金融庁、Web3・暗号資産含む資産運用立国の実現に向けた「金融行政方針」を発表

資産運用立国を目指して

金融庁は29日、今後1年の重点施策をまとめた2023事務年度(23年7月~24年6月)の金融行政方針を発表した。資産運用立国の実現に向けた取り組みの推進をはじめ、金融庁自体の改革も取り上げられている。

金融庁は重点的に取り組む方針として、以下の4点を掲げた。

  1. 経済や国民生活の安定と成長
  2. 社会課題解決と経済成長を両立させる金融システム構築
  3. 金融システムの安定と信頼の確保
  4. 金融行政の進化・深化

1では、金融機関による地域産業や事業者支援の一層の推進と支援能力の向上、事業者の成長を促す融資慣行の確立が挙げられた。事業者支援では資金繰りの支援にとどまらず、経営改善や事業再生への支援の実施を促すという。

金融庁は2に最も多くページを割いて、方針内容を説明している。「家計に眠る預貯金を投資に繋げる」ことで、国民の所得の増加と経済成長を促し、「成長と資産所得の好循環」を目指す。日経新聞によると、我が国では約1,100兆円の預貯金が家計に眠っていると推測されている。

同庁は「成長と資産所得の好循環」の実現に向けて、「資産運用業の高度化やアセットオーナーの機能強化など、資産運用立国の実現に向けた取組を推進する」ため、具体的な政策プランを年内に作成する。国内外へ情報発信を積極的に行い、海外向けには「Japan Weeks」を開催し、資金運用立国への取り組みをアピールする。

また、新たなNISA(少額投資非課税制度)の普及・活用促進、金融経済教育の充実などを柱とする「資産所得倍増プラン」を推進する。

新しいNISAは24年1月に拡充されるが、金融庁は、特設サイトの見直しやガイドブックの作成、財務局や業界団体と連携したイベント・セミナーの開催を通じて、制度の趣旨や内容を周知に努めるとしている。また、デジタル技術を活用して、NISAの手続きの簡素化と合理化を進める方針だ。

3の方針では、金融経済情勢や世界情勢の的確な把握と、データ分析や金融機関との対話を通じた、金融機関に対する「深度あるモニタリング」の実施を挙げた。また国際情勢を踏まえた各種リスクへの対応として、マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策の強化とサイバーセキュリティの強化にも言及した。

金融庁の改革

金融庁は2018年、金融が急激な変化に晒される中、金融行政に対する国民の信頼や期待に応えるためには、「金融庁自身を不断に自己変革できる組織にしていく必要がある」として、金融庁改革の基本的な考え方と全体像を公表。「組織文化(カルチャー)」と「ガバナンス」の改革が金融庁改革の中心課題とされている。

上記4の方針では金融行政の進化・進化が取り上げられている。組織改革に関しては、職員の主体性・自主性を重視し、職員の能力・資質の向上に取り組み、働きやすい環境の整備を促すことで、金融行政を担う組織としての能力向上に努めるという。

金融行政の高度化のための施策としては、データを活用した多面的な実態把握や財務局との連携・協働の更なる促進、国内外への政策発信力の強化を挙げている。

Web3の推進

金融庁は、2の「社会課題解決と経済成長を両立させる金融システム構築」の中で、「デジタル社会の実現」を目標に掲げている。その具体的施策として、Web3.0の推進に向けたデジタルマネーや暗号資産(仮想通貨)のための取り組みに言及。ステーブルコインの円滑な発行・流通に向けた登録審査の取り組みを進め、自主規制団体の設立を促すという。

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金融庁は、7月末に開催されたアジア最大級のグローバルWeb3カンファレンス「WebX」を後援。日本政府からは、岸田文雄首相がビデオメッセージを寄せたのをはじめ、自民党の萩生田政務調査会⻑が開会挨拶、西村経済産業大臣が登壇するなど、政府はWeb3政策を積極的に支援する姿勢を見せた。

金融庁は、今年度の金融行政方針の重要なポイントとして「持続的な経済成長を支える金融関連法制の構築」をあげており、関連法案の早期の国会提出を目指している。

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