メタ社の元開発責任者、新たなビットコイン事業を設立 有力投資企業が支援
ステーブルコイン開発からビットコインへ
米メタ社(旧フェイスブック)を昨年11月に退任したデービッド・マーカス氏は12日、新たに「ビットコインの機能と実用性を探求し、構築、拡張する」新会社「Lightspark」(ライトスパーク)の設立を発表した。
初めの一歩として、「ライトニングネットワークを深く掘り下げるため」のチーム作りに尽力するという。
マーカス氏はメタ社のステーブルコイン「ディエム」(旧称リブラ)の開発を主導していたが、昨年11月末、「起業家であり続けたいという思い」が無視できなくなったとして、同氏はメタ社を去る決意を発表した。
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Financial Timesの報道によると、同氏の退任と同時に、ディエムのエンジニアや法務チームなど、多くの主要メンバーもメタ社を退職したという。そのうち数人は大手ベンチャーキャピタルのアンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)の暗号資産(仮想通貨)部門に移籍したと仮想通貨メディア「Crypto Briefing」は伝えている。
ライトスパーク社の資金調達ラウンドは、そのa16zと仮想通貨・Web3.0関連のプロジェクトに投資する大手VCの「Paradigm」が主導し、ThriveCapital、Coatue、FelixCapital、RibbitCapital、MatrixPartners、Zeev Venturesなどが参加する予定。なお、資金調達の目標額等は明らかにされていない。
起業家としてのマーカス氏
マーカス氏は、のちにペイパルに買収されたモバイル決済ネットワーク「Zong」を起業したことで知られる。同氏はペイパルでモバイル決済部門を統括した後、社長に就任。メタ社には2014年に移籍し、フェイスブックメッセンジャーや決済関連の開発を統括した。
2019年6月には、複数の法定通貨を裏付け資産とする「バスケット型」グローバルステーブルコイン「リブラ」の開発を担うことになる。
しかし、リブラプロジェクトは米国議会にとどまらず、G7及びG20の財務相・中央銀行総裁会議でも、通貨主権問題を含む金融システムの安定性への影響が大きく問題視され、プロジェクトは大幅な変更を余儀なくされた。マーカス氏は米上院・下院の公聴会で証言を行い、議員からの鋭い批判の矢面に立たされた。
2020年12月、リブラはディエムと改称し、単一の通貨に連動するステーブルコイン・プロジェクトとして再スタートしたものの、最終的にディエムの知的財産権(IP)は今年2月、仮想通貨銀行のシルバーゲート銀行に売却され、メタ社の手を離れた。
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ビットコインへの回帰
メタ社を去るにあたり、マーカス氏は「決済や金融システムの変革の必要性についての情熱は変わらない」と述べていた。
ライトスパーク社の幹部には、マーカス氏と共にディエムを開発したマサチューセッツ工科大学教授のクリスチャン・カタリーニ氏(最高戦略責任者)、Novi(ディエム専用のウォレット)プロジェクトのエンジニアリング副社長であったジェームス・イヴェリンガム氏、同じく最高運営責任者であったトーマー・バレル氏が名を連ねている。
グローバル・ステーブルコインを目指した「リブラ」の夢は潰えたが、同氏の金融システム改革の情熱は、新たに設立したライトスパーク社で、国境を持たないビットコインの可能性に賭けることで進化していくのかもしれない。
マーカス氏は仮想通貨市場が打撃を受けている現状について、「(市場の)低迷期は、同じミッションを持った人々と、価値を構築し創造することに集中する良い時期だ」と述べている。
a16zでスタートアップへの初期投資を行うシリラム・クリシュナン氏は、ライトスパーク社への投資にあたり、次のようなコメントを寄せた。
我々は常にビットコインのユニークな歴史と仮想通貨の役割を信じており、ビットコイン上に構築するチームを支援しようと探していた。デービッド・マーカスと彼が組織したライトスパーク・チームは、ビットコインとライトニングネットワークに刺激的な新しい技術的革新をもたらすことができると期待している。
ライトニングネットワークとは
ビットコインのトランザクション処理能力を向上させるためのオフチェーン技術のこと。取引の高速化や手数料削減が実現すれば、少額決済が行えるようになるため、新しい商品やサービスが生み出されることも期待されている。
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