入
4. 投資家保護対策の導入
- 厳格な透明性の要件を仮想通貨運用企業に課し、行動基準を定める
さらなる規制が必要
パネッタ氏は、暗号資産市場規制(MiCA)の制定などにより、欧州は仮想通貨規制で先導的な役割を担っていると認識する一方で、現在の欧州の規制措置は十分ではないと考えているようだ。サービスプロバイダーを介さない活動にも焦点を当てる必要があると、次のように述べている。
オンチェーンでのピアツーピア決済は、あらゆる規制を回避するために利用される可能性があるため、規制されないままにしておくわけにはいかない。
しかし、同氏は国際協調なしにECBの対策は効果を発揮しないとして、仮想通貨から生じるリスクに対処するため、グローバルな政策フォーラムの創設を呼びかけた。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します