ブラックロックとシタデル、ステーブルコインUSTの取引を否定 相次ぐ大手VCの取引否定ツイート
相場関与の噂を否定
世界最大級の米資産運用企業ブラックロック(BlackRock)は12日、米ドルと大幅な乖離が生じたステーブルコイン「テラUSD(UST)」について、同社がその崩壊に関与していたという噂を全面的に否定。USTの取引は行っていないと強調した。
ツイッター上で噂として広まったのは、「ブラックロックと大手ヘッジファンドのシタデルが共同で、仮想通貨取引所Geminiから10万BTCを借りてUSTを購入した上で、USTを大量売却し、市場を崩壊させた」というもの。そして、USTの原資産である仮想通貨LUNAの市場価値3.2兆円(250億ドル)を壊滅させたとの非難が集中していた。
Geminiは、上記のような「ストーリー」は認識しているが、融資を行った事実はないと否定している。
また、大手ヘッジファンドのシタデル(Citadel)は、米フォーブスにUSTの取引を行っていないという内容のメールを送付し噂を否定した。
ブラックロックは、米サークル社と大手取引所コインベースが管理するステーブルコインUSDC(USTのライバル)の準備資金の主要管理者である。4月には、サークル社の資金調達ラウンドに、他3社と共に、500億円(4億ドル)規模の戦略的投資を行った経緯がある。
関連:USDC発行企業Circle、500億円を資金調達へ ブラックロックら4社が出資
ステーブルコインとは
ステーブルコインは暗号資産の一種で、BTCやETH、XRPなど変動性のある資産とは異なり、米ドル等に裏付けられその価値($1)を保つことが目的だ。米ドルの裏付けによるステーブルコイン(USDT・USDC)のほか、DAIやUSTといったアルゴリズムを利用するステーブルコインもある。USTは発行に担保を必要としない「無担保型のステーブルコイン」に分類される。
▶️仮想通貨用語集
テラ関連ファンドをサイトから削除
米仮想通貨投資会社Arrington Capitalは、UST預金に安定利回りを提供する「Ahchor」の関連ファンドに関する言及をウェブサイトから削除した。
昨年11月に発表された130億円(1億ドル)規模の「Arrington Anchor Yield Fund」はArrington Capitalのパートナーとテラを開発するTerraform Labs社が支援していた。
高利回りのAnchorに対しては持続可能性に疑問の声もあり、今年2月には利回り準備金の急激な減少を補うため、Terraform Labs社のDo Kwon共同創設者が約580億円(4億5000万ドル)のUSTを補填していた。
Arrington Capitalの創業者Michael Arrington氏は、削除の理由について今後、同商品に対する需要の減少が見込まれるためだとしている。
相次ぐUST取引否定宣言
仮想通貨市場に激震を与えたテラのステーブルコインUSTと暴落したネイティブトークンLUNAとの関与を否定するツイートが相次いでいるようだ。
DragonflyやMulticoin Capital、Framework(ベンチャーキャピタル)などが次々に「LUNAとUSTのエクスポージャーはない」と発言。NFT発行者やDAO(分散型自立組織)などもこのトレンドに加わった。
仮想通貨ジャーナリストのLaura Shin氏は、テラ・プロジェクトに投資していた「仮想通貨界の大物投資家が面目を失った」とツイート。そして、その投資家の後ろ盾は仮想通貨ベンチャーキャピタルの「紳士録」に乗るような有力企業だと指摘し、「間違いなく大きな影響がある」と述べた。
その後のツイートでShin氏は「信頼された投資家がバックについているプロジェクトが、見事なくらいに失敗したら、規制につながる」と「大きな影響」について説明した。
USTの暴落を受け、ステーブルコインに関する規制の議論も高まってきている。
9日に米連邦準備制度理事会がステーブルコインの構造的リスクに対する警告を発したのに続き、ジャネット・イエレン米財務長官は10日、上院銀行委員会で、1ドルの価値を維持できなくなったUSTの事例を取り上げた。金融安定性や決済システム、市場の完全性への影響等のリスクを鑑み、ステーブルコインの規制を2022年末までに法制化すべきだと主張した。
関連:米イエレン財務長官「ステーブルコインの規制は22年末までに法制化すべき」
画像はShutterstockのライセンス許諾により使用
「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します