対SEC裁判のグレースケール勝訴でビットコイン高騰、投資信託「GBTC」への影響は?
マクロ経済と金融市場
29日の米NY株式市場では、ダウ平均株価は前日比292ドル(0.85%)高、ナスダック指数は238ポイント(1.74%)高で取引を終えた。
米国の求人件数や米個人消費の先行指標とされる米消費者信頼感指数が予想を下回ったことで米国債利回りが急低下。インフレ懸念が再燃する中、リスク性資産に追い風となった。
米消費者信頼感指数は、米民間調査機関コンファレンスボードが発表する経済指標であり、エコノミストの市場予想中央値116.0に対し、106.1と大きく下回った。
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仮想通貨市況
暗号資産(仮想通貨)市場では、ビットコイン価格は前日比5.5%高の1BTC=27,514ドルと大幅反発。時価総額上位の主要アルトコインでは、イーサリアム(ETH)が前日比4.01%高、XRPが2.42%高、BNBが3.2%高となった。
足元では、17日の急落の起点でもあり今年3月以降に揉み合った28,500ドル付近のレジスタンスライン(上値抵抗線)で、戻り売り圧力が高まることが想定される。
先物市場(Liquidations Chart)では、ショートポジションのロスカット量は17日のロングポジションのロスカット規模の1/8程度と限定的。節目のラインをブレイクアウトした場合、直近高値31,000〜32,000ドルの主要ラインまでの続伸が見込めそうだ。
相場の過熱感を示すRSIは歴史的な売られ過ぎ水準にある28まで低下しており、年初来最大規模のロスカットに伴い下げの燃料が一時的に枯渇するなど複数の反転シグナルが出ていた。
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また、価格が横ばいに推移する中、ビットコインの建玉(OI)が増加傾向にあり、トレーダーがロングポジションを構築していた可能性がある。
GBTCへの影響は
米SEC(証券取引委員会)と争っていた大手暗号資産(仮想通貨)投資企業グレイスケール・インベストメンツが勝訴したことを受け、グレースケールの投資ファンド「GBTC(グレースケール・ビットコイン・トラスト)」の出来高は、22年6月以来の過去最高水準に達した。
二次取引では前日比17%近く上昇し、1株当たり120.6ドルに達した。月曜日時点では7.6ドルで取引されていた。
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裁判所は意見書の中で、「ビットコイン現物ETFとビットコイン先物ETFは類似した金融商品でありながらも、SECの判断基準が大きく異なることは説明不足かつ恣意的である」と断じ、ETF転換を拒否するSECの決定に対するグレースケール側の“異議申し立て”内容を認めた。
SECは、今後45日以内に再審理を要求することができる。
SECは22年10月以降、ProSharesの先物ETFがニューヨーク証券取引所Arcaに株式上場したことを皮切りに複数のビットコイン先物ETFを承認していたが、ビットコイン現物ETFについては「投資家保護の観点から価格操作への対策が不十分」などとして、非承認され続けていた。
現物価格とのマイナス乖離を示すディスカウントは急減し、米The Blockが報じた時点で最大-17%まで縮小した。
2021年の強気相場では裁定(アービトラージ)取引需要も相まって機関投資家を中心に需要が急増し、プラス乖離(プレミアム)が拡大したが、その後は地合い悪化やビットコイン先物ETFの承認などの影響を受け、機関投資家によるエクスポージャーが激減。大幅ディスカウントが続いていた。
22年12月には、FTXグループの経営破綻で流動性危機に直面した融資企業ジェネシス・グローバル・キャピタルの影響により、同じくデジタルカレンシーグループ(DCG)を親会社に持つグレースケールに影響が及ぶ可能性が取り沙汰され、投資家の懸念が強まった。
また、破綻したヘッジファンドThree Arrows Capital(3AC)をめぐる裁判所資料にて、ジェネシスから融資を受けたBTCを担保にGBTCの発行を繰り返すなどのハイレバレッジの資金調達スキームを用いていた事実が明らかになったこともあり、GBTCのディスカウント率は最大-50%近くまで拡大した。
ジェネシスは今年1月に破産申請したが、資産運用会社Bernsteinは「構造的にもGBTC保有者は保護されており、ジェネシスの債権者はグレースケールのGBTC資産に対する請求権を持たない」との見解を示していた。
一方で、ジェネシスの緊急流動性を確保するため、Ethereum Trustなど投資ポートフォリオの一部売却を余儀なくされたDCGが、GBTC保有量からも部分売却するのではないかとの懸念は燻っていた。親会社のDCGは今年1月時点で、ジェネシスの債権者に対し30億ドル以上の負債を抱えていた。
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ジェネシスは今年2月までにジェミニなどの主な債権者の支援を受け再建計画に大筋合意。DCGは直近、ロイターで発表した声明において「ジェネシスおよび無担保債権者委員会と原則合意に達した」ことを明かしている。
GBTCは、1受益証券当たりのBTC保有比率がビットコイン市場価格に連動する投資成果を目指すものだ。
GBTCは償還期限前に払い戻し、及び中途解約出来ないクローズド・エンド型商品であることから本来の価値から乖離しやすい性質にある。オープン・エンド型商品であれば純資産価格に基づく払い戻しが認められるため、より効率的な価格形成に寄与しやすい。
したがって、GBTCの上場投資信託(ETF)転換がSECに承認された場合、一株当たりの純資産価値が再評価され、乖離解消に向かうことが想定される。
これに先駆け27日には、ビットコインETF(上場投資信託)への転換申請を正式に開始したことを発表した。グレースケールの運用資産は、140億ドル〜170億ドル(2〜2.5兆円)相当に及ぶものとみられる。
グレースケールは21年10月、GBTCをオープンエンド型ETFに転換するための申請書をSECに提出していたが、却下されたことを受け、22年10月にSECを相手取った訴訟を提訴していた。米デジタル商工会議所やニューヨーク証券取引所も、グレースケールを支持する法定助言書を裁判所に提出するなど支援している。
今回の裁判結果を受け、ブラックロックやフィデリティのような大手資産運用会社によるビットコインETF(上場投資信託)申請にも追い風となり、業界内からさまざまな反応が寄せられている。
ベンチャーキャピタリストのアンソニー・ポンプリアーノ氏は、「ビットコイン現物ETFが遠からず承認される保証はないが、今回の裁判結果を受けてその確率は確実に高まった」との見解を示した。材料視された後のビットコイン価格高騰は、裁判結果を受け、市場関係者のビットコインETF(上場投資信託)承認への期待が高まったことを示唆している。
暗号資産(仮想通貨)に対する強硬的なスタンスで執行措置を取ってきたSECについて、過剰規制は米国のイノベーションを阻害するとの声が強まる中、SECのゲーリー・ゲンスラー委員長の責任を問う声もある。
スカイブリッジ・キャピタルの最高経営責任者(CEO)であるアンソニー・スカラムッチ氏は、SECの敗訴が続いていることを受け、「ゲンスラーは辞任すべきだ」と強い論調で批判した。
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