はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習 WebX
CoinPostで今最も読まれています

NFT(ノンファンジブルトークン)にかかる税金の注意点とは|寄稿

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

泉絢也教授の寄稿

2022年10月19日時点におけるNFT(ノンファンジブルトークン)の税金の注意点を簡単に整理します。

詳しくは、拙著『事例でわかる!NFT・暗号資産の税務』をご覧ください。

寄稿者:泉 絢也Junya IZUMI

千葉商科大学准教授・博士(会計学)

中央大学ビジネススクール非常勤講師

(一社)アコード租税総合研究所研究顧問

2018年より、暗号資産税制の研究を開始して以来、毎年、各国の税制との比較など、同税制に関する書籍や論文を立て続けに発表。著書『事例でわかる!NFT・暗号資産の税務」などがある(共著)。

1、国税庁のタックスアンサーと税法に定めがない「NFT」の税金の注意点

NFT(ノンファンジブルトークン)の税金について、国税庁がタックスアンサー「NFTやFTを用いた取引を行った場合の課税関係」を出しています。

このタックスアンサーでは、次のとおり、NFTやFT(ファンジブルトークン)を譲渡した場合に、税金の安い譲渡所得になりうることを認めています(ただし、暗号資産の譲渡による所得は雑所得に該当するという国税庁の立場は、基本的に維持されています。タックスアンサーの解説として、こちらの記事参照)。

・ 譲渡したNFTやFTが、譲渡所得の基因となる資産に該当する場合(その所得が譲渡したNFTやFTの値上がり益(キャピタル・ゲイン)と認められる場合)は、譲渡所得に区分されます。 (注)NFTやFTの譲渡が、営利を目的として継続的に行われている場合は、譲渡所得ではなく、雑所得または事業所得に区分されます。

・ 譲渡したNFTやFTが、譲渡所得の基因となる資産に該当しない場合は、雑所得(規模等によっては事業所得)に区分されます。

しかしながら、NFTの課税関係については、まだまだ明らかになっていない点がたくさんあります。

税金の計算のルールは、法律で定められることになっているのですが、現時点では、暗号資産と異なり、税法に「NFT」という語は設けられていません。この点に関して、次の2つの点に注意しておきましょう。

①「NFTという語が税法に定められていない ≠ 税金がかからない」ではない

現時点では、税法にNFTという語は定められていません。だからといって、NFTには、所得税、法人税、消費税、相続税といった税金がかからないかというと、そんなことはありません。

所得税や法人税であれば、広く経済的利得を意味する「所得」に対して税金が課されるので、税法にNFTという語が定められていなくとも、NFT取引によって所得を得たのであれば所得税や法人税の課税の対象になりえます。

NFTであろうが、FTであろうが、所得を得たのであれば課税の対象になるということです。タックスアンサーのNFTとFTの定義がわからない、具体的にFTとして、どのようなトークンを想定しているのかわからない、NFTの中にはFTというべきものもあるといった声も聞こえますが、税法の条文は両者を区別していません。

税法との関係に関する限り、暗号資産に該当するかどうかの区別は重要ですが、NFTとFTの区別にこだわりすぎることはお勧めしません。

②国税庁のガイダンスの内容が常に法的に正しいとは限らない、ガイダンスがなくとも申告・納税が必要

国税庁はNFTに関するタックスアンサーを出していますが、これは所得税に関する取扱いのみをカバーするものであること及びカバーする取引の範囲が狭いことから、(せめて年末までには)より詳細なガイダンスが出されることを待ち望んでいる納税者や税理士の方もいらっしゃると思います。

ただし、国税庁は行政機関にすぎませんので、国会が作った税法のルールを執行しているにすぎません。また、国税庁も法律から離れた、誤った解釈を述べる場合もあります。

ユースケースが多彩なNFTに関して、現時点で、国税庁が、納税者や税理士が満足するような詳細なガイダンスを発行できるのか、疑問です。新たな取引に対して、国税庁はどうしても後手に回らざるを得ません。

それでも、納税者や税理士は、自らNFTの税金を計算して、申告・納税しなければなりません。

このように考えると、普段から、国税庁に依存しすぎることなく、税理士その他の専門家に依頼できるようにする、税金に関する記録を付けておく、残しておくなど、適正に申告・納税する体制を整えておく必要があるでしょう。

2、所得税・法人税の注意点

所得税・法人税について、例えば、次の点に注意しましょう。

  • NFTを譲渡したり、他のNFTと交換したりすることで、所得が発生し、所得税や法人税が課されます。
  • 所得金額は、基本的に収入から必要経費を控除して算出するので、収入金額(日本円以外で収入する場合は、その収入した権利や外貨などの資産を時価評価又は円換算します)から製作費用、NFTの購入金額、手数料などを控除します。
  • 一般の方が二次流通でNFTを譲渡する場合、所得税法上の譲渡所得になる可能性が高まります。クリエイターの方がNFTを販売する場合、事業所得又は雑所得になる可能性が高いです。
  • 暗号資産や外国通貨でNFTを購入すると、その暗号資産や外国通貨の取得価額とこれらの使用時(NFTの購入時)の時価との差額に対して、所得税や法人税が課されます。
  • エアドロップ・giveawayによる譲渡や廃品回収業者への譲渡など、無償又は時価よりも低額でNFTを譲渡した場合には、その譲渡した者が、これを時価で譲渡したものとみなされる場合があります。逆に、これらの事由により、無償又は時価よりも低額でNFTを譲り受けた場合には、譲り受けた者も時価で課税される場合があります。
  • 二次流通時にクリエイター等が受領するロイヤリティも所得となります。
  • 最終的にどのように税金を計算するかは、NFTに紐付いている権利や資産の性質に大きく依拠する可能性があります。
  • 詐欺などによりNFTを失った場合や送付先アドレスを誤り、いわゆるセルフGOXをした場合に、その損失は必要経費として認められない可能性があります。
  • 法人税の期末時価評価課税のような規定はないため、金・プラチナなどの短期売買商品に該当しない限り、期末に保有するNFTを時価評価して課税することはありません。

このほか、ゲーム用のNFTの取得価額をどうするのか、即時費用化できるのか、減価償却はできるのか、NFT販売時に収益の全額を計上すべきか、NFTの時価をどう評価すべきか、NFTを購入した際の代金支払時に源泉徴収をする必要があるかといった問題もあります。

3、消費税の注意点

国税庁の見解は出ていませんが、NFTを製作して販売したり、購入したNFTを二次流通で譲渡したりした場合には、消費税の課税関係が発生する可能性があります。

4、相続税・贈与税の注意点

相続税・贈与税について、例えば、次の点に注意しましょう。

  • 問題となるNFTは相続人が相続可能なもの(権利等)か。
  • 時価をどう考えるべきか。著作権の価値を算定すべきか、それ以外の権利の価値を算定すべきか、その両方か、あるいは資産性のないものか。
  • 秘密鍵の紛失等により、事実上、相続人がNFTを取得できないような状況であっても、相続税が課される可能性があります。
  • NFTを贈与した場合には、受贈者側で贈与税が発生する可能性があります。

5、最後に

上記のほか、各税金に共通する注意点として、一次流通と二次流通で取引等の性質が異なる場合があることと、著作権法その他の税法以外の法律関係が税金の計算に影響を及ぼす可能性があることを指摘しておきます。また、専門家によるものも含めて、ネット上には色々な情報がありますし、中には、法的根拠が不明確なものも存在します。筆者の見解とは異なるものも散見されますが、法的に何が正しいかは、最終的には、裁判所や立法による決着を待たなければならないという事情があることも理解しておきましょう。

NFTの税金の計算については明らかになっていないことが多くありますし、今後、国税庁がどのような見解を採用するのかを予想することも難しいため、申告する際は税理士に相談することをお勧めします。

CoinPost App DL
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
12/23 火曜日
15:46
予測市場カルシ、BNBチェーンでの入出金サポートを開始
CFTC規制下の予測市場カルシがBNBチェーンの入出金に対応。BSCユーザーはブリッジ不要で直接アクセス可能に。予測市場業界は2025年に急成長、取引高は400億ドル規模へ。
14:34
ソラナ財団、手数料代行サービス「Kora」を発表 SOL不要で取引可能に
ソラナ財団が12月23日に発表した「Kora」により、ユーザーはSOLを保有せずにUSDCなど任意のトークンで取引手数料を支払えるようになる。手数料代行の仕組みと応用例を解説。
13:15
仮想通貨ウォレット狙う情報窃盗マルウェア「Stealka」検出=Kaspersky
Kasperskyが仮想通貨ウォレットなどを狙う高度マルウェア「Stealka」を報告した。海賊版ソフトなどに偽装し100種類以上のブラウザやウォレットを標的に。被害を防ぐ対策も解説。
12:39
ビットコイン採掘者の降伏、価格底打ちのシグナルか=VanEck分析
資産運用会社VanEckは、ビットコインのハッシュレートが4%低下したことについて、価格底打ちを示唆する強気シグナルと分析。過去のデータでは180日後に77%の確率で価格上昇。ただし一部専門家は慎重な見方も。
12:16
ビットポイント、P2P.orgを含む3社連携 法人向けETH活用支援を強化
SBIグループのビットポイントジャパンが世界最大級のステーキング企業P2P.orgと連携。東証上場のDef consultingが進めるイーサリアムトレジャリー戦略を、グローバル基準の技術で支援する体制を構築した。
10:50
メタプラネットの臨時株主総会、5議案を全て承認
仮想通貨ビットコイン財務企業メタプラネットは、同日開催した臨時株主総会で5つの議案が全て承認されたことを発表。優先株式の定款変更や発行に対する承認が特に注目を集めている。
10:31
米最大取引所コインベース、予測市場事業強化へ新興企業を買収
米仮想通貨取引所最大手コインベースが予測市場スタートアップThe Clearing Companyを買収。2026年1月完了予定。予測市場は2030年までに1兆ドル規模に成長する見込みで、コインベースは「Everything Exchange」構想の実現を加速させる。
09:42
バイナンス、2023年和解後も疑わしい口座の約212億円移動を防げず=FT報道
英紙FTは、バイナンスが2023年和解後も疑惑口座による1.4億ドルの取引を防げなかったと報道。13の口座が2021年以降17億ドルを移動。テロ資金調達との関連も指摘される中、バイナンスは「当時制裁対象ではなかった」と反論している。
09:40
ネットスターズ、羽田空港でUSDC決済の実証実験を近日開始へ
決済ゲートウェイのネットスターズが羽田空港第3ターミナルでUSDCによる店舗決済の実証実験を開始へ。QRコードを活用し、インバウンド旅行客がウォレットから直接支払い可能。加盟店は円建てで精算される仕組み。
09:30
XRP建て利回り商品「earnXRP」がフレアでローンチ、4〜10%の利回り目指す
アップシフト、クリアスター、フレアがXRP建て利回りボールト「earnXRP」を立ち上げた。XRP保有者が複雑な戦略を運用することなく利回りを得られる商品で目標利回りは4%から10%となる。
08:12
トランプメディア、451BTC追加購入で保有額10億ドル突破
トランプメディアが新たに451BTCを取得し総保有額が10億ドルを超えたと報じられた。第3四半期は5z480万ドルの純損失を計上したが仮想通貨戦略を継続している。
07:30
米仮想通貨特命官、CFTC・SEC新委員長を「ドリームチーム」と称賛
米ホワイトハウスのデビッド・サックス仮想通貨担当官がCFTC新委員長マイケル・セリグ氏とSECのポール・アトキンス委員長を称賛し、トランプ大統領が「ドリームチーム」を作ったと評価した。
07:20
仮想通貨投資商品、先週は1490億円超の資金が純流出
仮想通貨投資企業CoinSharesは、デジタル資産投資商品全体の先週における資金フローは約1,494億円の純流出だったと報告。ビットコインなどの銘柄別のデータも公開している。
06:30
ストラテジー社の米ドル準備金が3400億円超に、「仮想通貨の冬」に備え
マイケル・セイラー率いるストラテジーが普通株式の売却により7億4800万ドルを調達し、米ドル準備金を約22億ドルに増やした。仮想通貨の冬に備え配当と利払いを32カ月間カバーできるようにした。
06:05
JPモルガン、機関投資家向け仮想通貨取引の提供を検討=報道
これまで仮想通貨を否定してきたJPモルガン・チェースは機関投資家向けに仮想通貨取引サービスの提供を検討している。現物取引とデリバティブ取引が含まれる可能性がある。
通貨データ
グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧