ステーブルコインのリスクに警鐘
米国のジャネット・イエレン財務長官は10日、ステーブルコインに関する規制を2022年末までに法制化すべきだと主張した。
米ドルからのディペッグが発生している渦中のステーブルコイン「テラUSD(UST)」が1ドルの価値を維持できなくなった事例を挙げ、金融安定性や決済システム、市場の完全性への影響等のリスクに言及し、ステーブルコインの法制化は急を要すると述べた。
イエレン財務長官は10日に上院銀行委員会の会議に登壇。規制等に関する質問を各議員から受けた際に、大きな影響力を持つ企業が発行するステーブルコインに需要が集中した場合の影響にも懸念を示した。
今回の証言でイエレン財務長官が引き合いに出したUSTは10日、一時的に前日比で50%近く下落。本記事執筆時点では0.87ドル付近まで値を戻しているが、USTの価格維持に使われるLUNAトークンの時価総額がUSTの時価総額を下回ったことが懸念を招くなど、暗号資産(仮想通貨)市場全体にも影響を与えた。イエレン財務長官は今回の事例について、「ステーブルコインはプロダクトとして急成長しているが、急激にリスクも高まっている」とコメントした。
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また、仮想通貨全体についても多くのリスクがあるとの考えを示し、財務省は近く、仮想通貨とステーブルコインに関する包括的なレポートを公開すると語った。なお、財務省は3月に発令された仮想通貨関連の大統領令で仮想通貨やステーブルコインに関するレポートの提出を義務付けられていた。
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ステーブルコインを巡る米国の動向
米国では3月、バイデン大統領が仮想通貨に関する大統領令(行政命令)に正式に署名。リスクへしっかりと対応しながら、デジタル資産や基盤技術の潜在的なメリットを活用するというのが米国のアプローチであることを示した。
その際、財務省や司法省など15以上の政府機関に対し、仮想通貨の調査などを命じており、財務省が近くに公開するレポートは、大統領の作業部会からの指示に従って作成するものだという。
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米国では9日、米連邦準備理事会(FRB)も金融安定性に関する最新報告書の中で、ステーブルコインの構造的な脆弱性により、取り付け騒ぎが発生するリスクがあると警告。ステーブルコインは、3月に時価総額が約23兆円(1,800億ドル)を超えるほど1年で急速に成長したが、金融ストレス時に「価値を失ったり、流動性が低下する可能性のある資産」に裏付けられているなどと指摘した。