世界の投資家が注目する米金融政策決定会合「FOMC」とは|分かりやすく解説

FOMCとは

暗号資産(仮想通貨)市場は22年9月現在「冬の時代」と呼ばれ、昨年の強気相場とは一転して低迷期のサイクルに入りました。コロナ禍の金融緩和で流入したマネーは、米国や欧州などで進められる金融引き締めに伴って逆回転し、現在のマクロ経済の動きは、株や仮想通貨などリスク資産にも逆風となっています。

仮想通貨市場は最近、株式市場等と相関性が高まっています。株式市場などが米国の金融政策の影響を受ける中、仮想通貨投資家も一段と米国の中央銀行の動向を注視するようになりました。

米国の金融政策において、世界の投資家が最も注視しているイベントが米連邦公開市場委員会(FOMC)です。本記事では、FOMCについて解説していきます。

なお、22年9月20日〜21日開催のFOMCでは、金利が+0.75%と引き上げられることが決定されました。

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FOMCの概要

FOMCとは「Federal Open Market Committee」の略で、日本語では「連邦公開市場委員会」と呼ばれています。FOMCは米国の金融政策を担う最重要機関。12人の主要メンバーで構成されており、通常は会合を年に8回開催します。世界一の経済大国である米国の金融政策を決定するFOMCの会合は、金融市場に大きな影響を与えることが多いため、投資家が注目する重要イベントです。

12人のメンバーは、米連邦準備理事会(FRB)の理事が7名、ニューヨーク連邦準備銀行の総裁が1名、他地域の連銀の総裁4名で構成されています。ニューヨーク連銀以外の総裁は、1年ごとに交代で所属する仕組みです。

なお、米国における中央銀行は、米連邦準備制度(FRS:Federal Reserve System)とされています。「日本銀行」のような名前ではなく、「連邦準備制度」という名称が中銀となっていることに違和感を覚えるかもしれませんが、公式ウェブサイトには以下の図が掲載してあります。

出典:FED

1番上の中銀(Central Bank)に相当するのは連邦準備制度、上から2番目の重要組織(Key Entities)にFRB、12の地区連銀、そしてFOMCが据えられています。

メディアなどではFRBを中銀と表現していることも多いですが、公式ウェブサイトに従うと、中銀に相当するのは連邦準備制度。そして、連邦準備制度を運営するのがFRB、地区連銀、FOMCという位置付けです。

なお、画像の3層目には、連邦準備制度の鍵となる5つの役割を記載。ここに記載されている役割は以下の通りです。

  • 金融政策の実行
  • 金融システムの安定
  • 金融機関の監督と規制
  • 支払いや決済のシステムにおける安全性と効率性の向上
  • 消費者保護と地域開発の促進

連邦準備制度がこれらの内容を実現できるように、FOMCでは金融政策を議論・決定しています。

FRBについて

本節では、FOMCに大きく関与し、「米国の中銀」と表現されることもあるFRBをご紹介していきます。

FRBは米国の首都ワシントンにある組織で、連邦準備制度の管理機関です。米大統領が指名し、その後に米上院に承認された7名の理事が運営します。連邦準備制度におけるFRBを責務を大きく分類すると、以下の2つです。

  • 12の地区連銀の運営を監督する
  • 消費者や各地域の声が中銀に届くようにする

役割を細かく見ると、地区連銀が預金金融機関らに貸付を行う際や、政府と預金金融機関に金融サービスを提供する際に、FRBが指導・指示・監督を行います。また、地区連銀による各金融機関の調査・監督を監視したり、地区連銀の予算を承認したりもしています。

現在FRBの理事は以下の7名。FRBのトップとされる「議長」には、ジェローム・パウエル氏が就いています。FRB理事の任期は14年で、議長と副議長の任期は4年。パウエル氏は2022年5月、FRB議長として2期目の任期を開始しました。

出典:FED

FRBは、連邦準備制度の管理機関であること、12の地区連銀を監督していることなどから、中銀と表現されることが多いと見られます。また、FOMCが開催された後には会見が行われますが、この会見をFRB議長が担当。FOMC後のFRB議長の会見は世界中の投資家が注目しており、金融の専門家は細かい文章表現の変化にも注意しています。

FOMCの金融政策

本節からは、FOMCが具体的に何をしているのかをご紹介していきます。

まず、米国の連邦準備制度に求められていることは「強い経済を推進すること」です。特に米議会は以下の3つを連邦準備制度に要求しています。

  • 雇用の最大化
  • 物価の安定
  • 長期金利の調整

その上で、物価が安定していれば長期金利も適切な水準に維持されることから、連邦準備制度の目的は、「雇用の最大化」と「物価の安定」の2つ。この2つ(=dual)の指令(=mandate)は、連邦準備制度の「Dual Mandate(デュアルマンデート)」と呼ばれています。

連邦準備制度が雇用の最大化と物価の安定を目標にしているため、金融政策を決定する際には、雇用統計や米消費者物価指数(CPI)などの指標が重要視されています。そのため、投資家はFOMCだけでなく、こういったFRBの金融政策に強く影響を及ぼす指標にも注目しています。

連邦準備制度におけるFOMCの一番の責務は、「連邦公開市場委員会」の名前の通り、「公開市場操作」です。公開市場操作とは、米国に限られた取り組みではなく、各国・地域の中銀が公開市場で、有価証券の売買を行うことを指します。

この有価証券の売買を通して、中銀にある通貨の供給量を調整。中銀の通貨の供給量が変われば市場に、最終的には市中に供給される通貨の供給量が変化します。中銀が有価証券を購入すれば市中に供給される通貨が増え、売却すれば通貨が減る仕組みです。

結果的に中銀が有価証券を積極的に購入すれば、市場に出回る通貨の供給量が増加。通貨が増加することで金利が下がります。金利が下がると企業や個人がお金を借りやすくなって通貨の流れが活発化するので、物価に上昇圧力(インフレ圧力)がかかります。

この手法は「金融緩和」と呼ばれ、新型コロナウイルスのパンデミック発生以降では、経済を支えるために各国が金融緩和を実行していました。

逆に、中銀が有価証券を積極的に売却すれば、通貨の供給量が減少し、金利は上昇。金利が上がると企業や個人がお金を借りにくくなって通貨の流れが抑制されるので、物価に下落圧力(デフレ圧力)がかかります。

この手法は「金融引き締め」と呼ばれており、2022年現在は2020〜2021年までとは打って変わって金融引き締めを加速させています。

背景には、大規模金融緩和の反動のほか、ロシアとウクライナの戦争及び欧米諸国による経済制裁でエネルギー価格上昇などの資源高をもたらした影響があります。22年6月のCPI(米消費者物価指数)発表では、40年ぶり水準の上昇率となる前年同月比9.1%を記録しました。

中銀にとって公開市場操作は、金融政策における重要手段の1つ。連邦準備制度の公式ウェブサイトでは、FOMCの公開市場操作に加え、FRBの責務である「ディスカウントレートの設定」と「預金準備率の設定」の3つが、米中銀の金融政策の手段であると説明しています。

FRBの責務

米国の金融政策に大きく関係してくるため、本節ではFRBの責務であるディスカウントレートと預金準備率の設定についても簡単にご説明しておきます。用語の意味は以下の通りです。

  • ディスカウントレートの設定:中銀が金融機関に貸し付けする際の金利を設定すること
  • 預金準備率の設定:預金金融機関が維持しておく必要のある残高の割合を設定すること

FRBはこういった数字を細かく調節し、市中に出回る通貨の量を調節したりして、米経済が安定するように努めています。

これらに加え、FOMCにはもう1つ重要な仕事があります。それは「Federal Funds Rate(FFレート)」と呼ばれる金利の設定です。FFレートとは、中銀に預け入れる準備金が不足している預金金融機関が、余剰の出ている預金金融機関に資金を借りる時に適用される金利のこと。FOMCに関する報道等で「政策金利」という場合は、FFレートを指しています。

FOMCでは雇用や物価等の状況を考慮しながら、経済力強化のために、こういった政策を議論・決定しています。

FOMCの議論内容

それでは続けて、実際にどんなことが議論・決定されているか、前回の22年7月開催のFOMCを振り返ってみましょう。

なお、本節では7月を例にしますが、FOMCで議論される内容は、その時の経済状況等で大きく変わります。米国では今、コロナ禍に行った過去最大規模の金融緩和の後、金融引き締めを行っており、ロシアのウクライナ侵攻の影響も受けている物価高騰(インフレーション)に対して対策を講じています。

インフレ対策には金利を上げるという手段をとりますが、ただ上げればいいというわけではありません。1回の利上げ幅を大きくすると景気が悪化する(市場が動揺する)という副作用があるため、絶妙なさじ加減が必要です。

FOMCは基本的に開催から約3週間後に議事録が公開され、細かい内容も知ることが可能ですが、本記事では、上述した数値に焦点を当てます。

7月のFOMCでは、政策金利であるFFレートの目標範囲を2.25〜2.50%に設定しました。6月のFOMCでは1.5~1.75%だったので、0.75ポイント引き上げられたことになります。また、ディスカウントレートの1つである「Primary Credit」も0.75ポイント引き上げました。これは過去と比較すると、非常に大きな利上げ幅です。前回金融引き締めを行った2015年12月と比較してみます。

15年12月当時は、2008年に発生した過去最大級の金融危機であるリーマン・ショック後の、大規模な金融緩和政策を正常化するために利上げを実施。この時は、事実上のゼロ金利政策を解除し、その後2018年までに0.25ポイントの利上げを計9回行って、最終的にFFレートは2.25%〜2.50%に引き上げられました。

一方、今回のFFレートの利上げ幅は22年3月に0.25ポイント、5月に0.5ポイント、6月に0.75ポイント、7月に0.75ポイントとなっており、異例のペースで進行していることが分かります。

これらの金融政策を実施する目的は、雇用の最大化とインフレ率を2%に抑制することが目的だとFOMCは説明。米国のインフレ率は、22年6月に40年ぶりの高水準となる前年同月比9.1%まで上昇するなど、目標の2%を大幅に上回っています。

金融市場に与える影響

上記はFOMCの決定事項のほんの一部ですが、この金利の小さな差が金融市場に大きな影響を与えます。FOMCが発表する金利は、市中の預貯金やローンの金利などにも影響を及ぼします。

例えば、金利が上昇すると利子が高くなるため、金融機関が中銀からお金を借りづらくなります。こうなると、企業や個人にもお金が回りづらくなり、その結果、設備投資や消費にお金が使われなくなって、企業の売上が上がらず、株価の低下につながるとされています。

一方で金利が下がると、逆の循環が生じて金融機関は日銀から低い金利で資金を調達できるようになります。企業や個人に対する資金の貸出金利も低くなり、お金が設備投資や消費に回りやすくなります。

これを踏まえて、0.75ポイントもの利上げを発表した7月のFOMCが、金融市場に与えた影響を見てみましょう。

実際は7月のFOMC後、株価は大幅反発しました。一概に上述した通りにならない点に注意が必要で、投資を行う際には幅広く状況を把握する必要があります。

株価が反発した要因としては、利上げ幅がすでに織り込み済みだったこと。また、パウエル議長が記者会見で「9月のFOMCで同様の利上げ(0.75ポイント)を実施することはあり得る」とした上で、「いずれ利上げペースを落とすことになる」と、金融引き締めの緩和を示唆したことが好感されました。

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一方、パウエル議長が22年8月開催のジャクソンホール会議で「結果が出るまでやり遂げる」と利上げを継続する強い意思を表明し、その後に金融市場は下落しています。

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金融政策において、ジャクソンホール会議の時のパウエル議長のように、物価の安定を重視して金融引き締めを支持する人・意見を「タカ派」、反対に景気に配慮して金融緩和を支持する場合は「ハト派」と表現されます。

為替に与える影響

FOMCは外国為替市場にも大きな影響を与えることがあります。現在、その影響が特に顕著に表れており、為替相場では大幅な円安ドル高が進んできました。本記事執筆時点で1ドル=144円を超えており、1998年8月以来、約24年ぶりの円安水準となっています。

この円安には、日米の金融政策の違いが影響しています。コロナ禍の金融緩和の後、金融引き締めに移行して金利を引き上げている米国に比べ、日本は現在も金融緩和を継続。お金は、効率的な投資先や運用先に流れていく傾向があります。

現在は主に、金利の高い方でお金を運用した方が効率的であるという理由で、円を売ってドルを買う動きが増加しています。

仮想通貨市場に与える影響

最近の暗号資産(仮想通貨)市場は、冒頭でも述べたように、株式やその他のリスク資産と比較的密接に相関するようになっています。

2022年8月には国際通貨基金(IMF)が、ビットコイン(BTC)イーサリアム(ETH)と、アジア株式との正の相関係数が急上昇している点について分析結果を発表。新型コロナウイルスのパンデミック前(2017年〜2019年)とパンデミック後(2020年〜2022年)では影響レベルが一変しており、金融市場のリスク要因になり得ると指摘しました。

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株式など他の資産との相関性は過去には低かったこともあり、常に同じ状況とは限りません。しかし、最近は伝統的な金融資産と相関性が高まっていることで、仮想通貨投資家もFOMCを非常に注視しています。

実際に7月のFOMC後は仮想通貨の価格も変動。株価指数と同様にビットコインやイーサリアムの価格も上昇しました。7月28日の仮想通貨市場では、ビットコインが前日比+8.5%、イーサリアムは前日比+13.9%と大幅反発。

そして、ジャクソンホール会議後に仮想通貨市場も下落しました。以下はその時のビットコイン価格のチャート。左側の赤線がFOMC後、右側の赤線がジャクソンホール会議後です。

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今後の予定

次回のFOMCは、9月13日のCPI発表を経て、9月20日と21日に開催。利上げ幅や今後の金融政策の見通しなど多くの注目点があります。

FOMCには、FFレートの見通しを示した「ドットチャート」と呼ばれる指標があります。ドットチャートとは、FOMCに参加するメンバーが適切と考えるFFレートの分布図。今後の利上げ幅を予想するために投資家が参考にしています。

ドットチャートは通常、3月、6月、9月、12月に公表。連邦準備制度の公式ウェブサイトの「Projection Materials」という項目にアップロードされている資料に掲載してあります。以下が、今年6月に発表された前回のドットチャートです。

出典:FED

ドットチャートの中のドット(点)は、それぞれの参加者を表しています。右軸のFFレートに対し、何人の参加者がその水準を適切と考えるか、ドットの数で人数を示しています。2022年6月のFOMCでは18名の参加者が見通しを示したようですが、「Longer run(2024年以降)」の点が17個しかないのは、1人の参加者が予想を提出しなかったためです。

上記のドットチャートを見ると2022年6月時点では、「2022年終了時点のFFレートは3.25%から3.5%が適切」と考えている参加者が最も多く8名。7月のFOMCで設定された「2.25〜2.50%」と照らし合わせ、今後いつまでに、どのくらいFFレートが上昇する可能性があるかを投資家が予想することができます。このドットチャートも、9月のFOMC後に公開される予定です。

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