米パウエル議長ら、DeFiやステーブルコインへの対応を語る
仮想通貨やDeFiへの対応方針
欧州中央銀行(ECB)のクリスティーヌ・ラガルド総裁、米連邦準備制度(FRB)のジェローム・パウエル議長、国際決済銀行(BIS)のアグスティン・カルステンス総支配人は27日、フランス中銀が主催したイベントに登壇し、暗号資産(仮想通貨)規制について議論した。
ラガルド総裁は、今ではPayPal、Visa、Mastercardなどの大手企業も仮想通貨に参入しており、そうした需要に対処するべき時だと述べる。仮想通貨により、金融システムを安定させる中央銀行の役割が弱まるリスクもあるとしており、そうした役割を維持するための対応が必要だと続けた。
特に、「もし私たちが中央銀行デジタル通貨(CBDC)の面で、実験、革新に参加しないなら、中央銀行は金融システムのアンカー(安定させるもの)としての役割を失う危険がある」と発言。CBDCのプロジェクトを重視する姿勢を示している。
デジタルユーロについて
欧州のCBDCであるデジタルユーロについては、欧州委員会の金融安定・金融サービス・資本市場同盟担当委員メイリード・マクギネス氏も、同じイベントで言及していた。
マクギネス氏は「デジタルユーロは、欧州全域の人々や企業に新たな決済手段を提供することになるだろう。オンライン決済、オフライン決済、ピアツーピア決済、その他多くの新しいオプションが検討されている。民間主導の決済ツールを補完するものであり、代替するものではない」と述べた。
また、欧州委員会は2023年に、デジタルユーロの原則を規定する法案を提出する予定だと続けた。その後、この法案について欧州議会と理事会が議論し、修正する機会を持つことになるとしている。
マクギネス氏は「この法案は、ECBによるデジタルユーロの発行を実現する前に必要なステップになる」とも話した。
CBDCとは
各国・地域の中央銀行が発行するデジタル化された通貨を指す。「Central Bank Digital Currency」の略である。仮想通貨との大きな違いは、CBDCは法定通貨であること。通貨の管理や決済等においてコスト削減や効率性向上が期待できる一方で、個人情報やプライバシーの保護、セキュリティ対策、金融システムへの影響など考慮すべき課題は多い。
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DeFiへの対応
国際決済銀行(BIS)のカルステンス総支配人はDeFiの課題を挙げた。
DeFiは借り入れや貸し出し、取引を容易にする機能を持つ一方、リスクに対応するインフラがないとする形だ。DeFiは、従来型金融に存在してきたリスク(流動性やカウンターパーティーのリスク、レバレッジリスクなど)に同様にさらされているが、それに対処するための構造がないとする。
そのために、DeFiは安定性について担保に依存しており、担保として使われることの多いステーブルコインはDeFiにおける潤滑油になっていると続けた。
しかし、カルステンス氏は担保が効果的でないこともしばしばだと指摘。DeFiは取引所に活動を依存しているが、それらの取引所は、多様な活動を適切に分離していない、適切なガバナンスを行っていないなどの問題を抱えている場合があると続けた。
DeFiがもたらす利便性を認識しつつ、当局がDeFiに適切に対応していくことが必要で、特に従来型金融と接点がある部分はリスクになると話している。
DeFi(分散型金融)とは
ブロックチェーンを活用し、中央管理者不在の状態で行われる金融サービス、またはそのシステムを指す。「Decentralized Finance」の略。DeFiで行われる金融サービスには、ステーブルコインの発行や通貨の貸出、仮想通貨取引所などがある。イーサリアムのブロックチェーンを利用しているプラットフォームが多い。
▶️仮想通貨用語集
FRBのパウエル議長も、カルステンス氏の発言を受けてDeFiに言及した。
パウエル氏は「金融安定性の観点から見ると、DeFiエコシステムと伝統的な銀行システムとの間の相互作用は、現時点ではそれほど大きくない」ために、まだ対応するための時間があるとしている。
しかし、「こうした状況がいつまでも続くわけではない」として注意を向けておく必要があり、「DeFiが拡大し、より多くの個人顧客がこれを使い始めた際には、より適切な規制が実施されることが必要だ」と指摘した。
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