国税庁、仮想通貨取引の課税に関する課題を指摘
仮想通貨取引の課税に関する課題
内閣府は28日、同日開催された「納税環境整備に関する専門家会合(第9回)」の資料を公開した。
この会合で国税庁は「税に対する公平感を大きく損なうような行為への対応」を説明。その中で、「税に対する公平感への悪影響が危惧される調査事例」の1つとして、暗号資産(仮想通貨)取引に対する調査を挙げている。国税庁が今回、仮想通貨を例にして挙げた課題は以下の2つだ。
- 海外の取引所で行われた取引に関する情報が入手しづらい
- 高額な利益が無申告だった場合に、無申告加算税の対象になることがある
1つ目の課題について国税庁は、国内外の取引所で仮想通貨取引を行なっていた納税者に対し、無申告の疑いがあったために調査を実施。1年以上に渡り電話と書面で連絡をしたが、無視され続けたとしている。
その後、膨大な事務量を投じて反面調査等を行い、国内での取引を中心に解明できた分は構成処分を行うことができたが、海外での取引の全容を把握することはできなかったと説明した。
この事例について国税庁は、以下のように課題を指摘している。
反面調査をするためには、その端緒として何らかの情報が必要だが、調査をするための接触を一切拒否された場合にはそうした端緒がつかめず、取引の全容解明は困難を伴い、また、仮装隠蔽行為の有無も確認することが困難となる。
高額利益の事例
2つ目は仮想通貨に特化した事例ではなく、他の資産も対象。事例として挙げられているのは、スマートフォンで何らかの資産の先物取引を行い、1年で約2億円の利益を得たにも関わらず申告をしなかった会社員だ。調査をすると、この会社員は、申告の必要があることを認識していたが申告しなかったことを認めたという。
資料では他にも、仮想通貨取引を含む投資において、2年間で約2億円の利益を得ていたが、無申告だった事例もあったとした。
この事例で国税庁が指摘している課題は以下の通り。
本事案のように高額の利益を得ていながら無申告となっていた場合においても、申告時における仮装隠蔽行為や意図的に申告をしないことを外部からもうかがい得る特段の行動が認められた時には重加算税の対象となるが、こうした行為を認定できなければ通常の無申告加算税の対象となる。
日本では、申告納税制度の定着と発展を図るため、申告義務が適正に履行されない場合に加算税を課す。加算税は、行政制裁的な性格を有している。
財務省のウェブサイトによれば、無申告加算税で済まされる場合の税率は15%か20%。一方、無申告加算税に代えて適用される重加算税の税率は40%である。
国税庁は今回の資料で、政府税制調査会の「経済社会の構造変化を踏まえた令和時代の税制のあり方(2019年9月)」の言葉を引用。「デジタル時代における納税環境の整備と適正・公平な課税の実現」の項目で、以下の内容を強調した。
課税逃れの未然防止や早期是正等を図るためには、課税関係の判断に必要となる情報について、納税者による自主的な開示を促すとともに、税務当局も広く参考となる情報を適時に提供するなど、納税者の予見可能性を高めていくことが必要である。
税務調査などの事後的な対応については、特に必要性の高い分野や悪質な事案等に重点化した上、それらが効率的かつ効果的に実施されるよう環境を整備していくべきである。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します